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地域探訪:②當山編

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地域探訪:②當山編
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「なんじょうデジタルアーカイブ」では、利用者のみなさまに南城市のことをより深く知っていただくため、各区の歴史や文化を紹介する連載をはじめました。第二回目である今回は、旧玉城村の當山区を紹介します。

1.はじめに

 當山は、人口は448人、187世帯(2022年5月現在)の集落で、屋嘉部・堀川・志堅原・富里に接しています。北側にある屋嘉部、糸数の台地から南に向け斜面となった位置にあり、集落の至るところに湧水が見られます。

2.第一尚氏ゆかりの場所

 第一尚氏王統5代目の王である尚金福の死後、王の長男である尚志魯と弟の尚布里が王位を争いました(1453年)。首里城を焼失させるほど激しい戦いの中で、両人は亡くなったといわれます。その一方で、尚布里は戦いを生き延び、各地を転々としたのちに當山村に落ち着いたという言い伝えもあります。いずれにせよ、尚布里は王位につかぬまま亡くなり、この當山に葬られたようです。集落の東北には、尚布里のものとされる墓が存在します。また、その墓の裏側には次男・布里子のものとされる墓があります。

尚布里が一時住んでいたとされる上江洲の殿

 尚志魯と尚布里との争いのあと、6代目の王になったのが尚巴志の五男で、尚金福の弟である尚泰久です。側室に生まれた子である三男・尚徳に王位を継承させようとした尚泰久に対して、強い反感を抱いた長男の安次富加那巴志、次男の美津葉多武喜、四男の八幡加那志は、おじの尚布里を頼って當山村に移り住んだとされます。
 長男の加那巴志は、大岩の上に築城した安次富グスクに住みました。城壁をもたない安次富グスクは、一時的な居住地だったと考えられています。

安次富グスク

 次男の美津葉多武喜は、安次富グスクの近くにある大川グスクを一時的な居住地としたようです。安次富グスクとは、わずか数十メートルしか離れておらず、向かい合う形で立地していることから、両グスクは対となって相互に補完しあうような機能をもっていた可能性もあります。

大川グスク

3.當山区民の沖縄戦

 当時は、兵役や出征が決まると、村屋(現在の公民館)に字民が集まり、武運長久を祈願してお見送りを行いました。

字當山 武運長久祈願

 2000(平成12)年度に旧玉城村で行われた悉皆調査によると、1945(昭和20)年に県内で避難をした當山の一般住民は211人、防衛隊や義勇隊、軍人・軍属として戦争に参加した者は33名でした。沖縄戦では、當山の住民の27.9パーセントが命を落としました。(玉城村史編集員会編 2004 『玉城村史第6巻 戦時記録編』玉城村役場 169頁 表2 各字各世帯戦災状況)

4.戦後から現在までの當山

1957(昭和32)年 當山区幼稚園卒業記念

戦後に組織された団体

■四Hクラブ
 農村青年会に頭(ヘッド)と腕(ハンド)を磨き、立派な心(ハート)を養い、健康(ヘルス)な若者の育成を目指した団体で、「Hear」「Hand」「Heart」「Health」の四つの頭文字をとって名づけられました。戦後当時は農業改良の研究成果を発表するなど活発に活動していましたが、参加者が徐々に減り、結成から14~5年後に活動が途絶えてしまいました。

■睦会
 相互の親睦と地域への奉仕活動を目的として、青年会を退団した30歳以上のメンバーで構成された団体です。現在も活発な活動を行っており、メンバーは地域の行事等でも活躍しています。

1980(昭和55)年 敬老会余興出演記念 睦会

主な行事

■九月御願、敬老会、出生祝い
 日曜におこなう敬老会と出生祝いにあわせて、九月御願がおこなわれます。チャナク(白い餅を3個ずつ作って重ねたもの)とビンシー(酒、米、御香)を用意し、役員が伊森の殿、赤嶺の殿、上江洲の殿を拝みます。敬老会・出生祝いの余興は、青年会や婦人会、睦会が行うこともあります。出生祝には、前年の出生祝い以降に生まれた子どもが参加します。上江洲の神屋で長老に健康祈願をおこなってもらったのち、お祝い会場に移動します。敬老会には、満70歳になった高齢者が参加します。会場となる集落センターには、たくさんの住民が集まり、盛大にお祝いします。

1987(昭和62)年 敬老会並びに出生祝
2007(平成19)年度 敬老会・生子祝

5.おわりに

 當山の集落内にはグスク井戸など、さまざまな文化財が点在しています。梅雨も明けて非常に良い天気が続いていますので、この機会に當山を歩き、地域の歴史に触れてみるのはいかがでしょうか。
 次回の「地域探訪」もどうぞお楽しみに!

参考文献

玉城村史編集員会編 2004 『玉城村史第6巻 戦時記録編』
當山誌編集委員会 2008『南城市玉城字當山誌』
渕辺俊一 2011『絵で解る琉球王国 歴史と人物』
南城市教育委員会 2017『南城市のグスク』
南城市教育委員会 2018『南城市の御嶽』