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冨祖崎の社会組織

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冨祖崎の社会組織
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琉球大学人文社会学部琉球アジア文化学科 豊里梨莉

1. はじめに

1-1. 選んだ写真

牛おうらせい 成人会の催し物(C000006718)

1-2. 「冨祖崎の社会組織」とその背景について

 私が選んだテーマは冨祖崎の社会組織についてである。これまで冨祖崎には青年会・成人会・婦人会・老人クラブ・PTA・尚巴志育英会・防災組織の計7つの社会組織があった。しかし、青年会は、1975年から1980年ごろに活動が消滅した。また、婦人会は、2015年3月に活動を休止している。
 冨祖崎の社会組織と比較するため、私の地元である集落で現在活動している社会組織について調べた。その際わかったことがある。以前は、私の地元には青年会などがあり、活発に活動を行っていた。しかし、若い世代が少なくなってきたこともあり、現在、活動をしているのは自治会と老人クラブ、PTA(子ども会)のみになっていることがわかった。
 このような社会組織を巡る変化が、冨祖崎でも起こっているのかが気になったため、この社会組織というテーマを選択した。

2. 聞き取り調査

話者:玉寄勉さん(1947年8月12日生)
調査日:6月17日/6月19日/7月1日/7月15日/7月17日

冨祖崎の自治会によると現在冨祖崎の人口は446人、187戸である。(2023年6月現在)

人口の割合(2023年6月現在 冨祖崎自治会把握数)
0-14歳  14%
15-17歳 3%
18-29歳 5%
30-64歳 41%
65歳以上 35%

成人会

1985年に発足。成人会は35−64歳までの人が対象である。冨祖崎の字誌によると、1985年の1月30日から3月末までを会員増強運動期間と設定し、40人ほどから71人にまで会員数を増やした。同年12月には、「ポインセチア祭り」を主催した。現在では、冨祖崎の年末の風物詩として、イルミネーションなどを主催している。

老人クラブ

1966年結成。65歳以上の人が対象。毎月18日に定例会を行なっており、毎回35−40人ほどが参加する。この定例会では、1ヶ月の報告と次月の予定を決める。年に一度ピクニックを行なっている。25人乗車のバスが満席になるほどの参加率を誇る。
老人クラブには愛好会があり、グランドゴルフ、ゲートボール、三線教室がある。

成人会・老人クラブの運営費は、農地保全のための多面的機能支払い交付金事業に参加し、その日当を各々の組織の運営費としている。組織に加入していない人は、自治会の運営費としている。

PTA

子供たちを対象とした夏季防災訓練を行なっている。内容は、心臓マッサージ、A E Dの使い方、初期消火のやり方などを消防士の方の指導をもとに訓練する。
 夏休み期間中のラジオ体操と、音読を行なっている。音読は、公民館から区内に向けて放送する。1993年から毎年行われていたが、近年はコロナの影響で中止されていた。しかし、今年(2023年)から再開している。

防災組織

 2010年に結成。冨祖崎は海抜が低く、津波が起こった際、危険な地域のため、毎年11月に津波対応避難訓練が行われている。夏にはPTAと協力して、子供たちを対象とした夏季防災訓練を行っている。また、防災マップを作成し、各家庭に配布している。

尚巴志育英会

 冨祖崎の自治会が地域の活性化を促す人材を育成しようと2016年に発足した育英会である。琉球新報デジタル2022年1月18日の記事によると、2022年1月に初めて、県外の大学院で学ぶ女子学生に給付金を支給した。育英会には、多額の寄付金を寄せた玉寄英一さんを含む郷里の5人から6回に渡り総額1250万円の寄付金が寄せられている。これまでに、259万円が貸与・支援された。
 しかし、前冨祖崎区長の玉寄勉さんによると、子供たちへの支給は、PTAなどにあまり周知されていないため、連携を強化したいと考えている。

三世代交流

 老人クラブが主催して交流をおこなっている。午前中に子供たちとゲートボールまたは、グランドゴルフをクラブの人たちの指導をもとに行い、午後からは保護者も参加し、バーベキューをする。7、8年前はフラワー園にてPTAで種うえや花植えなどをおこなっていた。

3. 考察

 青年会や婦人会など代表が現れないことにより、活動が休止していることがわかった。時代の変化により、人と人との関わりが薄くなっている印象を受けた。子供たちとの交流でも、部活や習い事、塾などで行事の参加率が低くなり、行事すら行われなくなってきているという。時代の進歩やコロナの影響に伴い、携帯端末一つで物事が決まるということは、暮らしを便利にした反面、人との距離感や交流する機会を減らしていっているのかもしれない。
 しかし、尚巴志育英会のように、地域の活性化を促す人材を育てるために活動している組織もある。人との関わりが減っていく一方で、子育て世代が住みやすい地域にしようという自治会や住民の思いを感じられた。

4. おわりに

今回の野外調査で、インタビューの難しさを知ることとなった。質問の仕方やアプローチの仕方ひとつで回答に辿り着かず、同じことを2度、3度話させてしまうことがあった。質問の仕方や、事前学習から得た情報との結びつきなど学んだことが多い。今後は、会話を引き出すことなど、今回あまりできなかったことなどを意識しておこなっていきたい。

参考文献

冨祖崎区字誌編集委員会編集(2023)
 「ハマジンチョウの里字誌冨祖崎」冨祖崎区

琉球新報デジタル「故郷の先輩が支援、県外で学ぶ大学院生に寄付金『尚巴志育英会』南城・冨祖崎」2022/01/18  (2023/08/06 18:11 最終閲覧)