2022年9月、南城市立大里南小学校の3年生向けに民話劇の上演を行いました。この企画は、今年2月に南城市教育委員会より刊行された『大里のちてーばなし』の普及・活用を目的としており、今年3月に大里北小学校5・6年生向けに行った上演に続き、2回目の開催になります。
演劇制作・上演を行ったのは、沖縄県内を拠点に活動する演劇グループ《演撃戦隊ジャスプレッソ》の5名。劇団の代表を務める渡久地雅斗さんが作品を書き下ろしました。
『大里のちてーばなし』(2022)南城市教育委員会発刊
「ちてーばなし」とは、沖縄の方言で「伝え聞いた話」を意味します。伊芸弘子氏らが旧大里村で実施した「ちてーばなし」に関する聞き取り調査(1983年)では、43人の話者から計467話が収集されました。そのうち、本書には内容が理解しやすいもの、音声記録の状態が良いことを基準として選定された、計78話が収録されています。
挿絵は「あおぞら学童クラブ」のご協力のもと、大里地区の小学校に通う児童が描いたものです。収録話を読み、想像を膨らませて絵を描いてくれました。
当日の流れ
①『大里のちてーばなし』ができるまで
『大里のちてーばなし』が刊行されるまでの流れを事務局がパワーポイントを用いて説明しました。調査で実際に使用していたカセットテープや原稿用紙の紹介もしましたが、現在ほとんど使われなくなったカセットテープに、児童は興味津々でした。
②演劇の上演
「ヤーサルマーサル」「城間ナーカ」「大里ウナー」の3作品を上演しました。上演は全て標準語で行われ、セットはシンプルですが、唄三線や太鼓も用いて民話の世界観を表現していました。
「ヤーサルマーサル」
沖縄の黄金言葉で「空腹の時は何でも美味しい」の意味。食べ物のありがたさを考える内容。
「城間(ぐすくま)ナーカ」
現在の沖縄県浦添市城間の富豪の話。「情けは人の為ならず」を説いた内容。
「大里ウナー」
本書の採話地である大里地区が舞台の民話。鬼になった兄を妹が退治する内容。石が入ったムーチー(餅)を鬼に食べさせて退治する話が有名。
③上演作品の解説
演劇の上演後、上演した作品の解説や類話を紹介し、本会を終了しました。
民話劇の上演を終えて
上演後、観劇した児童・教員にアンケートに協力して頂きました。児童からは「面白かった、楽しかった」などの感想に加え、「(大里ウナーを観て)ムーチー以外のパターンで鬼を退治する話があることは知らなかった」など、新たな発見もあったようです。教員からも「今後も授業に取り入れたい」「児童が食いつくポイントもあって良かった」などのコメントを頂きました。
今回のように刊行した本を活用した事業を継続的に行い、子どもたちが自分の地域の民話、そして歴史・文化に興味を持つキッカケになれば幸いです。当日の様子を記録した動画は、なんじょうデジタルアーカイブの公式Youtubeチャンネルで公開しています。
関連リンク
音声記録
旧大里村 ちてーばなし聞き取り調査
演劇でちてーばなし 記録動画
2022年9月12日「演劇でちてーばなし」(大里南小学校)記録動画
2022年3月3日「演劇でちてーばなし」(大里北小学校)記録動画(演劇パートのみ)
旧町村史 ダウンロード資料
沖縄・佐敷町の昔話
たまぐすくの民話