なんじょうデジタルアーカイブ Nanjo Digital Archives

新・成人に贈る言葉

一月十五日は成人の日です。この日、成人式を迎えられる本村百七十八人の皆さんの門出に、沖縄で初めての日本刀鍛刀道場を開き、日々、名刀づくりに精進しておられる刀匠・兼濱清周さんから、メッセージを頂きました。

自分を見つめる眼を持て刀匠・兼濱清周
新成人へ贈る言葉を書いて下さいと私に声がかかったのは刀鍛治という少ーばかり変った仕事をしているからでしようか。そしてそれをお引受けしたのは、私自身成人後十七年が過ぎ少しばかり大事だと思える事も感じる様になり、話しをしてみたかったからです。私の今日までの人生の根底には両親の持っていた信仰があります。その信仰は私自身を見つめる眼となり"心の師とはなるとも心を師とせざれ"との経文の一節は常に心の中でくりかえされておりました。成人を迎える頃誰もが同じだと思いますが、自分自身に自信を持ち、力強く生きたいと願うものだと思います。私もまたそれを常に考えていました。しかしその思いとは裏腹に自信を失い悶々とした日を過ごしていた二十二歳の時、刀との出会いがありました。その鋭さに斥倒され同時にふがいない私を鍛えてくれるものをそれに求めたようです。職人というのは自分の眼で盗むものだというのが師匠の初めの言葉でした。信州(長野県)の弟子生活をりかスってみると、初めての冬を迎えた時想像以上の環境の違いに弱音をはいてしまいました。その時母は一仕事は綿入れというから頑張りなさい」の一言でした。そのように苦しんでいた時沖縄から東京に来ていた友人が尋ねて来てくれました。その晩師匠の目を盗み、祈くの飲み屋で語り合いその事で何かがふっきれ、初めての冬を乗りきることができました。その後八年の冬を過ごしましたが、その事でやめたいと思うことはありませんでした。しかし弟子生活五年目の刀を造り始めた頃、十年目の独立する前に非常にやめたくなりました。その時のことを今ふりかえってみると、自分に自信が持てなかったからだと思います。その後いろいろな事があって今感ずる事は、自分に対する自信というものは一つの事を持続する処から生まれてくるということです。昔の言葉に"継続は力なり"とありますがその通りであります。そしてもう一つは真面目に努力するということです。真面目であれば素直に先輩の言葉を聞くことができ、自らを反省することかできます。そして一つ一つの力を蓄えて、ある時自分をふりかえってみると少しばかり成長した姿を見ることかできます。すると未来に対して希望と勇気がわいてきます。今私は、このようなところにいます。新成人の皆さん、自分を見つめる眼を持ち一つの事を持続し、そして真面目に努力して下さい。あなた達の出番は必らずあります。成人お目出度うございます

兼濱さんの略歴
昭和二十六年十二月十五日、疎開先の宮崎県に生まれる。昭和三十四年那覇市へ引き上げる。市内の小・中・高校を経て琉球短期大学入学。日本刀と出会い、その魅力にひかれて四十九年二月同大商科を中退、同年四月長野県在、刀匠・宮入清平師へ入門、厳しい修業を続けて五十八年六月免許皆伝独立、五十九年十月本村稲福に沖縄で初めての日本刀鍛刀場開く。大里村平良出身(三七才)注・綿入れ(チャンチャンコの類)、仕事に励めば暖かくなるの意味。

ダウンロード https://drive.google.com/file/d/1v28r6ig_VNCbNhtV-EtBvk5fLROppe07/view?usp=drive_link
大分類 テキスト
資料コード 008461
内容コード G000000953-0010
資料群 旧大里村広報
資料グループ 広報おおざと 第121号
ページ 8
年代区分 1980年代
キーワード 役所・役場行政広報
場所 大里
発行年月日 1989/01/01
公開日 2026/03/27