なんじょうデジタルアーカイブ Nanjo Digital Archives

新成人に贈るメッセージ

人は、心と心でしかつきあえないものです。
●平良とみ(俳優)

●平良とみ
1928年生まれ。沖縄芝居の役者として60年のキャリアをもつ。映画「ナビィの恋」、NHKドラマ「ちゅらさん」などの出演で全国的な人気に。著書「美ら島清ら心」(ちゅらしまちゅらぐくる)

生まれは沖縄の那覇で、小学4年生のときに石垣島に移り住みました。そのとき地元の劇団に入って以来ですから、もう60年も芝居を続けています。
青春時代に戦争が始まり、石垣では沖縄本島のような悲惨な戦いはありませんでしたが、山に逃げて隠れ住んだこともありました。
二十歳になったのは、終戦の混乱がまだ世の中に残っていたころです。
当時は「成人式」という催しもなかったですよ。子どもたちは家計を支えるために仕事に就いて、自分で稼げるようになったら自然に「一人前」という自覚と責任感をもったものです。
私も十三歳で沖縄芝居の道に入りましたから、いつから大人になったという特別な思いも記憶もありません。
ぜいたくや不平を言わないのが当たり前の時代です。目の前にある自分の仕事を精いっぱいやるだけでした。私らの世代と違い、世界中の情報や価値観に触れられることができる今の若者たちは幸せですね。
いろんな面で世の中は変わり、昔のやり方では通用しなくなっていることがたくさんあります。でも、人と人のつきあい方は昔も今も変わらない。いつの時代、どんな世の中であっても、人間同士にとって大切なのは、心ですよ。
「肝トゥ肝シルヒラリール」という沖縄の言葉があります。
〈人は心と心でしかつきあえない〉という意味で、だれに対しても誠実に、責任感をもって接することを教える言葉です。
それぞれの人間が、まず家族や隣人を大切にすること。自分や周囲の人々が幸せになれば、ひいては村全体がよくなり、世界全体が幸せになっていく。これは、沖縄の古くからの考え方でもあります。
世界では、今も争いや武力に任せる出来事が絶えません。でも、戦争を好む人はいません。すべての国の若い人たちが、まず自分の足元をよく見て身近な人を敬い、そして遠い国の人のことを思うことで、変えられることがあるのではないでしょうか。(談)

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大分類 テキスト
資料コード 008454
内容コード G000000771-0003
資料群 旧佐敷町(佐敷村)広報
資料グループ 広報さしき 第295号(2002年2月)
ページ 4
年代区分 2000年代
キーワード 広報
場所 佐敷
発行年月日 2002/02/10
公開日 2023/12/15