はじめに
本日、第149回佐敷町議会定例会の開会にあたり、平成12年度予算案並びに関連諸議案のご審議をお願いするに際しまして、私はここに、町政運営に臨む所信を明らかにし、議員各位をはじめ町民の皆さんのご理解とご賛同を賜りたいと存じます。
21世紀の到来を目前に控え、すでに歴史は、名実ともに大きな転換期に入っていると思います。従来のような進歩や発展といった価値観から、調和と共存、あるいは物から心へと、価値観の転換をいかにして図っていくかが新時代に向けての課題となっております。
我が国にあっては、本格的な少子・高齢化や国際化の進展、地球規模での環境問題の深刻化、産業の空洞化など、多くの課題に直面しております。
一方、経済情勢は「豊かさの中の不況」と言われ、依然として厳しい状況が続いています。今後、高齢社会にどう対応していくか、また、資源やエネルギー、環境問題をはじめ地球規模の課題解決に向けて、その国際的責任がますます大きくなってくるものと考えられます。
経済の振興は、本県における重要課題の1つであり、「沖縄経済振興21世紀プラン」や「沖縄県産業創造アクションプログラム」等の推進によって、本県経済の自立的発展や戦略的企業の創出、地域産業の振興が図られるほか、住み良い沖縄の創造に向けた各種施策が推進されることとなっております。
この夏に開催される九州・沖縄サミット首脳会議は、本県にとって歴史的大事業であり、平和を志向する県民の心や沖縄の歴史・文化、自然等を広く国際社会に紹介する絶好の機会であります。町としても県と連携して開催機運の盛り上げに努め、環境美化など受け入れ体制の整備を図ってまいります。
非行やいじめ・不登校など深刻化する諸問題に対応するためには、「心の教育」がより重要であると認識しております。本町では教育椙談員が中心になり、相談活動の充実、生徒指導の強化に努めておりますが、さらに関係機関・団体との綿密な連携を図るとともに、「心の教室相談員」を新たに配置し、なお一層「心の教育」の充実に努めてまいります。
長引く不況による閉塞感がただよう中、県内景気は改善の動きが広がりつつあるものの、財政環境は依然として厳しい状況にあります。本町においてもその例外ではなく、これらの課題に目を向けて取り組むとともに、町民福祉の向上に寄与していくため行政改革を推進し、事務事業の見直しや計画的・効率的な執行など創意工夫に努める中で財源の確保を図り、時代の要請に即した施策を展開してまいります。
新しい世紀への橋渡しとも言うべき平成12年度では、多くの町民の皆さんが夢と希望をもって、安心して暮らせる佐敷のまちづくりの指針となる第3次佐敷町総合計画をスタートさせてまいります。
町ではこれまで町民の健康づくりのために保健、生活環境整備、教育など各方面に精力的に取り組んでまいりましたが、西暦2000年を「佐敷町健康元年」と位置づけ、「健康の町宣言」を行い、町ぐるみの保健・医療・福祉の充実したまちづくりを推進してまいります。
本町は、昭和55年6月に町制を施行して以来、今年、20周年という大きな節目を迎えます。また、折しも今年は20世紀のフィナーレを経験する特別な年であります。そこで、この間に培い築かれてきた郷土の資産の上にさらに新しい魅力を加え、21世紀を迎えるにふさわしい意義ある年とするため、「町制施行20周年記念事業」を実施してまいります。
時代はいま、大きな変革のときを迎えております。まちづくりの主役はいうまでもなく町民であり、町民一人ひとりの健康はもとより社会的にも健康な環境があってこそ、新時代への架け橋が確かなものとなり、生き生きと輝く活気ある佐敷町が創造できるものと信じております。
そうした意味で、平成12年度は「健康」をキーワードに、町民が心から誇れるまちづくり、そして、「この町に住みたい、住んで良かった」と実感できるまちづくりに全力で取り組んでまいりたいと考えております。
基本施策
私は、町長に就任以来今日まで、常に民意を反映し、町民参加の行政を自らの基本姿勢として、公正で公平な町民に分かりやすい町政の実現に取り組んでまいりました。この間、教育環境の整備をはじめ社会資本の充実、農業生産基盤の整備、自然環境の保全など、社会情勢の変化と多様・高度化する行政ニーズに対応すべく、町民のくらしに視点をおいたまちづくりに努めてまいりました。
戦後五十有余年を経て、わが国社会経済は大きく変貌を遂げ、当然のことながら地方自治とその運営の在り方も大きな岐路に差しかかっております。
地方分権や行財政改革、介護保険制度、環境問題への対応等、市町村の行政能力が本格的に問われることとなり、経済や財政状況の見通しが更に厳しくなっていく中で、より効果的・効率的な行政サービスの提供体制の確立が求められております。
私は、町民本位の開かれた行政運営を基本理念に、これまで町勢の発展に努めてまいりました。しかしながら、マリンタウンプロジェクト、公共下水道、南部東道路、ヘルシーリゾート計画の推進など、新時代を拓く佐敷のまちづくりにとって多くの課題が残されていることもまた事実であります。もとより、多くの課題を抱える町政の運営は、私ひとりの力や町職員のみでなし得るものではなく、議会の理解をはじめ町民の参加と協力があってはじめて達成できるものであります。
私は、常に初心を忘れることなく、「町民参加」「公正・公平・清潔」「思いやり」を基軸に、町民の皆さんとのより良いパートナーシップを図りつつ行政改革を推進し、分権型社会を担う行政の確立に努めてまいります。
そこで、町政の運営にあたっては、平和憲法の理念を尊重しつつ、地方自治の本旨をふまえ次の3点を基本姿勢に全力を尽くしてまいります。
一 自然を大切にし、教育、文化の向上を図り、人間的なふれあいと潤いのあるまちづくりを目指します。
一 産業を振興し、住み良い生活環境の整備を図り、町民に夢と希望を与える明るいまちづくりを目指します。
一 健康と福祉を大事にし、思いやりとやすらぎのある平和なまちづくりを目指します。
私は、これからの21世紀に向けた活力あるまちづくりに対しましても、引き続きこの基本姿勢を継承し、町民の知恵を借り、また、自らも創意と工夫を生かして、豊かな町民生活の実現に向けて積極的な施策を推進していく決意であります。
地方自治体の自主性・自立性を高めていくため、いよいよ地方分権が本格的にスタートしますが、本町においても、分権の動きを見据え、多様・高度化する町民ニーズに対応した新しい佐敷のまちづくりへ向けた取り組みを進めてまいります。
公明・公正で町民に開かれた町政運営を行っていくため、平成13年度からの情報公開制度の導入に向けた取り組みを推進し、積極的な町民参加を図るとともに、地域の実情に応じたきめ細やかな町政運営に取り組んでまいります。
行政改革につきましては、先に策定された佐敷町行政改革大綱に基づき年次的にその推進に努めてまいりましたが、その取り組みを効果的・効率的に推進するため実施計画を取りまとめ、数値目標を設定いたします。これに基づき、行政全般にわたる総点検と地方分権の時代にふさわしい、簡素で効率的な改善対策を進めてまいります。
本町の行財政運営の基本施策は、「豊かで活力にみちた町」「夢と希望をはぐくむ町」「自然と調和したくらしやすい町」「健やかで生きがいのある町」「平和を考え行動する町」であります。平成12年度もこの基本施策を踏まえつつ、町民福祉の向上、町勢の発展に努めてまいる所存であります。
私は、地域・社会の動向を的確に把握し、総合的視野に立ち、幅広く様々な論議を尽くしながら、21世紀の活力ある豊かな地域社会の実現に向け、新たな行政体制の確立に真剣に取り組んでいきたいと考えております。
一、豊かで活力にみちた町
活気あるまちづくりは、地域に豊かさと魅力と繁栄をもたらします。とりわけ地域発展の起爆剤は、経済振興と同時に社会資本をいかに整備充実するかにあり、関係機関とも十分連携し活力ある農林水産業の発展に努めてまいります。
高齢化、後継者不足、農産物の自由化における価格の低迷など、農業を取り巻く環境は依然として厳しいものがありますが、認定農業者制度の重要性を認識し、高度の生産技術や経営管理能力を備えた次代の担い手の育成に努め、魅力あふれる農業、活力ある農村づくりを促進してまいります。とりわけ新奨励品種作目の導入を積極的に行い、優良果樹の栽培技術の向上と内外にアピールできる地域特産品開発に力を傾注してまいります。
昨今の農家の高齢化や担い手不足による新規就農者の減少によって、農地の遊休化や荒蕪地が目立ち大変憂慮される事態であります。引き続き農地流動化推進委員や関係機関との連携を密にし、土地の有効活用を実践的に行い地域活性化に取り組んでまいります。
農家をはじめ関係各位のご理解により土地改良事業も極めて高い率で整備されています。さらに平成12年度は、県営一般農道整備事業により浜崎土地改良区内の農道を整備し、農作物品質向上やより良い農村生活環境の実現に取り組んでまいります。
基幹作物であるさとうきびはもちろんのこと、果樹や花卉、野菜等の生産拡大及び品質向上を高めるため生産組織の育成指導面においても関係機関と十分連携をとり、農家の安定的な経営改善の推進を図ってまいります。
最近の集中豪雨による畑地への被害を未然に防止するため、伊原地区をはじめ屋比久地区、伊原落水地区へ団体営農地保全整備事業を引き続き実施してまいります。
また土砂流出防止や排水路の目詰まりを防ぐため手登根地区への団体営ため池整備事業をこれまで同様実施し、農業経営の安定と農業生産の向上を図ってまいります。
農業経営の中で一番欠かせないのが水の安定的確保であります。昨年に引き続き兼久地区へ営農用水施設を設置するとともに、懸案でありました津波古地区に営農用水施設を設置し、水の安定供給に努めてまいります。
昨今、社会経済の厳しい変動とあいまって本町の畜産業は極めて厳しい状況下にあります。予防接種事業や飼育指導等など諸制度を積極的に導入し、畜産農家の自主性及び創意工夫を生かし足腰の強い農家の経営改善に努めてまいります。
また、畜産農家から派生する悪臭についても、環境畜産リース事業の活用等によって引き続き問題解決に向けて努力し、快適な生活環境の維持に取り組んでまいります。
年々就業者の高齢化率が増加し、一段と厳しい状況に直面している水産業につきましては、漁業組合や関係機関と連携を深めながら水産業振興計画に基づき後継者の育成や漁業振興を図り、その活性化に取り組んでまいります。とりわけ平成12年度は、漁業者研修センターの設置、港湾計画の見直し等、当面する諸課題について話し合いをもち、漁業組合と一緒になって水産業振興計画の具現化を図ってまいります。
地域活性化の原動力となります商工業の振興は、商工会を中心に経営基盤の強化と近代化を図ってまいります。
特に、商工会が力を入れております地域特産品の研究開発を促進し、付加価値の高い特産品の創出に努めてまいります。また、活力ある地域振興を目指すため、町商工会館の建設を支援してまいります。
上水道につきましては、水の安定的な確保と給水を図る目的で年次的・計画的に整備してまいりましたが、引き続き配水管布設や新設改良を実施し、赤水対策や漏水防止対策に努めてまいります。下水道は、健康で快適な生活環境の確保と公共用水域の水質保全を図るため不可欠な施設であります。新開地内はほぼ整備が終わり、平成12年度は、津波古幹線及び枝線の整備に向けた取り組みを行います。
健康・保養をテーマに地域特性を生かした新たな観光リゾート産業の創出を目指すヘルシーリゾート計画は、健康志向の時流の中、住民の多様なニーズに応えるものとして脚光を浴びており、豊かで活力ある地域づくりに貢献できるものと確信いたしております。引き続き、関係町村と連携して機運の盛り上げを図りつつ諸調査を実施し、国、県の指導・支援を得てその事業化に取り組んでまいります。
南部東道路整備事業については、ルートの問題で市町村間の調整に時間を要していますが、引き続き関係機関との連携を図り事業実施に向けて努力をいたします。
昨年から実施しております農村総合整備事業は、関係四町村の協力で実現に向け取り組んでおります。総合的な観点から農村地域における農業基盤や農村生活環境を整備するため、平成12年度は実施計画の策定業務に着手いたします。
21世紀への道しるべ、夢ふくらむ快適な都市の実現は、中城湾港マリンタウンプロジェクトの成功がカギとなります。今後も国、県及び関係機関との連携を密にして佐敷東地区の事業化に向け最大限の努力を傾注してまいります。
二、夢と希望をはぐくむ町
町民、とりわけ子どもたちが郷土に誇りと愛着を持てるような地域文化の形成と、未来に羽ばたく人材の育成は、まちづくりの基幹をなすものであります。本町には昔から郷土を愛し教育文化を大切にする気風があり、現在も町民一人ひとりの心に強く根付いております。先人たちが築き上げた偉大な伝統・文化等の継承発展の使命を担い、教育・文化行政の推進に尚一層の努力を傾けてまいります。
「学校教育は、生涯学習の根幹をなすもので、学校で身につけた知識がこれからの情報化・国際化、高齢化社会に生きてはたらく力となってまいります。いまこそしっかりと足下を見つめ、「まちづくりは人づくりから」の基本理念に立って、人材育成のための教育施策を積極的に展開してまいります。
いま、個性尊重を基本に、「ゆとり」の中で子どもたちに「生きる力」をはぐくむ教育の展開が求められており、その礎とも言うべき生命を尊重する心、他者への思いやり、美しいものや自然に感動する心などの豊かな人間性の育成を目指し、「心の教育」の充実を図っていくことが重要な課題となっています。
平成14年度から完全実施される新教育課程では、児童・生徒の主体的な学習活動、豊かな表現力等を重視し、時代の変化に対応できる心豊かでたくましい子どもの教育が目指されています。新しく導入される「総合的な学習」の中では健康・福祉、環境問題、地域文化など創意工夫を生かした特色ある教育活動が展開できるようになっており、学校現場をはじめ家庭、地域、関係機関・団体との連携を密にして、移行措置に伴うソフト、ハードの両面から整備支援を行ってまいります。
また、平成11年度から佐敷小学校校舎の増改築工事に着手しておりますが、平成12年度中には新装になった校舎で勉学に励む子どもたちの姿をお見せできることになっております。
文化庁指定の「文化のまちづくり事業」を展開中のシュガーホールでは、その事業の一環として、「青少年のための舞台芸術教育と国際交流事業」を実施してまいります。沖縄と親近性の強いアジアの青少年を対象とした「合唱」「演劇」「伝統舞踊」の指導者を招き、沖縄の指導者とともに視察研修・ワークショップ・国際会議を実施して交流を行い、21世紀に向けて明快なビジョンを構築してまいります。
シュガーホールではそのほか、いまや着実に定着した新人演奏会の継続、4年前に上演し好評を博した「町民ミュージカル」の第2弾の上演、子どもオーケストラの育成等、ますます活発な事業を展開してまいります。
文化センター・コミュニティ施設では、これまで推進してまいりました生涯学習事業が成果を上げ、琴・ダンス・健康体操・音楽活動など、さまざまなサークル活動で賑わっております。生活に潤いをもたらす文化活動の充実を図るため、今後ともその育成に努めてまいります。
明るく豊かなスポーツライフの実現を図るため、平成12年度は地域スポーツ活動活性化事業を新規に導入いたします。スポーツの各種教室・大会をとおして、地域の実情に即した総合型地域スポーツクラブを育成するため、計画的な事業を展開してまいります。開館2年目を迎えた「さしきスポ・レクセンター」では多くの利用者が心地良い汗を流しておりますが、今後も施設の有効利用を促進し、町民スポーツの振興、レクリエーションの普及及び健康の保持増進に努めてまいります。
郷土への愛着は、地域の歴史・文化に対する正しい理解から生まれます。平成12年度から3年間にわたり、佐敷上グスク範囲確認調査を実施し、国・県文化財指定に向けた資料の作成に取り組んでまいります。また、平成11年度から実施しております佐敷小学校敷地内「下代原遺跡緊急発掘調査」は平成12年度内で完了し、貴重な遺跡を記録として保存し後世に伝えてまいります。
また「若水にするてぃ」の公演や「琉球歴史物語講座」の開講など、地域に根ざした中核的文化団体として郷土文化の掘り起こしや継承・発展に大きな役割を果たしております町文化協会に対し、引き続き支援を行ってまいります。
町史編纂事業では、先ほど発刊いたしました「戦争編」が、内外から注目を集め、悲惨な戦争の体験を記録したものとして評価を受けております。多大なご恊力を賜りました証言者並びに関係者の方々に深く感謝するとともに、今後は「移民編」発刊に向け精力的に編纂作業を進めてまいります。
琉球三山を統一した郷土の英雄・尚巴志を再認識し、その歴史的意義、上城周辺の整備のあり方など、多角的な視点からアプローチするため「尚巴志懇話会」(仮称)を設け、佐敷町のシンボルとして町民の心の拠り所となるよう、その足がかりを構築いたします。
女性を取り巻く様々な問題が論議される中、男女共同参画による調和のとれたまちづくりの実現を図ることは重要な課題の一つです。平成12年度は、「女性政策懇話会」(仮称)を設置して活発な討議を行い、女性政策の指針となる「女性行動計画」の策定につなげてまいります。
西暦二〇〇〇年の今年は、本町にとって町制施行20周年という節目の年でもあります。記念式典を開催し、まちづくりに貢献された方々への感謝の意を表するとともに、町民あげて今後の町勢発展を祈念してまいります。併せて、「さしきまつり」、「文化講演会」等の記念事業を開催し、次代を担う人材の育成、地域産業の振興を図り、町民パワーの結集によって活力ある佐敷町を展望してまいります。
三、自然と調和したくらしやすい町
すべての町民が等しく望むのは、安全快適な生活を営むことができるまちづくりにほかなりません。町ではこれまで、地域住民、各種団体、関係機関と協議し、そして協力を得ながら、それぞれの地域ニーズに適した整備を行い、生活環境の改善に取り組んでまいりました。
住民の生活圏の拡大、価値観の多様化、情報化社会の到来による経済のグローバル化等、社会情勢はめまぐるしい変化をみせております。こうした状況の中、那覇広域圈に属する本町においても地域住民の要望は多様・高度化しつつあり、今後とも大局的な見地から真摯な姿勢で課題に取り組んでまいります。
町民が安心してくらせる安全で快適な環境づくりを推進するため、平成12年度は地方改善施設整備事業により津波古地区の下水排水路改良工事を実施してまいります。
地域振興の上から、また生活環境整備の面から重要な役割を持っております町道整備では、仲伊保海岸線及び新里運座線が関係各位のご理解・ご協力により、平成12年度で完了の見込みであります。また、浜之端連絡線と佐敷手登根線は引き続き整備を進めてまいります。
町民の日常生活に潤いをもたらす公園の整備につきましては、平成11年度の冨祖崎公園改修工事に続き、平成12年度は新開公園の改修工事に着手いたします。明るく快適な公園として利用者から喜ばれるよう、公園施設の整備を進めてまいります。また、都市公園に対する町民意識の高揚を図るため「都市公園愛護デー」を設定し、公園施設の総点検及び町民参加による清掃・美化運動を推進いたします。
波穏やかな中城湾と斜面緑地に囲まれた本町は、自然環境に恵まれたまちです。その認識に加え、積極的に自然を守り育て、私たちの生活の中に息づかせる必要があります。「花と緑のガイドブッグ」を指針に、町内環境美化意識の向上に努めてまいります。また、緊急雇用対策事業による「町民シンボル花壇設置事業」を新たに実施し、津波古入り口を中心とした国道沿いの美化及び町民意識の向上を図り、花とみどりにあふれたまちづくりを推進してまいります。全町植物園化構想の推進に向け、佐敷町心豊かなふるさとづくり推進協議会(CGG)を中心に、関係機関・団体、町民の協力のもと潤いのあるまちづくりに取り組むとともに、平成12年度は、町制施行20周年記念事業の一環として「佐敷町植樹祭」を開催いたします。
また、自然環境の保全形成をさらに推進するため、流域森林総合整備事業及び沖縄荒廃森林等緊急整備事業を引き続き実施し、植林及び林内歩道設置等による森林環境の整備と良好な生活環境の確保を図ってまいります。
環境問題は今や自治体の範囲を越え、世界規模での解決が求められる程深刻化しており、全世界のあらゆる人々に最善の努力が課せられていると理解しております。
本町といたしましても「佐敷町一般廃棄物処理基本計画」に基づき、ごみ処理及び生活排水処理の諸問題への対応を強化し、限られた資源や地球環境保全に配慮した循環型社会の実現を目指してまいります。その一環としてフリーマーケットを継続して開催するとともに、事業所の廃棄物分別収集の9月実施に向け協議を進めてまいります。
悲惨な交通事故の撲滅を目指し、町交通安全推進協議会や関係機関・団体と連携を密にしながら、交通安全思想の高揚、街頭指導の実施、交通安全施設の整備など引き続き交通安全対策事業を推進してまいります。
四、健やかで生きがいのある町
急速に高齢化が進む今日、健康で生きがいのある安心して生涯を過ごせる福祉社会を築くことは、行政に課せられた大きな使命であります。とりわけ、高齢者や弱者に優しいまちづくりを推進するとともに町民のあらゆるニーズに的確に対応できるよう総合的な施策を講じ、福祉の風土づくりに努めてまいります。
平成12年4月からスタートする介護保険も関係機関の指導と協力を得て認定作業もスムーズに運び、この3月末には被保険者証の交付を予定しております。また、認定から漏れた申請者に対しましても、国の支援事業等を活用して自立対策を図ってまいります。
さらに、町独自のヘルパー養成講座を開講して専門知識の確立を図り、要介護者に対し十分なサービスが提供できるよう努めるとともに、今後は、徴収体制の確立等課題の解決に向けて職員一丸となって取り組んでまいります。
高齢社会の時代の到来に伴い、老人福祉は今後ますます重要な施策となってくることが予想されます。平成12年度も町老人保健福祉計画、介護保険事業計画に基づき、高齢者が生きがいをもって楽しく過ごせる環境づくりを図ってまいります。併せて、各種クラブ活動や講座に対しても積極的な支援を行ってまいります。
町社会福祉協議会が実施してまいりました小地域ネットワーク事業やボランティアセンターの活動は、その範囲、内容も充実し、地域福祉の向上につながっております。これらの成果を踏まえつつ今後は「高齢者ふれあい健康づくり事業」「生きがい活動支援通所事業」として発展させ、関係機関との連携を密にし、より良いサービスの提供ができるよう支援していきたいと考えております。併せて平成12年度は、福祉バスを購入し、福祉事業の発展、町民福祉の向上に役立ててまいります。
母子・父子福祉につきましては、年々増大する該当者の医療費助成事業を引き続き実施してまいります。また、少子化社会における子育ての支援策として3歳未満児を対象とした乳幼児医療費助成を引き続き実施してまいります。
障害者福祉につきましては、障害者やその家族の多様なニーズに応え、地域において安心してくらしていけるよう、佐敷町障害者計画に基づいて現在実施されているサービスの充実・強化を図るとともに、在宅福祉等の支援強化を図り、障害者の自立と社会参加を促進してまいります。
4年目を迎える「共同作業所さしき」は、地域住民の理解と協力のもと活動内容も充実してまいりました。今後も作業所の安定運営を確保するため、関係団体等と連携をとり、作業の安定供給や自主製品の販路拡大等、障害をもつ方々の就労の場の確保に努めてまいります。
児童福祉につきましては、児童の健全育成や働く女性の子育て支援を図るため、引き続きゼロ歳児保育、放課後児童対策事業、特別保育事業や延長保育等促進基盤整備事業を活用し、町民のニーズに応えるよう努力してまいります。また、すこやか保育サービス事業を継続するとともに、平成12年度は、認可外保育所への運営補助を実施してまいります。
地域福祉の拠点となっている「ひまわり児童館」は、開館以来地域住民に親しまれはぐくまれ、利用者数も順調に推移しております。今後とも、地域住民の憩いの場、情報交換の場として活用できるよう活動内容の充実に努めてまいります。また、平成12年度は、「児童館等整備検討会」(仮称)を設置し、佐敷小学校区への児童館等の整備について検討を進めてまいります。
町民が充実した生きがいのある生活を営むためには、健康であることが何よりも大切であると考えます。町ではこれまで健康づくり事業に積極的に取り組んでまいりましたが、疾病の早期発見・早期治療には住民検診や人間ドックの実施が不可欠であるため、平成12年度も引き続き事業の推進と受診率のアップに努力してまいります。
町では、これまで国庫補助による「高齢者健康指導事業」や「総合保健指導事業」を活用して各世代に応じた健康づくりを推進しておりますが、平成12年度はさらに「中高年被保険者参加型生きがい健康づくり事業」を取り入れ、健康づくりに対する啓蒙活動に力を注いでまいります。また、「健康文化と快適なくらしのまち創造プラン」に基づく諸事業を展開し、更なる町民の健康づくりに取り組んでまいります。昨年発足した「食生活改善推進協議会」も平成12年度は推進員の育成や教室の開催等、本格的な活動に入ることとなっております。
平成12年度は、これまでの健康づくり事業等の成果を踏まえ「健康の町宣言」を行い、健康と笑いの文化講演等を実施し、「寝たきり」をつくらない運動を展開してまいります。これらの事業は琉球大学をはじめ関係機関の協力を得て推進し、町民の健康づくりに対する意識の高揚を図り、医療費抑制につなげてまいります。
町民が老後も安心してくらせるような地域社会を実現するためには、国民年金への加入を促進しなければなりません。このため、今後とも町民に対し国民年金制度の周知徹底を図り、無年金者をなくす運動に取り組んでまいります。
お互いが助け合う相互扶助の精神である国民健康保険制度は、これまで町民の医療の確保と健康保持に大きく貢献してまいりました。しかしながら、近年、国保財政は医療費が県平均を上回り県下でも上位に位置しており、運営の面から憂慮すべき事態となっております。健全な国保財政の運営のため、介護保険部門や保健、福祉活動とも連携を図り、日常生活での健康管理による予防の徹底に取り組んでまいります。併せて、老人医療費適正化対策、保健施設事業にも積極的に取り組むとともに徴収体制の強化、保険税徴収率の向上に力を注いでまいります。
五、平和を考え行動する町
先の大戦において、唯一地上戦を体験した我が県は、23万人余の尊い命と貴重な文化財産や豊かな自然をも失いました。戦後五十有余年を経過した今なお、米軍基地から派生する事件、事故が後を断ちません。一歩間違えば、地域住民を巻き込むような大惨事を引き起こすたびに、深い憤りを覚え、また、平和に対する思いを強くするものであります。
あの悲惨な戦争を二度と起こしてはならないという思いは、県民共通の願いであると考えます。しかしながら現実には、内外の諸情勢、地域振興策等とからみあった沖縄の基地問題は、県民のくらしと安全を守る上でも多くの課題を抱えております。そういう中において私たちは、今一度戦争の悲惨さ、人類滅亡へつながる核兵器の恐ろしさを再認識するとともに、平和な社会の建設を強力に訴えていかなければなりません。
戦後五十有余年を経た今では、戦争体験者の数も減少しており、子や孫に平和の大切さ、ありがたさ、人命の尊さを語り継ぐことが難しくなりつつあります。そういう状況の中、本町においては、各字の古老をはじめ町民の皆さんのご協力のもと昨年「町史戦争編」の発刊をみたことは、誠に意義深いものと考えます。長い歳月と多くの労力をかけて刊行された本町史が、今後、学校教育・生涯教育での活用はもとより、「町史を読む集い」など、家庭や地域での語り部活動を通じた世代と世代の心をつなぐ教材として生かされることを念願しております。
私たちは、過去の歴史と現実を踏まえ、悲惨な戦争体験の教訓を正しく継承し平和で明るい佐敷町をつくるため、平和祈念資料展や平和講演会の開催、戦跡地めぐり等、町民一体となった平和学習に取り組んでまいります。
おわりに
平成11年度は、町民、議会議員の皆様方のご理解とご協力のおかげをもちまして円滑かつ適正な行財政運営が図られ、次のような成果が得られましたことに対し心から感謝申し上げます。
農地保全や営農用水施設の整備など農業基盤整備も着実に進行し、農村環境の改善が図られてきております。
農家と消費者を結ぶ農産物直売所は、運営も順調に推移し、多くの利用者で活気にあふれ、人々のふれあい、高齢者の生きがいづくりに寄与しております。
意欲的な音楽文化の発信、町民参加型の企画で注目を集めておりますシュガーホールでは、平成11年度も多彩な事業を展開しました。とりわけ、「未来へのハーモニー」と題した町民音楽祭は、町内の音楽家たちの競演や宮城県矢本町からの友情出演もあり、素晴らしい演奏と歌声で好評を博しました。また、応募枠の拡大により世界へと門戸を開いた新人演奏会は、高レベルの演奏で聴衆を魅了しました。
人と環境にやさしい循環型社会の実現を目指して取り組んでおります環境対策も堅実な進展をみせております。
ごみの五種類分別、有料化等は町民の間に浸透し、搬出されるごみの量は減少傾向にあります。多くの参加をいただいた健康ウォーキング&サミットクリーンアップ作戦や近く開かれるフリーマーケットなど、今後とも、町民の理解と協力のもと清潔で快適なまちづくりに取り組んでまいります。
町ではこれまで町民の健康づくりのための各種事業を推進してまいりましたが、今後は、「健康文化と快適なくらしのまち創造プラン」にそって町民の積極的な参画のもと保健・医療・福祉の充実を目指したまちづくりに取り組んでまいります。
また、複雑多様化する事務処理に的確に対応し、質の高いサービスを提供するため昨年新しい総合行政情報システムを導入しましたが、今後とも適切な運用と内容の充実に努めるとともに、平成12年度からは昼間の窓ロ業務を開始し、住民の利便性の向上を図ってまいります。
また、町政への理解と協力を求めるとともに町民の意向を町政に反映させ、町民参加のまちづくりを推進するため、平成12年度は行政懇談会を実施いたします。
以上、所信の一端と施策の概要について申し上げました。国内外の政治経済の急激な変化の中、時代に流されることのない確固たる強い意志と信念を持ち、来たるべき21世紀を展望した町政運営が重要であります。
西暦2000年度の町政運営を担当するにあたり、これまでの実績を踏まえながら、より積極的に行財政改革を推進すると同時に、職員の資質向上を図りつつ、引き続き町政の重要課題解決にまい進し、将来を見据えた堅実な町政運営に努めてまいる決意でおります。初心を忘れることなく、町民の信託に責任を持って応えられるよう精一杯努めてまいりますので、議員各位をはじめ町民の皆さんのご理解、ご協力を賜りますようお願い申し上げます。
平成12年3月9日
佐敷町長 津波元德
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大分類 | テキスト |
資料コード | 008453 |
内容コード | G000000745-0010 |
資料群 | 旧佐敷町(佐敷村)広報 |
資料グループ | 広報さしき 第273号(2000年4月) |
ページ | 6-11 |
年代区分 | 2000年代 |
キーワード | 広報 |
場所 | 佐敷 |
発行年月日 | 2000/04/10 |
公開日 | 2023/12/14 |