環境と私 佐敷中3年瀬底優香
自分が人より恵まれていると思った事はありませんか。それは例えば、容姿であったり、頭脳であったり、運動神経であったり、あるいは家柄であったりするかもしれません。何かひとつでも他人に自慢できること。それを「恵まれている」と、心から感じた事はありますか。
私の場合は、自分を取り巻く環境にとても恵まれたと思います。
中学生活ももう3年になります。
アトピー性皮膚炎を持つ私にとって、クラスの半数が見ず知らずという中学生としてのスタートは、少なからず不安を伴うものでした。
うまくクラスになじめるだろうか、友達はできるだろうか…。何もかもが新しい中、そんな風に心が揺れたのを覚えています。けれど、そんな不安と共に始まった中学校生活は、たくさんの良い友人や理解ある先生方と出会えたおかげで、思ってもみなかったほど順調に進んでいます。
こんな中、去年、校内意見発表の場で、アトピーでつらかった時の事やその時支えてくれた家族の事など、自分自身の思いを伝える機会を得ることができました。その後、思いもよらないたくさんの温かい言葉をもらい、とても勇気づけられました。その時の理解されるうれしさに、自分自身をさらけ出すことが受け入られる第一歩だと知ったのです。自分自身を、自分自身の思いを、隠すことなくさらけ出し伝えること。そうすることで私は学校という場に、より確かな足場を得たような気がします。
3年生となった今、受験生という立場にありながら、新学期早々アトピーがひどくなり、かなりの日数を欠席してしまいました。新しいクラスが発表された日も出られず、グラスメートの大半を知らないまま、人よりかなり遅れたスタートとなってしまったのです。
けれどそんな中でも、学校へ出られた日には「もう大丈夫?」とか、「さびしかったよ」とか、「出られて良かったね」と、温かい笑顔と言葉が、いつでも私を受け入れてくれます。
友人たちのいたわりと、先生方の気遣い。包みこむような優しさの内に、いつでも自分の居場所がある。度々の欠席、荒れた肌と、いじめにつながる要素を充分に持ち合わせているのに、いじめられるどころか逆に気遣ってもらい、さりげない優しさで接してもらえる。そのことが不思議だと思いながら、心が震えるほどうれしくてなりません。
このような時、自分を取り巻く環境にとても恵まれたと感じます。
それと同時に、環境がなぜこんなにも私にとって恵まれたものなのか。そう考えた私に、母が言いました。「その環境は、自分自身が作るものなんだよ」私を取り巻く環境を、私自身が作っている。そんな言葉に、私はとても驚いて、すぐには意味をつかむことができませんでした。
以前母に「自分が好きでしょう」と聞かれ、迷わず、大好きだと答えたことがあります。自分自身を誰よりも認め受け入れること。そのままの自分を、飾らず隠さず、さらけ出せる強さ。そんなことが、去年の意見発表の時感じたように、理解され、受け入れられる理由だと、母は教えてくれました。そして、自分を隠さず人に示せるそんなことが、私にとって揺るぎない自信となって、友人たちや先生方の優しさを、今の自分を支える「恵まれた環境」に変えてゆくことができるのだと思います。
「恵まれる」ということは、決して与えられるばかりでなく、そのことに気づき、自分の手でつかみとってこそ意味のあるものだと、私は考えます。私自身が恵まれたと思える今の環境も、まず私が自分を心から好きだと思い、そして相手に理解してもらおうとして初めて、築くことができたのです。
だからこそ、私は恵まれたことに甘えず、今の自分と自分を取り巻く環境を大切にしていきたいと思います。「あなたは恵まれていますか?」そう聞かれた時、「はい、とても恵まれています」と、笑って答えられるように。
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大分類 | テキスト |
資料コード | 008452 |
内容コード | G000000737-0008 |
資料群 | 旧佐敷町(佐敷村)広報 |
資料グループ | 広報さしき 第269号(1999年12月) |
ページ | 6 |
年代区分 | 1990年代 |
キーワード | 広報 |
場所 | 佐敷 |
発行年月日 | 1999/12/10 |
公開日 | 2023/12/14 |