はじめに
第142回佐敷町議会定例会に当たり提案致しました平成11年度当初予算をはじめ、条例その他の議案のご説明に先立ち、町政運営についての基本方針を申し述べ、議員各位はじめ町民の皆さまのご理解とご協力を賜りたいと存じます。
今日、世界は冷戦後の新たな世界秩序の構築に向けた模索という胎動の時期にあります。人やもの、金、情報などが従来の国家という枠組みを越え、瞬時にかつ複雑に世界規模で動き、国際社会はかつてない経験に直面しております。
わが国にあっては、少子・高齢化、情報化、国際化の進展をはじめ、身近な福祉、教育、環境など多くの諸課題に直面し、また一方で、金融不安の解消、景気浮揚への対応はもとより、将来に向けての明快なビジョンを示し展望を拓くことが切望されているところであります。
県内においては、経済振興策を第一に掲げる稲嶺県政の誕生に伴い、基地問題の解決促進、地域特性を活用した豊かな沖縄の実現が目指されますが、当面、厳しい経済状況から脱却し、経済の自立と雇用の安定を図っていくことが、県政の最重要課題となっています。
いじめや不登校、学級崩壊など、近年学校や青少年をめぐる諸問題が全国的に多発しており、教育改革への取り組みがグローズアップされています。本町においても実態の掌握と相談体制の充実を図り、家庭、地域、学校が連携してその解決に努めつつ、発達段階に応じた「心の教育」を充実させる必要があると考えております。
長引く不況による閉塞感がただようなか、県内経済に一部回復の兆しは見られるものの、行財政環境は一層厳しさを増している状況にあります。本町でも財政の硬直化が進み、予算編成も厳しい現状にあります。しかし、町政運営にはいささかの停滞も許されません。地方分権が実行の段階を迎える中、地方公共団体の責任はますます重くなってきています。克服すべき障壁は大きくとも、創意と英知を結集して行政改革を推進し、財政運営の一層の健全化、効率化に努めてまいります。
21世紀を目前に、時代は大きな変革のときを迎えております。国内外とも激動する情勢の中で、私は新しい時代を町民の皆さまとともに力強く切り開いていきたいと思います。
そうした意味で、平成11年度は引き続き「改革と創造」をテーマに、これまで取り組んできた諸施策の成果を踏まえつつ、21世紀に向かって進む佐敷にさらに活力を吹き込み、新時代への架け橋となるよう全力で取り組んでまいりたいと考えております。
基本施策
私は、町政運営の重責を担って以来、一貫して人間の尊重と育成、友愛の福祉と連帯に支えられた地域社会の創造、活力ある経済基盤の確立を目指して、諸事業の積極的な展開を図り、町民の幸せと安全に渾身の努力を傾注してまいりました。
この間、農業基盤の整備をはじめ社会資本の拡充、福祉、体育施設の設置など、行政の各分野において町民生活に密着した諸施策の推進、各種施設の整備が図れたほか、シュガーホールの積極的な活用によって、文化の香り高いまちづくりも着実に進展してまいりました。これもひとえに議員各位をはじめ、町民の皆さま並びに関係機関のご理解、ご協力の賜と深く感謝申し上げる次第であります。
少子・高齢化、高度情報化あるいは国際化の進展など社会情勢が変化する中で、21世紀を目前に国の政治経済は大きな変革期にさしかかっております。
地方においても、このような時代の変化を見通し、住民ニーズに対処しながら個性豊かで活力に満ちた地域社会を造ることが最大の課題であると考えております。
私は、町民本位の開かれた行政運営を基本理念に、これまで町勢の発展に努めてまいりました。しかしながらマリンタウンプロジェクト、公共下水道、ヘルシーリゾート構想の推進など、新時代を拓く佐敷のまちづくりにとって多くの課題が残されていることもまた事実であります。これら主要事業は地域活性化の核となるだけでなく、県経済の自立的発展にも大きく寄与するものであり、国・県の指導支援を得て、その推進に全力で取り組んでまいります。
私は、常に初心を忘れることなく町民の心を心とし、「町民参加」「公正・公平・清潔」「思いやり」を基調に、町民の英知と職員の創意工夫で行政改革を推進し、分権型社会を担う行政の確立に努めてまいります。
そこで、町政の運営にあたっては、平和憲法の理念を尊重しつつ、地方自治の本旨をふまえ次の三点を基本姿勢に全力を尽くしてまいります。
一 自然を大切にし、教育、文化の向上を図り、人間的なふれあいと潤いのあるまちづくりを目指します。
一 産業を振興し、住みよい生活環境の整備を図り、町民に夢と希望を与える明るいまちづくりを目指します。
一 福祉と健康を大事にし、思いやりとやすらぎのある平和なまちづくりを目指します。
以上の三点を町政運営の基本とし、21世紀に羽ばたく健康で明るい佐敷町をつくるために、皆さまとともに努力してまいりたいと存じます。
地方分権は今や実行の段階を迎えておりますが、地域の自己決定・自己責任の原則を確立するとともに、地方自治体自らが地方分権の担い手として、地域からの発想と責任のもと、複雑多様化かつ広域化する様々な行政需要に的確に対応していかなければなりません。
同時に、行政にかかわる情報の公開は、その公正・透明性を確保する上で不可欠の要素です。今国会において「情報公開法」が成立するのを受け、地方分権の推進と連動して情報公開条例の制定に向けた取り組みが注目されています。
加速する地方分権や情報公開の動きに乗り遅れないためにも、迅速的確な情報収集に努めるとともに、勉強会や研修の機会を通じて資質同上と意識改革を図り、地域住民のニーズに柔軟に対応し地域の将来を共に語れる職員を育ててまいります。
行政改革は、本町にとって急がなければならない重要な事案であります。新年度は、厳しい財政運営のもと管理職手当等を削減するとともに、ワーキンググループを設置して定員管理、組織機構の改革、事務事業及び補助金の見直しなど当面する諸課題を検討し対処策を探ってまいります。
また、高度情報化社会の中でますます多様化する住民ニーズと複雑化する事務処理に迅速に対応し、質の高いサービスの提供を図るため、新しい総合行政情報システムを稼働してまいります。
さらに、産業、生活、教育、文化等各面における今後の佐敷の果たすべき役割を明確にし、21世紀初頭への展望のもと町政の進路を確立するため、町民の総意と英知を結集して「第三次佐敷町総合計画」を策定してまいります。
本町の行財政運営の基本施策は、「意欲と創造性にみちた産業の振興」「個性あふれる地域文化の創造」「ゆとりと潤いのある住環境の形成」「温かなふれあいのあるまちづくり」「平和で明るい社会を目指して」であります。新年度もこの基本施策を踏まえつつ、住民福祉の同上、町勢の発展に努めてまいる所存であります。
町民の英知と郷土愛を原動力に今後もまちづくりのハード、ソフトの各分野で町民と協働し、また役割を分担し、より一層深い信頼の絆に支えられたまちづくりを進めてまいりたいと存じます。
1.意欲と創造性にみちた産業の振興
活力のあるまちづくりを実現するためには、地域経済の振興に加え社会資本の充実を図ることが不可欠であります。関係機関及び関係者との緊密な連携のもと一体となって課題に取り組み、産業の振興と社会資本の整備を図ってまいります。
農業はいうまでもなく町の基幹産業であり、その振興と農業を取り巻く社会的環境の変化に対処するため、認定農業者制度の普及定着を図り、経営感覚に優れた農業者の育成に努めます。併せて生産性の同上、農業経営強化のため生産基盤の整備を行ってまいります。
農業経営の多角化と農家所得の増益のため、新奨励品種作目の導入を更に促進してまいります。導入済みの優良果樹の栽培拡大と栽培技術の充実を進めるとともに、県内外にもアピールできる地域特産品に結び付くよう努力してまいります。また、農地流動化推進委員や関係機関と連携して、遊休農地の解消に努めてまいります。
長年にわたり進めてまいりました本町の土地改良事業は、関係農家のご理解により整備率が90%を越えました。今後は営農指導の充実により整備完了地区の高度な活用を図ってまいります。
伊原地区、新里地区、屋比久地区で実施しております団体営農地保全整備事業は、新年度は新たに落水地区の整備をスタートさせ、降雨時の排水路の氾濫による農地の崩壊や作物被害の防止を図ってまいります。
豪雨時の災害対策として重点的に取り組んでおりますため池等整備事業は、手登根、つきしろ地区において引き続き実施し、畑地の保全や人身への被害防止等に努めてまいります。
さとうきび収穫の作業省力化を目的に平成8年度から導入いたしましたハーベスターは、その稼働率も年々上昇しており栽培農家の間で定着しつつあります。併せて、新優良品種の導入や営農指導の充実によりきびの生産拡大を図ってまいります。
また、農業経営に不可欠な農業用水の安定確保を目的に、構造改善事業による営農用水施設を伊原地区、小谷地区に新設いたします。構造改善事業では佐敷地区内の農道整備も実施し、粉塵被害や降雨時の浸水被害の解消を図ってまいります。
畜産業は、輸入自由化や価格の低迷など厳しい状況にありますが、予防接種事業や飼育指導等により振興に努めてまいります。
また、畜産経営に伴う悪臭問題については、快適な生活環境の維持のため改善指導を強化するとともに、環境畜産リース事業を活用した浄化施設の導入によって解決を図ってまいります。
就業者の高齢化が問題となりつつある水産業の振興については、漁業組合等、関係機関と連携して後継者育成や活性化等に取り組んでまいります。
地域経済活性化のカギともなります商工業の振興は、商工会と連携して経営基盤の強化と経営の近代化、特産品の開発に努めるとともに、商工会館の建設を促進して活力ある商工業の推進に努めてまいります。
良好な生活環境の保全を図るため計画的に進めております道路整備事業は、佐敷手登根線、仲伊保海岸線、伊原屋比久線、新里運座線、桃原川良線などを継続して整備してまいります。また新年度は、浜之端連絡線の整備に着手いたします。
南部東道路整備事業につきましては、関係市町村間でルートの具体的検討が進められております。事業実施に際して今後とも関係機関との連携を密にし、地域住民の要望に沿った形での事業実現に努力してまいります。
上水道につきましては、水道整備計画に基づいて町全或で老朽管更新事業を実施し、赤水対策と漏水防止対策を図ってまいります。また、西側地域への安定供給のため第一配水池を設置し、長期渇水時の安定供給と自然災害時への対応を強化してまいります。
都市機能の同上と公衆衛生・環境浄化等を図るため、公共下水道事業を推進してまいります。新年度は新開地内の枝線の工事を実施し、事業完成に向け計画的に段階を進めてまいります。
新たなタイプのリゾートとして注目を集めておりますヘルシーリゾート構想は、事業化実施計画調査の報告に基づいて検討を進め、関係町村や関係部局との調整を図りつつ、その事業化に向け最善の努力を続けてまいります。また、迫りくる21世紀に多くの町民の希望をつなぐ中城湾港マリンタウンプロジェクトは、その佐敷東地区の絵形もほぼ決定し、実現に向け着実に手続きを進めております。今後も国、県及び関係諸機関との緊密な協力関係を保持しながら、埋立免許取得に向け精力的に取り組んでまいります。
2.個性あふれる地域文化の創造
本町は、これまで「まちづくりは人づくりから」を基本理念に掲げ、教育・文化の振興に取り組み、多くの有能な人材を世に送り出してまいりました。私たち後進は諸先輩方の築いてこられた功績を誇りとするとともに、その伝統を継承し発展させることはもちろん、自らも切磋琢磨しなければならないと考えております。
学校教育、生涯学習の重要性を再認識し、国際社会、情報化社会に対応できる人材育成に努めてまいります。
学校は、すべての子どもに学ぶ喜びを体験させ、それぞれに個性と能力を伸長し、また、友だちや教師との人格的なふれあいを通して、自他の人格を尊重する心を持たせる場だと認識しております。しかしながら、現実には、いじめや不登校等の問題が多発する傾向にあり、非行の低年齢化も進んでおります。その原因を究明し、家庭、地域、学校が力を合わせ問題解決に当たらなければなりません。義務教育においては、子ども達の個性を伸ばし、子ども達自らが学び、考え、行動できるゆとりある環境づくりや心の教育の充実が求められています。平成10年度においては、佐敷中学校にコンピュータ機器を設置し、情報化時代に対応した教育施設の整備に努めるとともに、いじめや不登校等の問題に対処するためスクールカウンセラーを配置してまいりました。平成11年度は、佐敷小学校の校舎の増改築事業に着手するとともに、より良い環境の中で充実した教育を受けられるよう条件整備に努力してまいります。スクールカウンセラーをさらに活用して相談体制の充実を図るとともに、広く学校内外の専門家や教育相談機関と緊密な連携をとりながらいじめや不登校など学校を取り巻く諸問題に対処したいと考えております。
また、心豊かで健康な児童生徒を育て、ゆとりある学校生活と教育内容を充実するために、シュガーホールを活用した芸術鑑賞の機会を拡充してまいります。
近年の社会情勢の変化に伴い、人々の価値感は心の豊かさや安らぎのある生活を大切にする考えに変わりつつあり、生涯学習、生涯スポーツの重要性は一段と増してきております。今後とも町民のニーズを的確に把握しながら、誰もが気軽に参加でき、趣味を生かせる環境づくりに取り組んでまいります。
本町の目指す「音楽によるまちづくり」は6年目になります。ご承知のとおり、佐敷町文化センター・シュガーホールは、開館以来、町の文化活動の拠点として町民はじめ多くの方々の力を結集して様々な文化事業を展開してまいりました。その成果が評価され昨年文化庁から「文化のまちづくり事業」の指定を受けたことは実に意義深いことであり、新たな事業展開を図る上で大きな励みとなっております。
11月には20余年ぶりに文化まつりを開催するなど多彩なイベントを繰り広げてまいりました。
「創造の庭フェスティバル」のメインテーマにふさわしく、古くから伝わる民俗文化と町民劇団「賞味期限」をはじめとする活気ある若者文化の競演、交流は多くの人たちを魅了し、まつりは大成功を収めました。今後とも町民各層の幅広いお力添えを得て、地域・異世代間の交流による文化の創造を目指して努力を続ける所存であります。
毎年開催しておりますシュガーホール新人演奏会も応募枠の拡大に伴い、さらに充実の度を深めております。
新年度も、施設の有効利用を図りつつ文化創造の担い手となる人材の育成に努めるとともに、各般各層の知恵と力を結集しながらシュガーホールの特性、個性が一段と際立つ企画・運営に努めてまいります。
地域文化の継承・発展につきましては、「佐敷・ルネッサンス構想」の実現に向けた取り組みを継続してまいります。佐敷グスクを中心とした遺跡詳細分布調査は新年度も継続して行い、県文化財の指定に向けた資料の作成に取り組んでまいります。
佐敷町史編集事業につきましては、「戦争編」の発刊が平成11年度にずれ込み各方面にご迷惑をおかけしておりますが、できるだけ早い時期に発刊し、恒久平和を希求する町民の平和への手引き書としてまいります。
また、町の文化振興に大きな役割を果たしている佐敷町文化協会に対しましても、これまで同様支援を行ってまいります。昨年のさしき文化まつりでは伝統芸能の復活に際して多大なご尽力をいただきましたが、今後も相協力し、民俗文化、伝統芸能の発掘・継承及び新たな佐敷文化の創造に力を注いでまいります。
余暇時間の増大、健康に対する町民の関心が高まりをみせる中、本年1月には「さしきスポ・レクセンター」を開館いたしました。本施設をはじめ各体育施設を活用してサークル活動を育成、支援するとともに、町体育協会と協力して、町民スポーツの振興、レクリエーションの普及及び健康の保持増進に努めてまいります。
3.ゆとりと潤いのある住環境の形成
町民生活に密着した快適で安全なまちづくりは、町政運営の大きな柱であります。
本町ではこれまで自然との調和を基本に、多様化するニーズを多角的に検討しつつ、均衡ある発展を図るため全町的な視野に立って地域の実情に即した整備を行ってまいりました。これからの時代は、協働のまちづくり、すなわち、行政と地域住民がそれぞれの役割を担いつつ、住み良い環境整備、地域社会づくりのために力を合わせていくことが大切だと考えております。
那覇広域圏に属する本町では、社会の変遷、都市化の波とともに町民の意識も物質的な豊かさから心の豊かさへと変化しつつあります。今後とも総合的な見地から自然環境の保全に配慮しつつ、利便性の高いゆとりと潤いのあるまちづくりを進めてまいります。特に、参加とふれあいに支えられた人情味ある地域環境の実現に向け、コミュニティの育成を図りながら質の高い住環境の整備に努めてまいります。
近年、たび重なる豪雨が原因で土砂の堆積や河川の氾濫が発生し、家屋への浸水や農作物被害などで町民にはご心配をおかけしました。災害対策は町政の最重要課題であり、昨年に引き続き、新規も含め伊原、新里、屋比久、つきしろ及び手登根地区の団体営農地保全事業を推進し必要な対策を講じてまいります。
道路は町民生活に密着し町の健全な発展に寄与するものであり、これまで地域の実情を勘案しながら、年次的に整備を進めてまいりました。引き続き仲伊保海岸線をはじめ主要幹線道路の整備に取り組むとともに、集落内における交通の安全確保を図るため浜之端連絡線や新里運座線の整備を行ってまいります。
町民が日常生活の中でスポーツ、レクリエーションに積極的に親しむことは健康づくりのみならず、心身のリフレッシュを促し心豊かで張りのある社会生活を営む上でも有意義なことであります。本年オープンしたさしきスポ・レクセンター周辺の整備と引き続き冨祖崎公園の改修工事を行い、スポーツライフの拠点として町民の健康増進、コミュ一ケーションづくりに役立ててまいります。
町内各所にある公園は、町民の憩いの場、ふれあいの場として親しまれ広く利用されております。引き続き公園管理を強化し児童公園の遊具等の補修や樹木剪定等を行い、安全で快適な環境づくりに努めてまいります。
緑豊かな自然環境は、人々に安らぎを与え心を和ませてくれると同時にかけがえのない貴重な財産であり、後世に引き継ぎ発展させることが私たちの責務です。新年度は、身近な自然とのふれあいを通して自然愛護の心を育てるため、「花とみどりのガイドブック」を作成するとともに、佐敷町心豊かなふるさとづくり推進協議会(CGG)や関係団体の協力を得て、まちぐるみの花いっぱい運動や町内美化に取り組み、全町植物園化構想の推進に努めてまいります。
本町は、町民の理解のもと自然との調和を大事にしたまちづくりを進めてまいりました。造林事業の推進により森林機能も徐々に回復しつつありますが、引き続き流域森林総合整備事業により環境保全や経済林の育成を図ってまいります。また、屋比久の傾斜地を中心に実施しております沖縄荒廃森林緊急整備事業を継続し、植林や林内歩道の整備を行ってまいります。
ごみ問題は、今や地球的規模の問題として人類の最重要テーマであります。本町では5種類分別収集や有料化により、ごみに対する町民の意識の高揚が図られ一定の成果をあげてきました。今後は、循環型社会の実現を目指した取り組みをさらに進め、5種類分別から7種類分別への移行を検討し、一層の資源の有効利用とごみの減量化に努力してまいります。
また、新年度は、一般廃棄物処理の長期的なビジョンを明らかにし、実現に向けた現実的かつ具体的な施策を総括的に検討するため、東部清掃施設組合と連携して佐敷町一般廃棄物処理基本計画を策定してまいります。
近年まれにない豪雨のため国道の冠水により浸水し、町民には農作物の被害等でご心配をおかけしておりますが、引き続き国や国道事務所の協力を仰ぎ、新里地区の国道を横断するボックス、暗渠の改修に取り組んでまいります。
交通安全対策は、今日の車社会において欠かすことのできない重要な課題であります。引き続き町交通安全推進協議会及び関係機関と連携して交通安全運動を推進し、交通三悪の追放、交通ルールの遵守を喚起しつつカーブミラーなど交通安全施設の整備に努めてまいります。
4.温かなふれあいのあるまちづくり
急速な高齢化が進む中、保健・医療・福祉の連携のもとに、町民誰もが安心して健やかに生活を送ることのできる福祉社会を築くことが重要であります。高齢者や障害者等弱者にやさしいまちづくりを推進するとともに、町民の多様なニーズに対応した総合的な施策を講じ、福祉の風土づくりを進めてまいります。
高齢化の進展に伴い、介護の問題は、老後生活における最大の不安要因となっております。平成12年度から「介護保険制度」が導入されますが、制度移行に当たっては、関係機関の協力を得て庁内体制を整備し準備に万全を期してまいります。要介護者に対し十分なサービスが提供できるよう介護保険計画を策定するとともに、認定対象外となる人へもきめ細かな配慮をしてまいります。
老人福祉については、高齢者が、生き甲斐をもって楽しく過ごせる環境づくりと佐敷らしい明るい長寿社会の形成に努めてまいります。町老人保健福祉計画の改訂作業に取り組むとともに、老人福祉センターの手すりを改善し、高齢者等の安全確保と利便性の同上を図ってまいります。また、町財政に影響を及ぼす老人デイケア問題については、調査結果をもとに適切な対処策を講じるとともに、高齢者の健康づくりに力を注ぎたいと考えております。
町の社会福祉協議会が平成9年度から実施している小地域ネットワーク事業やボランティアセンターの活動は、地域全体でお年寄りや障害者を支える新しい隣組制度として着実な拡がりをみせています。今後とも社会福祉協議会や各機関、関係団体と連携して継続的に支援し、地域福祉の基盤強化に努めてまいります。
母子・父子福祉についても、引き続き母子、父子家庭の医療費助成事業を推進してまいります。また、健やかな子どもを生み育てる育児環境を整備するため、県と協力して乳幼児医療費助成事業の対象年齢を3歳未満児まで引き上げて助成します。
障害者福祉につきましては、障害者の自立と社会参加を支援するため、先に策定した障害者基本計画に基づき、身体障害者ホームヘルプサービス事業、身体障害者短期入所事業、更生援護施設入所通所措置事業及び補装具給付事業など必要なサービスを提供してまいります。
平成9年度に開所した「共同作業所さしき」は、心身に障害をもつ方々の自立と社会参加を促進する上で重要な役割を担っています。引き続き支援を行うとともに、事業内容の充実強化に努めてまいります。
少子化や核家族化の進行に伴い子ども同士のふれあいや多くの人々との交流機会が減り、非行児童の低年齢化やいじめなどが大きな社会問題となっております。家庭はもとより地域ぐるみで児童の健全育成を図っていくことが急務でありますので、民生委員・児童委員など関係機関と連携を密にし諸問題に対処してまいります。
保育事業につきましては、ニーズに沿った保育に努めるとともに、特別保育事業や延長保育等促進基盤整備事業等、働く女性の子育てを地域全体で支援する基盤形成に向けて引き続き実施してまいります。さらに、放課後児童対策事業など、無認可、学童保育施設に入所している児童の福祉の向上を図ってまいります。
子どもたちの創造性を高め、地域福祉の拠点ともなる「ひまわり児童館」が昨年2月に開館いたしました。
子どもたちはもとより町民が楽しく利用でき、ふれあいの場、情報交換の場として有効に活用できるような施設運営に努めてまいります。
「自分の健康は自分で守る」をモットーに、町ではこれまで健康づくり事業に取り組んでまいりました。疾病の緊期発見、早期治療の重要性を再認識し、新年度も引き続き住民検診や人間ドック事業を推進し、受診率アップに努めてまいります。
県から健康づくりのモデル市町村に指定されたのを受け、町では平成11年度から5年間、国庫補助による「総合健康指導事業」を実施することになりました。
住民検診等の結果をもとに65歳未満を対象に高血圧、糖尿病予防対策を重点的に実施して疾病の重症化を防ぎ、健康の保持増進、医療費の低減に努めてまいります。
急激に進む高齢社会の中で、老後の安定した生活と家族の安心を守るために大きな役割を担っている国民年金については、広報活動を強化して制度の周知徹底を図り、無年金者の発生防止及び青年層の加入促進に努力してまいります。
本町の医療費は県下でも上位に位置し、国保財政運営の面から憂慮すべき事態となっております。国民健康保険事業におきましては、医療費適正化対策、保健施設事業に積極的に取り組み、増大傾同にある医療費の抑制に取り組んでまいります。引き続きレセプト点検に力を入れるとともに徴収体制を強化し、保険税収納率の向上を図ってまいります。
5.平和で明るい社会を目指して
沖縄は先の大戦において唯一の地上戦を体験し、23万人余の尊い命が奪われ貴重な文化財産や豊かな緑も失いました。戦後の混乱や米軍統治、そして日本復帰、今なお続く米軍基地から派生する被害の数々など、苦難にみちた激動の歴史を振り返りつつ沖縄の現状を目の当たりにする時、町民は深い悲しみと戦争への憤り、平和に対する思いを強くするものであります。
あの悲惨な沖縄戦の惨禍が二度と起こらないよう、戦争という愚かな行為を繰り返すことがないよう、人類滅亡へつながる核兵器をなくし平和な社会の建設に向け不断の努力を続けていくことが、今に生きる私たちの使命であり、後に続く世代への大きな責務だと考えます。新年度は、町史戦争編の発刊、活用と併行して平和講演会や平和資料展などを町民各位、各団体のご協力のもと開催してまいります。
また、過去の悲惨な歴史を後世に正しく継承することは私たちの責務であることから、引き続き学校における平和教育や平和体験学習等を実施し、平和に対する思いや諸問題をともに考え平和なまちづくりにまい進したいと考えております。
終わりに
平成10年度は、町民、議会議員の皆さま方のご理解とご協力のもと、円滑な町政運営が行われ、多くの成果が得られましたことに対し厚く感謝申し上げます。
さて、地域における洪水対策は、町政にとって大きな課題となっております。懸案でありました国道を横断するボックス、暗渠の改良工事につきましては、国及び国道事務所のご尽力により津波古、手登根地区が完了いたしました。住民の生命財産を守り、災害を未然に防止する上でも大きな役割を果たしております。
また、待望の国道331号、兼久交差点への信号機の設置は、交通事故の防止、住民生活の同上に貢献しております。地域の実状を賢察のうえ実現にご尽力いただきました国、国道事務所、与那原署及び関係各位に対し衷心より御礼申し上げる次第であります。
農業基盤整備も着実に進行し、農村環境の改善、農業経営の多角化も進んでおります。昨年オープンした農産物直売所は、多くの利用者で活況を呈しており、生産者と消費者のふれあい、高齢者の生きがいづくりに寄与しております。
まちづくりのシンボルとなっておりますシュガーホールでは、平成10年度も精力的な取り組みを展開いたしました。20余年ぶりに開かれた「さしき文化まつり」の成功は、異世代交流、地域文化の継承、新たな文化創造という観点から意義深いものであったと喜んでおります。
また、多くの同窓生や町民、関係者の皆さまのご理解とご協力のもと取り組んでまいりました佐敷中学校50周年事業も、昨年成功裏に終了することができました。
おかげをもちまして教育環境も立派に整備され、学校教育の振興、生徒たちの学習意欲の向上に大きな力となっております。この場を借りて厚く御礼申し上げます。ごみ処理問題では、5種類分別、門口収集、有料化に対する町民の理解も徐々に浸透し、ごみ搬出の減少につながっております。ごみの7種類分別の検討、佐敷町フリーマーケットの開催など人と環境に優しいリサイクル社会の実現を目指して、今後さらに積極的に取り組んでまいります。
懸案でありました集落地域における悪臭問題については、事業主、保健所及びJA島尻東等の理解と協力のもと解決に向け一歩踏み出すことができました。今後とも、地域の環境衛生の改善に努力してまいります。
行政サービスの向上を目指し、さわやか窓口推進委員会を設置して庁内案内板の設置等、窓口環境の改善に取り組んでまいりました。引き続き窓口の充実に努めるとともに、懇切丁寧な対応を通して住民の利便性の向上を図ってまいります。
これからのまちづくりは、地域と行政がしっかりと手を携え、共に汗を流すことが大切です。「まちづくり百人委員会」を早急に立ち上げ、町政の諸課題を各方面から論議し、創意と協働で築く魅力あるまちづくりを展望してまいります。
町政の究極の目的は、「住民福祉の向上」にあります。
21世紀を目前に控え、次の世代に、誇れるふるさと佐敷として引き継ぐことが私の使命であり、先人に対する義務であります。私は、町民の皆さまが住んでいて良かったと思われるまちづくりに渾身の力を傾注してまいる所存であります。
以上、平成11年度の施政の基本方針について申し上げました。議員の皆さま方におかれましては、なにとぞ慎重なご審議をいただきまして、ご議決賜りますようお願い申し上げます。
平成11年3月12日佐敷町長 津波元德
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大分類 | テキスト |
資料コード | 008452 |
内容コード | G000000729-0007 |
資料群 | 旧佐敷町(佐敷村)広報 |
資料グループ | 広報さしき 第261号(1999年4月) |
ページ | 6-11 |
年代区分 | 1990年代 |
キーワード | 広報 |
場所 | 佐敷 |
発行年月日 | 1999/04/10 |
公開日 | 2023/12/14 |