文化協会俳句教室十月例会より。瀬底月城選
柴差しも媼に習ふ新世帯 与那嶺末子
(評)沖縄では陰暦8月9日に、桑の小枝と芒の二、三本を束ねて軒の四角等に差し、悪霊、悪疫を払う「物忌み」の行事がある。新世帯では柴差しも、他の行事も、母や祖母から教わり、家内安全を祈る。ほほえましい「家の和」の旬ではある。媼(おうな=老女)。
蟷螂の顔をはみ出す眼かな 城間睦人
(評)蟷螂はトウロウとも読みカマキリとも読む。蟷螂の眼(まなこ)は三角形の頭部の上の両方に突き出たように見える。このおどけたまなこが「顔をはみ出す」と、うまくとらえた所が面白い。
賓頭盧の撫であとの艶黄檗樹に実 幸喜正吉
(評)賓頭盧(ビンズル)は、沖縄ではビジュルとも云い、仏様の弟子の一人。ヤマトゥの寺等ではこの仏像を撫でた掌を病気の所にあて早く治るように祈るので撫で仏ともいう。撫でた所が光って艶がある。寺の庭には黄彙(きはだ)の木の実が成っている。
口笛に吹かれ秋刀魚の焼けにけり 垣花和
(評)戦前の沖縄では、干しイワシが多かったようだが、戦後は秋刀魚(さんま)がとってかわった。ロ笛を吹きつつ秋刀魚を焼く。これを「口笛に吹かれて」と、言葉の綾をうまく生かし、時間の経過をそれとなく述べた。
雑草の昨日と変る秋の色 眞栄城佐月
(評)路傍の雑草に秋らしい気配と時の移りを感ずるというのだ。沖縄では草紅葉はほとんど無いという。秋の色を秋色(しゅうこう)とも言い、この句は「昨日」で時の移りをとらえた感覚的な「心象」の句ということになる。
※選者吟
日履ひ巻く鉢々の葉の生きいきと
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大分類 | テキスト |
資料コード | 008450 |
内容コード | G000000704-0012 |
資料群 | 旧佐敷町(佐敷村)広報 |
資料グループ | 広報さしき 第244号(1997年11月) |
ページ | 10 |
年代区分 | 1990年代 |
キーワード | 広報 |
場所 | 佐敷 |
発行年月日 | 1997/11/10 |
公開日 | 2023/12/13 |