文化協会俳句教室九月例会より。山城青尚選
行き交ひの蟻のあいさつ雨上がる 前城守人
(評)雨が上がると蟻の動きが活発になる。普通われわれの目にふれるのは働き蟻で、巣を造り、餌を運び、卵を世話し、幼虫を哺育・外敵を防ぐなど、忙しそうに行き交っている。その際、互いに触覚をふれ合って何か通信しているようである。それが挨拶をしているようにも見える。社会生活を営む蟻の生態をよく観察した佳句。
苦菜足す鳥賊墨汁の薬鍋 崎間恒夫
(評)病気にかかった時とか、体調不良の時に、イカ墨汁に苦菜(ホソバワダン) 昆布などを煮付けたものを食すると、極めてよく効く。沖縄古来の薬膳療法を実践した涎の出そうな佳句。
似顔絵のモデルとなりし敬老日 渡眞利春佳
(評)9月15日は敬老の日である。子や孫、親戚、友人たちから祝福を受けながら雛壇に鎮座していると、似顔絵師の目にとまった。老いてますます意気盛んな美人モデルの心情がよく描かれている。
蜩の声途切れがち聖母逝く 安里洋子
(評)スラムの聖女といわれたマザー・テレサさんが逝かれた。修道女として困窮者や不具者の救済に生涯を捧げ、ノーベル平和賞を受け、インド国葬で永遠の眠りにつかれた。この偉大な母を世界中の人々が嘆き悲しんだ。蜩の声も途切れがちに哀悼の意を表している。
偽装貝中眼鏡に見破らる 安谷屋竹美
(評)南国の海には、敵の目をくらますために偽装した貝たちがいて、珊瑚なのか、貝であるのか、なかなか見分けがつかない。ところが水中眼鏡で海中を覗いてみると、偽装していることが分かる。自然に身についた貝の知恵か、造化の神のいたずらか、その神秘さに驚嘆した佳句。
※選者詠
敗戦怠カンカラ三線かき鳴らせ
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大分類 | テキスト |
資料コード | 008450 |
内容コード | G000000703-0011 |
資料群 | 旧佐敷町(佐敷村)広報 |
資料グループ | 広報さしき 第243号(1997年10月) |
ページ | 10 |
年代区分 | 1990年代 |
キーワード | 広報 |
場所 | 佐敷 |
発行年月日 | 1997/10/10 |
公開日 | 2023/12/14 |