文化協会俳句教室9月例会より。瀬底月城選
阿旦の実熟れて黄泉路を明るうす 与那嶺末子
(評)霊送りが終わると精霊たちは来年のお盆を楽しみに霊界に御還りになる。お盆の供物になつた仲間の、黄色い阿旦の実が後生道を明るくして祖霊を導いているよ。
伸び過ぎて宙に浮きたり貝割菜 崎間恒夫
(評)貝割菜に罪を着せる人間達の浅ましさ、ヒサダカーして転び、怪我をする人生をも風刺しているような句。身の程に応じて生きたいもの。O-157にもてあそばれる人間達のあわれさよ。
ぬーばれー童子主役の獅子囃 新垣春子
(評)「ぬーばれー」は、精霊送りの翌日行う鎮魂の行事である。津波古では旗頭を先頭に、土帝君の庭に集まり棒術や獅子舞い等を行う。踊り獅子を操る童子の見事な動作は観衆の目を楽しませ拍手が湧き上がる。
一票に託す未来や鰯雲 渡真利春佳
(評)わが国最初の県民投票への祈る様な気持を、むづかしい言葉でなく、平易な言葉で表現した佳句。句の裏に、基地の無い平和な沖縄を子孫に残したい意がこもる。鰯雲は秋の天文季語で高い祈りの象徴と言える。
亡き母の形見分けたり虫の声 真栄城佐月
(評)亡き母の遺した物を形見分けしていると、虫の声が、母の伝言のように聞こえる。
人々は亡き母の思い出を語り合っている。
※選者句
掌一杯桑の身を摘む稚心かな