もう7・8年前から、我が家の3階から上階へ続く階段の、天井近くの壁に燕が巣を作っている。
6月のある朝、その巣から2羽のひなが落っこちて息もたえだえの様子で助けを求めていた。親鳥は、ひなの回りをぐるぐると飛んでいるだけでどうする術もなく、ただ心配そうにピーピー鳴き声をあげるだけ。時々、猫もやってくるので放っておくとそのうち餌食になるかもしれないし、そうじゃなくとも弱々しいひなはそのまま死んでしまいそう…。子ども達が「助けてあげたい」と言い出した。しかし、天井は高くて巣に戻せそうになく、助けてくれそうな“誰か”を求め、私達親子は電話に飛びついた。
あいにく、心当たりの方が2人とも留守。3度目…。馬小のS先生が電話に出てくれた。先生は、なるべく素手で触らないようにして学校まで持ってくるように子どもに言い、子ども達は 「学校で育ててくれるんだね」と嬉しそうにひなを抱え出ていった。
その後、学校の集会でS先生に会った私が 「ひな、どうなりましたか?」 と尋ねると先生は 「巣にもどしましたよ。あんなに小さいと人間では育てられないから」 と言い“いい事をした”後の子どもの嬉しそうな様子をみて自分も感激したと喜んでいた。
それから1週間後。親鳥のあまりにうるさい鳴き声に出てみると、またまたひなが1羽落ちていた。見ると、たった1週間のうちにこんなに成長するものかとびっくりする程、つやつやした羽毛に包まれ立派になっている。「あんた、またおちたのー」 と言いつつ保護し、子どもの「S先生がね、何度落ちても戻してあげようなって言ってたよ」 との話に、今度もすっかり甘える事となり、S先生は放課後、またまた3階まで大きな梯子を持って上がり、ひなをきちんと戻してくれたそうだ。
本日、そのひなが巣の中から顔を出し、元気そうにしている様子をカメラで撮影。「もしかしたら、あんた死んでいたかもしれないよ。S先生に感謝しなよ」 と言いながら…。巣の淵に立って羽を少しだけ広げる様子に巣立ちの日の近い事を感じる。
子どもの通う学校にこんなにやさしくて、勇気のある先生がいる事を心から感謝せずにはいられない。
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大分類 | テキスト |
資料コード | 008449 |
内容コード | G000000685-0012 |
資料群 | 旧佐敷町(佐敷村)広報 |
資料グループ | 広報さしき 第229号(1996年8月) |
ページ | 10 |
年代区分 | 1990年代 |
キーワード | 広報 |
場所 | 佐敷 |
発行年月日 | 1996/08/10 |
公開日 | 2023/12/12 |