なんじょうデジタルアーカイブ Nanjo Digital Archives

俳壇さしき

文化協会俳句教室二月例会より。瀬底月城選

立春や妊婦の見入る黄紅型  伊波えつ
(評)春は万物に喜びが満つ季節。母親が胎児への温かい思い出、沖縄独特の紅型の黄色を、じっと見つめている。黄色は尊い色で、児の未来への夢と希望、安産を祈りつつ、胎教に思いを深める。

梅咲くや色も香もある京の菓子  崎間恒夫
(評)京都の和菓子は店々によって、それぞれの形、色、香りにも独特なものがあり、味わい深い。梅の咲く頃の京都展での感懐を句にしたものであろう。
この句のように、さらりと詠むのも趣がある。

山羊汁の大鍋たぎる甘蔗仕舞ひ  渡真利春佳
(評)冬から春の甘薦刈は、一家親族の総出で忙しい。手伝う子供たちも働いて汗を流す「労働」の経験から、イジメ心も浄化される。老若男女で甘薦刈仕舞いの労を癒やし温める山羊汁のおいしい事よ。

吊籠の番ひ囀ずる窓明り  照喜名喜美江
(評)窓辺に吊るした小籠で、雌雄の小鳥が朝日を受けて囀っている。小鳥の餌を更える楽しみ、なついてくると指から餌をついばむ。小動物を愛する心に俳句があった。「囀ずる」は春の季語。

甘蔗時雨)農道よぎる米軍機  真栄城佐月
(評)甘蔗刈り時の「にわか雨」を甘蔗時雨という。敗戦後五十年、米軍機が甘蔗刈り中の農道の上を横切る。爆音に不安と怒りがこみ上げる。基幹産業の甘蔗作りをしつつ、平和と基地撤去の世論を思う。

※選者句
火炎葛(カエンカズラ)旧家は垣の奥の奥

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大分類 テキスト
資料コード 008448
内容コード G000000675-0007
資料群 旧佐敷町(佐敷村)広報
資料グループ 広報さしき 第224号(1996年3月)
ページ 5
年代区分 1990年代
キーワード 広報
場所 佐敷
発行年月日 1996/03/10
公開日 2023/12/12