文化協会俳句教室8月例会より。 山城 青尚選
三味の音や半開きなる下り花 新垣 春子
(評) ほのかな甘い香りを出す下り花は、タ方から開花し夜中に満開、翌朝になると散り、次の夜に下の蕾に順をゆずる。
三線がつまびかれると、その琴線にふれ、蕾が放線状に半開きしたようだ。
手枕の孫の鼾や熱帯夜 真栄城佐月
(評) 我慢のできない蒸し暑い夜が続いている。いらいらしていた孫を手枕で
落ちつかせると、次第に寝入ってイビキをかいた。
目に入れても痛くない孫の子守は、その母親よりも婆さんの方が一枚上で
ある。
終戦の木陰で学ぶアメリ力語 照喜名喜美
(評) 戦争で多大な人命とすべての財産を失った県民のその後の生活は、
筆舌に尽くせないぐらい惨めであった。
学校も教科書もない時代に唯一の楽しみは、将来役に立つであろう
アメリカ語を学んだことだった。
大シヌグ娘七犬も祓わるる 安谷屋竹美
(評) 稲などの収穫がすみ、次の豊作を予祝する 「神遊びの舞」 の行事である。
子供から大人までの男達が山の上で、身に蔓草や木の葉をまとい、待ちうける女
たちや老人たちを樹液で祓い淨める。
その中に連れそった娘と犬もいて御満悦の体だった。
※ 国頭村安田のシヌグ祭では、大シヌグとシヌグ小がおこなわれる。
東雲のしじまを破る油蝉 崎間 恒夫
(評) 明け方の静まりかえった頃に突如、ナービカチカチーがけたたましく鳴いた。
天も地もまさに、活動的な明るい夏の季節を迎えたわけだ。
※ 選者句
地球儀にまた肝斑(シミ)ふやす原爆忌