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音楽へのいざない⑰不思議の国の英国人 ロビン・トンプソン シュガーホール芸術監督 中村透

英国といえば、かつて文豪夏目漱石の留学したところ。名探偵ホームズ発祥の地、そして吾が尊敬する推理作家で莫大な遺産をのこしたアガサ・クリスティー。食の文化が極めて乏しいと聞かされるがしかし、議会制民主主義をこの地上で最も早く確立し、それなのに未だに国家憲法を持たないですますことができていて、なおかつ日本と同じように皇室をもち敬っている処。敬っている割にはチャールズ皇太子とダイアナ妃のプライベート事をゴシップすれすれで撒き散らすことが、たとえば我が国のように決して危険な分子の反応を生まない大らかな国。
とばかり、ことかように私のもつ英国事情への知識は、受け売りのパッチ・ワーク、雑然としていてひとつも焦点が定まらないのです。にもかかわらず、歴史の皮肉か、あるいは出会いの妙か、ここ沖縄で知遇を得て、爾来友人としてつきあってきた英国人がおります。寅年生まれのロビン・トンプソン氏が件 (くだん) の人物。もともとはファゴットという、洋楽 (あちら) の世界では由緒ある血統の楽器奏者なのですが、沖縄在十数年の間に沖縄古典の三線・箏曲・胡弓の三部門で沖縄タイムスの最高賞をかっさらうという暴挙ならぬ快挙をやってのけたのであります。そのロビン君、いよいよ本国へ帰国のこととなりました。寂しいかぎりです。東西共鳴 ―― 伝統と創作と題しての 「さよならコンサート」 が9月23日にシュガーホールで行なわれます。どうぞ、嘉例吉の旅発ちを一緒に祝ってやって下さい。
                                 (琉球大学教授)

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大分類 テキスト
資料コード 008448
内容コード G000000669-0010
資料群 旧佐敷町(佐敷村)広報
資料グループ 広報さしき 第218号(1995年9月)
ページ 8
年代区分 1990年代
キーワード 広報
場所 佐敷
発行年月日 1995/09/10
公開日 2023/12/07