文化協会俳句教室七月例会より。 山城 青尚 選
他魯毎(タルミー)の墨かさを訪ふ岩漬水 前城 守人
(評) 尚巴志の策謀にかかったタルミーは、金の屏風と嘉手志川を換えた。
そのために人民や按司たちの怨みを買い、城の滅亡につながった南山王である。
その愚かな行為をあざ笑うかのように嘉手志川の岩清水は、今もこんこんと湧き出ている。
作者も「さもありなん」と感慨にふけたであろう。
ダチュラの花崩れしままの野面積(ノヅラヅミ) 渡頁利春佳
(評) 朝鮮朝顔または曼陀羅華と呼ばれるダチュラの花が、白い漏斗状の大きな花を
下向きに咲かせている。
崩れた野面積みの石垣の囲いの中で高い香りを発散させ、自らの存在を誇示している。
扇風機どの部屋からも笑い声 安里 洋子
(評) 扇風機が唸っているが、どの部屋からも笑い声が絶えない。それぞれの家族の
団らんが暑さを吹っとばしている。
失われつつある平和の心の原点をみる思いのする素晴らしい笑い声だ。
街頭に人影のなき夏ぐり雨 幸喜 正吉
(評) 暑さを吹っとばすような夏ぐり雨に見舞われた。街頭には雨宿りのために人影は
なく、空車だけが目立った。
にわか雨に戸惑う人々の姿が見えるようだ。
夕端居昔ばなしの弾みをり 与那嶺末子
(評) 日中の仕事を終えタ刻を迎えた。室内の暑さをさけるため縁側にくつろいだ。
家族や友人達が集まると、自然に昔話がはずんだ。
そこには涼を求める人々の明るい姿があった。
※選者旬
泥んこの球児に蝉の応援歌