俳句教室6月例会より。 山城 青尚 選
ファッションに熟女群がり夏来る 前城 佐月
(評) 流行の衣裳を着て観客に見せる催しが開かれた。人生に円熟した女性たちが
群がって、息を殺して見つめている。
満目さみどりに包まれ、天も地もまさに生き生きとした若夏を迎えての
ファッションショウが賑わっている情景をよくえがいている。
初鰹トーンの上がる糶の声 富永 信
(評) 黒潮に乗り若葉の頃に回遊し最初にとれた鰹のせり市が始まった。
多数の仲買人を前に、競売にかけるかけ声が朝もやをついて威勢よく響き渡った。活気に満ちたせり市の情景がよく描かれている。
営巣の蜂を残せる利鎌かな 幸喜 正吉
(評) 蜂が巣を造っている。うっかりすると刺されて痛い目に会うものだが、殺生を
嫌った作者は蜂を殺さずにそっとしておいた。
草刈鎌を収めてその場を立ち去るのだが、生き物をあわれむ心がよく表れている。
乳母車来て立ち止まる鳳凰花 垣花 和
(評) 鳳凰木が大きな傘を広げて花を炎やしている。あまりにも見事な咲きぶりに、
乳母車をとめて見とれている。
すやすやと眠っている赤ん坊の顔までが輝いて見える。熱帯花木の美しさをよく描いている。
芒種南風兄へ土産の島の酒 城間 睦人
(評) 6月上旬頃の雨の多い季節に吹く南風である。戦前は大豆を収穫したり、甘藷を
植えたり、虫払いをするなど、多忙な時期であった。
日頃は身を粉にして家族の面倒をみてくれた兄貴にと、島酒の士産を持参した。
久しぶりに兄弟水入らずの話が弾んだ。
※ 選者旬
戦跡に火文字つづる姫蛍