文化協会俳句教室4月例会は、18人が参加、賑わいをみせた。その中から山城青尚先生に五句を選んでもらった。
屋根獅子の目線のあたり春日傘 前城 守人
(評) 赤瓦の屋根に甍獅子が春光を浴びて鎮座している。その視線が春日傘をさして
通っている婦人をとらえている。色の淡い春らしい柄の日傘とそれを見下ろす
シーサーに、うっとうしい冬を抜け出す華やかさ、初夏を迎える明るさが
感じられる。
浜下りや浜は米軍上陸地 垣花 和
(評) 旧暦3月3日に、各家庭ではご馳走を持って浜辺に下り、手足を潮水に浸して身の不浄を清めてから潮干狩を楽しむ。考えてみるとこの浜は55年前の沖縄戦における米軍上陸地だった。平和になったいま、当時の情景が鮮明に浮かんでくるのだった。
うリずんの真竹すくすく天を指す 崎間 恒夫
(評) うりずんの候になると、蓬菜竹が地中の筍を育てるため葉が黄ばんでくるが温暖な沖縄では天を指して伸びている。入学の季節を迎えたいま、新入生たちが竹のようにすくすくと伸びてくれるように、という願望がこめられている。
浜沈丁佐敷音頭の手の揃ふ 渡真利春佳
(評) 佐敷町冨祖崎の海岸にある浜沈丁の群落は、県の天然記念物で、淡紅色の五弁の
花を咲かす。
祝いの席で佐敷音頭の舞が披露されたが、浜沈丁ゆかりの地に息の合ったところを見せている。
八重千瀬に浄土を見たり潮まねき 大田 幸子
(評) 八重干瀬は宮古池間島北方にある大規模の礁原で、魚類が豊富である。
旧暦3月3日の浜下りの頃になると、干潮の時この磯 (イクリ) が浮上したように見える。
干潟の泥に穴を掘って棲む小型のカニ潮まねきが、盛んに赤渇色の爪を上下に
動かして、恋の相手にエールを送っている。ここは海の生き物たちの棲みよい
平和な島なのである。
※選者旬
御三味に海のもの足す清明祭
(評) 御三味とは神仏に供えるためにつくる重箱料理のことで、一つには餅をつめ、
一つには肉類・豆腐・大根等の煮しめをつめる。