なんじょうデジタルアーカイブ Nanjo Digital Archives

俳壇さしき

佐敷町文化協会主催の第3回古典芸能鑑賞会が1月29日、シュガーホールで行なわれた。俳句教室では当日、同ホールロビーで会員の俳句展を開催して好評を博した。今後も折にふれて発表の機会をふやしたい。
俳句教室への問い合わせは文化センター内 津波悟(電話947-1619まで)

鋤焼鍋うからやからの箸動く        渡真利春佳
(評)鋤焼きといえば、豆腐、葱、白菜、春菊、糸こんにゃく等をあしらった牛肉中心の鍋料理で、よだれを垂らしながら身を温める最高のものである。一族の者が鍋料理をつつきながら、なごやかに話し合っている様をよく描いている。

豚骨のぐつぐつ煮立つ旧正月        新垣春子
(評)陰暦の正月、すなわちウチナー正月といえば、豚肉料理が代名詞となっている。豚公には悪いが、ぐつぐつと煮え立つ豚肉の美味しさは、年を取るのも忘れさせる。この句には、古き良き時代への懐かしい響きがこめられている。

日脚伸ぶラジオ流して庭仕事         前城守人
(評)よく見かける風景で、ラジオを流しながら庭の手入れをしている。面白い番組や悲しい物語りなどに一喜一憂しながら、頭の体操に夢中になっていると、時がたつのも忘れさせる。ふと日脚が長くなったな、と感じるのだが、もうそこには春が近づいているという気持ちがよくこめられている。

その一瞬みな神となる初御願         安谷屋竹美
(評)年の始めに集落や家庭の繁栄と豊作を祈る行事である。昔はヌールや神人を先頭に御嶽、産井戸(ウブガー)、土帝君などを拝んだ。各家庭では主婦が屋敷の四隅、火ヌ神等を拝む。神と対等に向き合ったその一瞬、森羅万象(この世に存在する一切のもの)が皆、神と一体になった、という切れ味のよい表現で、句は成功している。

寒菊の散り残りたる厨かな            儀間 一恵
(評)冬になって咲く菊で、日当りの良い所に育つ。周囲がかれがれとした中で、どこか一風、趣をそなえていて可愛らしい寒菊が台所に飾ってあるが、花ははかなくても散ってしまった。台所の中に一抹の淋しさがただよっている。

以上12月の俳句教室より         山城 青尚 選
※選者句
甘蔗刈のうしろにいつも亡父の顔

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大分類 テキスト
資料コード 008447
内容コード G000000659-0016
資料群 旧佐敷町(佐敷村)広報
資料グループ 広報さしき 第212号(1995年3月)
ページ 7
年代区分 1990年代
キーワード 広報
場所 佐敷
発行年月日 1995/03/10
公開日 2023/12/06