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音楽へのいざない⑪ 音楽家の生態 声楽家&ピアニスト篇 シュガーホール芸術監督 中村透

仕事がら、さまざまなジャンルの演奏家と出会いますが、初対面でもすぐそれと判るのが声楽家。幾分ドハデで、やたらと大きな声で喋り、そんなに可笑しくもないのにすぐ笑い、好き嫌いが激しくて楽天家で。とかくと欠点だらけのようですが、一言でいえば、自分にまっ正直な人が多い。歌というのは、身体ごとの表現です。なんの道具ももたずに客席に全身を露し、しかも大ロをあける職種ですから、これは相当図太い神経か、かなり自己顕示欲があるのかどちらか。本番のあと、ちょっと辛ロの批評でもしようものなら、一生の敵(かたき)のように思われますから、そういうことは数週間を経てからにします。
神経質なのがピア二スト。かなりのキャリアを積んだ人でも、とくに本番前はピリピリしていて近づくのは危険です。88もある鍵盤を、二本の腕と、手首の筋肉を分離して操り、しかも十本の指で編目のような複雑な音符をマチガエズに操作するのですから、神経質になるのも当然でしょうね。しかも、声楽家とちがってステージ上では横顔でしか客席と対面できない。
普段でも、サイドから注がれる視線というのは、何かしら不安で、不気味なものですよね。
因(ちなみ)に、客席の態度にもっともうるさいのがピアニストです。
ピアノ・コンサートは息をひそめてききましよう。(琉球大学教授)

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大分類 テキスト
資料コード 008447
内容コード G000000659-0015
資料群 旧佐敷町(佐敷村)広報
資料グループ 広報さしき 第212号(1995年3月)
ページ 6
年代区分 1990年代
キーワード 広報
場所 佐敷
発行年月日 1995/03/10
公開日 2023/12/06