なんじょうデジタルアーカイブ Nanjo Digital Archives

俳壇さしき

文化協会俳句教室では11月23日、吟行句会を行った。午前11時、桃原農園に入る。
ここ桃原農園は熱帯果樹が数多く植えられ、広く親しまれていたが昔の松山御殿に名称を戻し、観光名所になっている。
屋敷内には幸龍樋、佐司笠樋川等、王朝時代の名残りを数多く残している。
午後は御茶屋御殿跡を廻り、4時から、文化センターで吟行句を中心に句会を開催。

冬の水はじく三爪の幸龍樋  永田米城
(評)「龍は春分にして天に昇り、秋分にして淵に潜む」の故事のとおり、中国で神聖視された巨大な想像上の動物で、王様の権威の象徴とされている。そこで中国の皇帝の龍は5つ爪、琉球王の龍は4つ爪と決められていた。
按司王子の位の象徴である3つ爪の龍が、幸龍樋(桃原農園)から勢いよくはじき出される冬の水を伝わって、霊気を漂わしながら池の中に潜っていく雄大な様を詠んでいる。

栗拾ひ競ふも国際地球年  山城百合
(評)旅先で異国の人々と共に栗拾いをした。そういえば、民主主義で築かれた家庭が社会の核となって、世界の人々が仲良く暮らそうということで、今年は大きなイベントが催された。その趣旨にかなった素晴らしい栗拾いであった。

石落の花佐司笠樋川の水甘し  与那嶺末子
(評)佐司笠按司が築いたといわれる樋川は、1年中おいしい水が豊かに流れていて、往時の名残りをとどめている。近くの土堤には、黄色いツワプキの花が辺りを照らしていて、情緒をただよわせていた。

潮騒や極楽鳥花天に向き  安谷屋竹美
(評)潮がさしてくる時の波音が聞こえる。死者が出たのであろう。極楽鳥花が心にくいほど、供花のように天を仰いで炎え盛っていた。

トボロチの花いっぱいに古都巡り  垣花和
(評)俳句吟行で首里巡りをした。トボロチ(南洋桜)の花が、澄みきった秋空いっぱいに咲き乱れていた。心まで広々となり、古都の空気を満喫した。

以上11月の俳句教室より          山城 青尚 選

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大分類 テキスト
資料コード 008447
内容コード G000000657-0007
資料群 旧佐敷町(佐敷村)広報
資料グループ 広報さしき 第210号(1995年1月)
ページ 5
年代区分 1990年代
キーワード 広報
場所 佐敷
発行年月日 1995/01/10
公開日 2023/12/06