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少年の主張 最優秀賞作品 「ぼくがぼくであること」佐敷中学校3年 富永尚次

「ぼくがぼくである」なんて当たり前だ、だれもがそう思っているでしょう。僕もその一人でした。だけど、よく考えてみると、なんかおかしいと思います。なぜなら、自分の考えを言わないで、他人の言う事を「はい、はい、そうです」なんて言っている人は、大人から見ると、素直でいい子だと思われるでしょうが、しかし、自分の意見がなく、ただのあやつり人形になっているのではないか、ふと思ったからです。そうです、いわゆる自分の本音がだせない、ただのロボットになってしまっているのです。
僕の周囲、いや世間には、このように、人に左右されてあやつり人形になっている人があまりにも多いと思います。難しい事はよく分かりませんが、テレビを見ていると、今まで敵であったはずの自民党と社会党がくっついてしまうなど、いったい日本のリーダーはどうなっているのか?といいたくなります。このような事では、これからやってくる二十一世紀、いや、世界をリードしていく日本人としての役目を、果たせないのではないでしょうか。
このような事が起こるのは、自分の考えがしっかりせず、言おうとしている事に自信がないからだと思います。あやつり人形にならないで、ぼくがぼくである為には、自分の意見をはっきり持つことです。その為には、幅広い知識を身につけ、失敗を恐れず、多くの事を経験する事だと思います。それが分かっていながら、今までの僕はそれが出来ない毎日をただ、もんもんと過ごしていました。
そんなある日、兄が一冊の本を買って来ました。手に取って見ると、ものすごい絵が書かれた表紙です。
表紙の真ん中に人間らしい物が描かれていて、両手を広げて万歳をしています。まわりは赤や緑、あい色で塗りつぶされています。こんな変な絵を書いても“売れるのかなあ”と思うぐらい、めちゃくちゃな絵でした。でもその表紙のおかげで僕は、字の細かい三百ページ以上の本に興味を持ったのです。
主人公の「平田秀一」は僕にとてもよく似ています。年も近いし、年がら年中怒られている所なんか、もう僕にそっくりでした。でも、一つだけ似ていない所がありました。それは、自分の考えを言えない僕と違って「平田秀一」は、成長していくにつれ、自分の考えをちゃんと言える様になっていったのです。最初の頃は、教育ママのあやつり人形だったのですが、自分の考えが言える様になったのです。
そういう経過の中で僕は、僕なりの考えをつかむ事ができました。僕は、秀一みたいに周囲の大人に、父や母、兄弟、姉妹におしつぶされないで“僕は僕でありたい”と思ったのです。
僕には夢があります。とっても大きい夢でかなえられるか分かりませんが、それなりの努力はしています。
だけど、今のままでは僕は、勉強、勉強、塾、塾と周囲に、いや周囲の大人におしつぶされて、夢をかなえる事ができないのではないか、と心配になってきました。きっとこの作者は、自分の意見をしっかり持って、教育ママに、世の大人に、意見の言える人になれ、と言いたいのだとおもいます。
自分の意見がはっきり言える。という事は、とてもすばらしい事だとおもいます。意見を持つという事は、教育ママのいう塾通いの、学校の点数をあげるばかりでは、できないとおもうからです。それは、友達とのつきあい、部活動、学校行事、地域行事、それに知識の宝庫といわれる読書と、多くの体験や経験を積み重ねていくことによって、ますます磨かれ人の前で話しても恥ずかしくないしっかりしたものに出来あがってくるのです。そして、みんなにも理解してもらえる様になるのです。「秀一」も母親に自分の考えをぶちまけるまでは、それはそれは、悩み、苦しみ、家出をし、死にたいとまでおもいました。でも秀一は負けませんでした。友達とのふれあいから自分自身を見つけ出し、母親に自分の考えが分かってもらえてうれしかったと思います。
“ぼくがぼくであること”という本に出会って、僕は幸せです。この本が、僕のこれからの行動に、人生に、影響を与えてくれるものと信じています。
僕も「平田秀一」を見習って、他人に左右されない、自分の意見がはっきり言える、どんな事にも動じない自分自身を創っていきたいと思います。そして自分の心の中にある、とっても大きな夢に向かってつき進んでいきたいと思っています。
一冊の本との出会いで、僕自身がこんなにも変わってきました。今、僕の胸に読書の大切さが、しみじみと伝わってきます。
“古人の教えひもときて、朝な夕なに吟ずれば、我が行く道を照らすなり”

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大分類 テキスト
資料コード 008447
内容コード G000000655-0005
資料群 旧佐敷町(佐敷村)広報
資料グループ 広報さしき 第208号(1994年11月)
ページ 4
年代区分 1990年代
キーワード 広報
場所 佐敷
発行年月日 1994/11/10
公開日 2023/12/06