12年間続いた子供会が、子供達の成長に伴い会員数の減少で会活動が難しくなり、去年の夏、解散することになりました。私達は「子供会の解散にもかかわらず、お互いの交流、地域活動は続けて行こう」と話し合い、解散記念ボーリング大会を子供会員、子供会OB、親達が参加して盛大に行いました。
その時、高校を卒業し本土で就職した子供会OBのA君から、金一封の寄付がありました。
A君は、両親から子供会の解散のことを聞き、ひとみ通り会のみなさんにお世話になった感謝の気持ちと、後輩達に激励の意味を込めてお金を託したとのことです。しかも、それはA君の初ボーナスだったそうです。
A君は赤ちゃんの頃から体が弱く性格もおとなしい子で小学校低学年まで、学校では気の合った特定の子としか話さず、給食を一度も食べたことがありませんでした。
家庭では何でも食べていたそうです。みんなに「給食を食べない子」と言われれば言われるほど、ますます食べることが出来なかったそうです。
A君の姉さん兄さんは、勉強ができ活発な子でした。両親も大変教育熱心で、A君のことで心を悩ましていました。
その頃、隣近所では、他市町村から嫁に来る人が多く、お互いに顔は知っていても、道で会って会釈を交わす程度で、親しく付き合うことはありませんでした。
さいわい主人達の中には、PTAの支部長や、学校の役員をした人が数名おりました。PTA活動をしていく中で、地域の教育力が低下していることを痛感し、そこで、これらの方々を中心に「隣組を結成することでお互いをよく知り、親睦をはかり、地域をもっとよくしていけるのではないか」と話し合われ「ひとみ通り会」を結成しました。
私達は、まずお互いをよく知ることが最も大事だということで、月一回、各家庭回りで集会をもち、子育て等について話し合いをしました。
その話し合いの中で、子供達を健全に育成するために子供会を結成し、子供会活動を行う必要があるということになりました。
子供会の活動としては、親子の朝のラジオ体操、誕生会、新聞作り、古紙回収、カレーパーティー等を行いました。
誕生会では、子供達全員に司会や挨拶等、係の経験を通して、お父さん、お母さん達の前でお話が出来るようにしました。
新聞づくりでは、子供会長を中心に、一年生から六年生全員で原稿を集め、イラストを書いて仕上げました。
子供会のいろいろな活動をする時は全員参加で、できるだけ多くの子供達に役割を分担し、協力していくことを心がけさせました。
A君も会員ですので、司会や挨拶の役割を受け持たせたり、みんなと協力して会活動させたりしました。
このようにして、A君に対して細かに気くばりをすることもありました。また学校への登下校も「ひとみ通り会」の子供達が誘い合ってするようになり、A君もだんだん心を開いてくれるようになりました。そして高学年になると友達も増え、給食も食べ、低学年ではみられなかった明るい子になり、何事にも積極的にとりくむ「ひとみ通り会」の子供会長として頑張ることができました。
親の会では、子供達のために写生会をしたり、映写会、キャンプ、グランドゴルフ大会等をやりました。
そしてお互いの親睦と親子のコミュニケーションをはかることができました。また、地域活動では、古タイヤを利用し花鉢を作り、「ひとみ通り」の両側に置き、会員みんなで草花を植え、毎年きれいな花を咲かせ、心を和ませる環境づくりもしました。
観月会では、毎年、学事奨励会を行っています。
小学校、中学校、高校へ入学した子供達には記念品をあげ、他の子供達には進級賞としてノートをあげてみんなで励まし合っています。
また、その日は、おじいさん、おばあさんも招待し、いつもお世話になっていることへの感謝の気持ちをこめて、子供会から手作りのワッペンや花等のプレゼントをします。
それは、年寄りをいたわる心を育てるために計画されたものです。
このようにして「ひとみ通り会」は、いろいろな活動を続けてきました。
会員の中には、子育てが終った方々が半数程いらっしゃいますが「地域の子供達をみんなで育てていくのだ」とキャンプ等のいろいろな計画に、今なお積極的に協力して下さり、とても心強く思っています。
しかし年々子供達が成長するにつれて子供会員が少なくなり、とうとう去年「ひとみ通り会」の子供会は、発展的に解消しました。そして字全体の子供会が発足され、現在も活動は続けています。
ひとみ通り会の親の会では、これまでと変わらずお互いの親睦や教養を高めるだけでなく、子育てをするためによりよい環境づくりに頑張っています。
最近、いじめや集団暴行、金銭せびり等が社会問題になっていますが、その原因については、家庭、学校、地域社会等の環境的なものが複雑に絡み合っていると言われています。
人は誰でも家庭や学校、地域社会でいろいろなことを体験し、そこから多くのことを学びながら成長していきます。
かつては、普段の生活体験を通して心身を鍛え、他人への思いやりや協力する態度を身につけてきました。
しかし近頃は、家庭、学校、地域社会の中で人間同士の触れ合いが薄らいでいるように思われます。人間形成の場として身近な地域社会を活性化するためには「地域住民一人一人が同じ目標」に向かって、自分達で地域作りをするのだ」という心構えで、地域活動に積極的に参加することが大切ではないでしょうか。
さいわい、私達の地域では隣組を結成し、いろいろな活動を通してコミュニケーションをはかり人間関係をよくし、子供達を健全に育てようとする環境づくりができました。
A君からお金を託されたことを聞き、A君が立派に成長したことを、みんなで喜び合いました。
これは勿論、両親の教育のたまものですが、私達も地域活動をしてよかったと思いました。
「環境が人を作る」とよく言われています。その環境を作るのもその地域に住んでいる私達なのです。
「ひとみ通り会」は、ほんの小さな輪です。このような小さな輪でも、いくつもできればやがて大きな輪となっていくのです。子供達を健全に育てるためには、みんなでよりよい地域環境づくりをすることです。
子供達がすこやかに育ってくれることは、子供を生み育てた母親や父親の願いであり、社会全体のもっとも大きな願いではないでしょうか。