はじめに
平成六年第108回佐敷町議会定例会にあたり、提案いたしております平成六年度当初予算をはじめ条例その他の案件のご説明に先立ち、まず、町政運営に当たっての私の所信の一端と主要施策の概要を申し述べ、議員各位ならびに町民の皆さまの今後更なるご理解とご協力を賜りたいと存じます。
私は、昨年九月、多くの町民の皆様のご支援を得て町長に就任して以来、町民本位の公正・公平で開かれた町政運営を基本に、町民の健康で文化的な生活の向上をめざして、長年教育界で培った貴重な経験を生かし、新たな決意を持って町政運営に当たってまいりました。行政経験もいまだ浅く町政全般を掌握するには至っておりませんが、過去の足跡を通して現状を正しくとらえ将来に夢の広がるまちづくりを展望したいと存じます。
21世紀に向かって高齢化、情報化、国際化などの時代潮流に対応したまちづくりが要請されております。わが国の社会、経済の変動は極めて厳しく、特に地域社会の変貌や地域住民の価値感の多様化に伴って、数々の行政課題が生じております。
これらの課題に対しては、行政自らが、従来の画一的発想から脱却し、地域社会の現在と未来を「自由と創造的な発想」によってとらえ、行政の役割を自覚しながら、連帯と協調の中で解決する方向を追求していくことが肝要かと存じます。私は、これらの課題の解決をはじめ公約の実現を図るために全力を挙げて取り組む決意であります。
さて、わが国経済は、バブル経済の崩壊、円高等の影響もあって総じて低迷状況が続いていますが、国の総合経済対策の着実な実施等、適切かつ機動的な経済運営により平成六年度中に本格的な景気回復軌道に乗るものと見込まれています。一方、県経済は、消費者物価が比較的安定する中で、需要面、生産面でも堅調に推移し、景気は徐々に持ち直していくものと思われます。雇用情勢も依然厳しい局面はあるものの、第3次産業を中心に就業者の増加が見込まれています。また、平成六年度は、第三次沖縄振興開発計画の3年目に当たるとともに、沖縄戦終了五十周年を翌年に控えた重要な年であり、本町にとっても待望の文化センターがオープンする大きな節目の年であります。
今日、地方自治を取り巻く状況は、地方分権の論議の高まりをはじめ大きく変わろうとしています。これらの動きを真摯に受けとめ、新しい佐敷町、活力に満ちたまちづくりに努めてまいります。町政の主人公は、町民一人ひとりであり、これは地方自治の大切な視点であります。町政の基本は、まず、その主人公である町民の健康で文化的な生活を確立し、保障していくことが肝要といえます。
町民に開かれた町政、町民参加の公正、公平な行政運営によって、誠意と信頼で結ばれる明るく、住みよいまちづくりに努めてまいります。
平和憲法の理念を尊重し、21世紀を拓く、きらめくわが佐敷町のあるべき姿を展望し、平和で活力に満ちた潤いのあるまちの実現に向け鋭意努力してまいる所存であります。
基本施策
社会、経済的環境の変化に伴って、地域社会は大きく変動し、そこにおいて行われる地域行政も量的、質的に変化を来たし、住民の行政に対する意識も変わりつつあります。また、各方面で「地方の時代」の到来とその理念に対する論議が高まってきているという実態もあります。行政の文化化、生涯学習、情報の公開、高齢化社会に対応すべき健康と福祉の問題など、かつて経験したことのない新たな行政需要が緊急の課題として浮上してまいりました。それだけに、現在の行政は、社会における様々な要求と変化する状況に、不断に適応する組織と行動を用意しておかなければならないと申せます。
豊かで住み良い佐敷町づくりには、地域の声、住民の声が反映されなければなりません。町民と共に歩む町政の確立は、私の大きな課題であります。明るい政治、住民に開かれた潤いのある町政の実現に向け、計画行政の確立を図るなど、町政の活性化に努めてまいります。
さて、いかなる社会資本、生活環境が形成されるかは、ひとえにそこに住む人々がいかに関わるかによって違ってまいります。言い換えれば、まちづくりの核は次代を担う人材の育成であり、そのために教育環境の整備充実はもとより、佐敷町文化センターの効果的運用、青少年の健全育成等を図ってまいります。さらに、生涯学習・生涯スポーツの拡充のための施策を講じてまいります。学校教育、社会教育、地域文化等の振興は、まちづくりの基本であり、人材育成という観点からも将来にわたって力を尽くしてまいりたいと決意しております。
やすらぎのある福祉社会の形成と健康づくりの推進は、町民だれもが願うとこるであります。子ども達の健やかな成長を図り、高齢者の生きがいと健康づくりを推進し、障害を持つ人に優しいきめ細かな福祉社会の形成に努めてまいります。
歴史・文化遺産の継承と新たな佐敷文化の創造は、まちづくりに欠かせないものといえます。先人が創り、育てあげた伝統文化を守り、地域の特性を生かした佐敷文化の創生に向け、諸施策を推進してまいりたいと考えております。
私たちにとって、快適で潤いのある生活環境づくりは将来にわたっての願いであります。町民の生活に密着した集落道路、排水路等の整備を積極的に進め、快適で潤いのある町民生活の確立に向け努力してまいります。本町は、温と緑、多くの自然に恵まれております。この自然をまちづくりの原動力とし、CGG運動の拡大、ごみの減量化・再資源化を推進し、心豊かなふるさとづくりに努めてまいります。
農水産業の振興には、生産基盤の整備と後継者の育成が何よりも大切であります。農漁業団体との連携強化のもと、構造改善事業を推進し経営規模の拡大、後継者の育成など、将来への展望の持てる農水産業の振興に取り組んでまいります。
商業の活性化は、特色ある産業の振興とその基盤整備が不可欠であります。関係団体との密な連絡を図り、特産物の創出、商工イベントヘの支援を含め、活力と魅力に満ちた商工業の振興に努めてまいります。
良好な住環境の形成は、均衡あるまちづくりを図るための基本であります。農村集落の歴史的風土の整備を図りつつ、緑豊かな特性のある地域づくりを推進してまいります。地域の歴史と風土を根ざしたまちづくりを進め、「佐敷町に住んで良かった」と自信を持って誇れるものとしてまいりたいと考えております。
町政運営の円滑化、効率化には、職員の資質の向上、組織機構の見直しは避けてとおることができない問題であります。そのために新たに、行政事務改善委員会を設置し、組織、窓口業務、事務処理の電算化等の問題解決に積極的に当たってまいります。またさらに、行政改革推進委員会を再編し、縦割り行政の弊害是正、補助金の適正化等の検討を進め、地方分権の進行を見極めた町政の運営を展開してまいります。
平和と暮らしを守ることは、今を生きる私たちのみならず後に続く世代のために主体的、自主的に取り組まなければならない命題であります。
平和憲法を尊重し、過去の悲惨な戦争体験を風化させることなく、平和の尊さを行政に反映しつつ、戦後処理の諸問題の解決に向け積極的な取り組みを進めてまいります。
本町は現在、文化センターの運営、マリンタウンプロジェクト計画をはじめ、ヘルシーリゾート構想、全町植物園化構想など主要プロジェクトを強力に推進し、その実現に向け力を尽くし、新たな時代を切り開いてまいりたいと考えております。
ここに改めて、私の町政運営に当たっての3つの基本施政を表明させていただきます。
一、自然を大切にし、教育、文化の向上を図り、人間的なふれ合いのある潤いに満ちた
まちづくりを推進します。
一、産業を振興し、住みよい生活環境の整備を図り、町民に夢と希望を与える明るい
まちづくりをめざします。
一、福祉と健康を大事にし、思いやりと安らぎのある平和なまちづくりを進めます。
以上の三点を基本にすえ、諸施策、諸事業を推進、展開してまいります。
1、平和で住みよいまちづくり
本町は豊かな自然に恵まれております。この利点を生かし、花とみどりのまちづくりフォーラムの開催など、全町植物園化構想の具体化を図るとともに、CGG運動を推進し、町民の心やすまる快適なまちづくりを進めてまいります。また、県の提唱する沖縄戦終了五十周年事業(仮称)と連動する形で準備を進め、平和の尊さ、緑の大切さを訴えてまいります。
創意に満ちた人材の育成は、本町のまちづくりにとって欠かせないものであります。本町は教育を大事にし、多くの有能な人材を輩出してまいりました。このような伝統をふまえ、豊かな人間性を持った人材の育成に向け、教育環境の整備をはじめとし、学校教育、社会教育の更なる充実を図ってまいります。
教育の町としての伝統を持つ本町の基盤ともいえる佐敷小学校は、老朽化が進み、決して快適な教育環境下にあるとは申し上げられません。
その状況を重く受けとめ、新年度には、佐敷小学校の全面改築に向け、学校施設整備基本計画審議会を設置し、次代を担う子ども達の教育環境の整備に努めてまいります。新年度は、学力向上対策事業の最終年次にあたっており、これまでの成果をふまえ、更なる事業の推進を図ってまいります。
今年度中によりやげの根国シンポジウムが開催されますが、新年度も「よりやげの根国計画検討委員会」を設置し、町文化協会の支援を得てシンポジウムの成果をまちづくり、文化財の保護育成に生かしてまいります。
生活環境の整備は、行政の重要課題の一つであります。かねてより問題となっておりました新開地区の排水路の整備実施はもとより、仮称ではありますが、「つきしろの街児童館」の建設調査費を計上し、その実現に向け努力してまいります。また、懸案の町道佐敷・仲伊保線道路改良工事については、その完了を急ぎ、コミュニティ補助事業に基づく防犯灯の一設置を実現してまいります。さらに、つきしろ一号線、屋比久遅又線、伊原屋比久線、シュガーロード改良事業等町道の整備推進に努めてまいります。
近年の都市化の進展に伴い佳民の要望も多様化しつつあります。これらの課題に取り組み、また合理的な土地利用に合わせた 住環境整備を図るため、土地区画整理事業を引き続き実施するとともに、土地利用の見直しを行ってまいります。自然環境を保全し、快適な居住環境づくりを進めるためには公共下水道の整備が不可欠であります。新年度は、下水道基本計画の策定に取り組んでまいります。
上水道事業につきましては、水道整備計画に墓づき今後とも不良給水箇所の改良工事等を実施し、町民の水需要にこたえてまいります。
現在、ごみ処理の問題は環境問題を含め、私たちにとっても大きな課題となっております。このような厳しい現状を踏まえ、本町におきましては、東部清掃施設組合との連携を強化しつつ、ごみ問題対策委員会の設置をはじめ町婦人会古紙回収事業への補助金の増額、生ごみ処理器購入補助などを実施し、ごみの少量化、再資源化を図ってまいります。
本町の文化創造の拠点としての佐敷町文化センターは、町民はもとより人々の交流、連帯、創造、鑑賞の場であり、人づくりの核、教育・文化施設として効果的な運用が望まれます。現在、6月1日の開館に向けて、開館記念事業を設定いたしており、創造型自主事業、町民・県民参加型事業、鑑賞型事業の確立に努めております。シュガーホールは、その存在を内外に広く知らしめるために、プレオープン事業に取り組み、四月より、「シュガーホール探検隊」「レクチャーコンサート」などの実施を含め、町民への公開を推進し、より親しまれる文化創造施設としての理解を深めていただきたいと考えております。 開館後のシュガーホールにおきましては、音楽はもとより優れた芸術を町民はじめ多くの人々に提供し、芸術文化の振興、人材の育成、地域活性化に生かしてまいります。
『佐敷町史」は、海外移民調査、戦争体験調査等を含め編纂事業を進めておりますが、本事業は町の文化事業の、大課題であり、今後ともその出版に向け努力してまいります。
町民の町政参加、町政の動きを知る手がかりとしての「広報さしき」は、より町民の皆さまに親しまれるよう紙面、内容の充実を図ってまいります。
2、夢ふくらむ「むらおこし」
諸産業の活性化は、本町のまちづくりを支えるものであり、今後、基盤整備を含め多面にわたっての取り組みが必要であります。足腰の強い産業の育成強化は、行政にとりましても大きな課題であり、今後さらなる真剣な取り組みが必要であります。
JA島尻東、町商工会など関係諸団体との連携を強化しつつ、諸産業の振興を図ってまいります。
農漁業を取りまく情勢には厳しいものがありますが、地域特性を生かすとともに、生産基盤の整備で新たな農漁業の展開を図ってまいります。
本町の農業にとりまして、その基盤整備は、将来への展望を切り開くものとして位置づけられます。今後とも、農地保全整備事業、土地改良事業、農村総合整備モデル事業、森林総合整備事業、地域農政推進対策事業等の展開に力を入れてまいりますさらに新年度には、ため池等整備事業、団体営新里地区土地改良総合整備事業、沖縄農業活性化構造改善事業等を推進してまいります。
漁業の振興は、本町の地理的条性を生かしこれまで水産構造改善事業による生産基盤の整備に努めてまいりましたが、今後は地域漁業活性化計画に基づき漁業経営の振興に努力してまいります。
畜産業を取りまく情勢には大変厳しいものがありますが、本町産業の一翼を担うものであり、生産組織の育成、獣医の委託事業等、引き続き新年度もその振興に努めてまいります。
商工業につきましては、町商工会の振興計画に沿って取り組みを展開し、活力あるまちづくりを進めてまいります。また、商工会活動の拠点ともなります商工会館の建設は、関係者と連携しつつその実現に向け努力してまいります。「むらおこし尚巴志塾」の開設は、町民各層が絶えず集い、語り、学び合う場として大きな意義を持つものであります。町といたしましては、町民のまちづくりへの意欲に期待するとともに、その開設に当たっては積極的な支援に努めてまいります。産業の振興にとりましても、後継者の育成は第一に上げなければならない課題であります。町農業青年会議所の設置助成を含め、特色ある産業の創出と育成で魅力ある活力にあふれたまちづくりに努めてまいる所存であります。
第三回南部まつりの開催は、本町がその会場地として決定しており、より積極的な取り組みが望まれます。
南部まつりを通じ、本町の良さ、諸産業をアピールするとともに今後のまちづくりへの活力としてまいります。
3、福祉と結いの里づくり
暮らしやすい町、やすらぎのある町の実現は、福祉、保健、医療の充実強化が基本であり、本町がめざす行政目標の大きな柱のひとつであります。本町におきましては、「福祉の風土づくり」のもと諸施策が展開されてまいりましたが、今後ともおもいやりと互助の精神に満ちたまちづくりに力を尽くしてまいります。
新年度の福祉行政の推進に当たっては、乳幼児医療無料化をはじめ、母子父子医療費援助、保健福祉計画の具体化に取り組んでまいります。さらに、町社会福祉協議会助成事業として地域福祉計画の策定に向け努力するとともに、高齢化社会の進む中ますますその要請が高まっております在宅老人短期入所事業の拡充を図り、在宅介護支援事業、老人ホーム入所措置費、老人デイサービス運営事業等の展開に努めてまいります。
長寿の町・佐敷を支えるお年寄りの皆さんの敬老年金の引き上げを実施し、さらなる長寿と健康を祈念いたしたいと存じます。今後とも高齢者の生きがいと健康づくり事業を推進し、長寿の町・佐敷の名をさらに高めていきたいと考えております。
心身に障害のある人への配慮を深め、障害者にとって住みよい町とするためのきめ細かな福祉社会の形成に努めてまいります。
年々、福祉に対する要望は多岐にわたり、多様化しております。町社会福祉協議会をはじめ町内各種団体との連携を図りつつ、町民一人ひとりの社会福祉への深い理解と温かい援助を得て、福祉需要にできる限りこたえてまいります。
「自分の健康は自分で守る」をキャッチフレーズに町民参加の健康づくりを進めてまいりました本町にとって、健康づくり事業は主要な施策であります。今後とも母子保健推進事業、成人病対策事業等の更なる拡充に努め、町民の健康づくり思想の高揚、疾病の予防を図ってまいります。
国民健康保健事業におきましては、保健施設事業に取り組み、訪問指導などを強化してまいります。また、事業の円滑な運営を図るため、国保税の自主納付を促進し、併せて医療費の増大を抑制する努力をしてまいります。
おわりに
新年度の町政執行の大筋につきまして申し述べましたが、地方自治に関わる諸問題は数多く、行政需要も年々増大しており、全てを満足のいく結果とするにはなお困難な作業となるであろうと考えております。この状況を踏まえ、町民生活の向上、町勢の発展のために、困難な壁を職員と一丸となって努力し、手を携え、乗り越えていくことが何よりも必要であります。今後とも、職員の資質の向上を図り、行政の効率化に努め、行政需要に即応できる体制づくりを推進してまいりたいと考えております。
「まちづくりは人づくり」を念頭に文化行政に力を入れ、六月に開館いたします町文化センターを拠点に文化の香る新しいまちづくりに努めてまいります。新しい時代、地方の時代にふさわしいまちづくりを推進し、誇れる郷土・佐敷町といたしてまいります。
最後に、議員各位、並びに町民の皆さまのさらなるご支援を心よりお願い申し上げ、私の所信表明とさせていただきます。
平成6年3月11日
佐敷町長 津波元德