町民にとって文化センターとは―。将来の芸術文化の拠点、芸術文化によるまちづくりへの期待と方向性が語り合われた「シュガーホールと町興し」シンポは、町内外からの高い関心を寄せるなか行なわれました。地域文化の振興の明日を考える各方面からの発言は、今後の町文化センターのあり方、シュガーホールの活用方法に大きな刺激となるものとなっていました。
新報移動編集局(主催 琉球新報 佐敷町 佐敷町文化協会)「シュガーホールと町興し」シンポジウムが1月29日午後2蒔、佐敷勤労者体育センターで200人の参加を得て行なわれました。
シンポでは、中村透琉大教授がアドバイザーとなり、與那嶺紘也助役の佐敷町文化センター建設への取り組み報告を基に、フロアから活発な討論が繰り広げられていました。
與那嶺助役は、報告の中で「文化センターは、社会教育、生涯学習の拠点としてのコミュニティ供用施設と文化の殿堂シュガーホールを複合化したものなので、有機的な結びつきによってその有効な活用をはかっていかなければならない」と強調するとともに、文化センターは、①町民に優れた舞台芸術を提供する機能 ②町民の文化的創造活動を支援する機能 ③教育活動と連動する機能 ④文化団体や個人を育てる機能―の4つの基本的な理念のもとに、さまざまな事業に取り組みたいと述べていました。
文化センター開館は、6月1日町制施行記念日となっています。開館を前に、意見や要望、豊かな発想が相次ぎました。
以下は、フロアからの意見です。
シュガーホールをどう活用していくか
志村政子氏 (婦人の立場から)
町民にとって、数々の優れた文化との出会い、自己発表の場が身近な所で与えられ、教育的にも情操を養う環境が整い、すばらしいと思う反面、町民の文化的関心度はどの程度なのか、専門的分野だけに心細くも思う。出来上がった建物は、町民の財産であり宝物でもある。町民1人1人が文化センターを愛し、日常的に活用することが大切だと思う。
石川明美氏 (コーラスグループの立場から)
音楽は不思議な力をもっている。人間の魂に訴える大きな力をもっている。上手、下手で片づけてしまうものではない。人の心を和ませてくれる、楽しませてくれる、勇気づけてくれる音楽が息づいてくればすばらしい。生の演奏にふれることで町民に次第に音楽を愛する人が増えることでしょう。私達もシュガーホールで定期演奏会をして、地域へ音楽の和を広げていきたい。
瀬底正真氏 (ロックグループの立場から)
町が示した方針は、すばらしいと思う。是非実行に移していただきたい。願わくは、大衆、特に若者に支援される音楽(ロック、ホーク、ニューミュージック)の活用も運営方針の中に組み入れてほしい。誰からも愛される庶民的なホールになるよう期待している。
西銘郁子氏 (学校教育の立場から)
青少年にとってもう1つの生きた学校として機能しなければならないという町の方針にうれしく思う。佐敷中では、毎年校内合唱コンクールを行なっているが、体育館ではどうしても音のすばらしさに出会えない。
今後は、シュガーホールで合唱コンクールを開催したい。また、音楽鑑賞会も行なって、全校生徒に音楽のすばらしさを体験させたい。
西田磯次氏 (琉球古典音楽の師範として)
郷土芸能は、県内はもとより全国的にまた世界的にも高く評価されている。芸能公演や発表会は、毎日のように行なわれているが、ほとんど都市地区での開催のため、町民が鑑賞する機会は少なかったと思う。しかし、町内にシュがーホールができた今、古典音楽の発表の場としてまた、芸術鑑賞の場として活用できることを楽しみにしている。
イベントをどう企画していくか
新垣安子氏 (シュガーホールにエールを送るカノンの会)
コンサートは楽しくなくてはいけない。音楽会の雰囲気に巻き込んでくれる解説が必要。簡単な解説を加えることで知らなかった音楽の世界が、もっと広がると思う。シュガーホールにも是非解説者の配置をお願いしたい。シュガーホール少年少女合唱団をつくってみてはどうか。また、全国規模の音楽コンクールも開催してほしい。
吉井巧一氏 (ドイツでの生活体験から)
ドイツでは、ムジヂィーレンといって肩ひじのはらない姿勢で音楽を楽しむ光景があった。それは、週末に父がバイオリンを母がピアノを息子がクラリネットを弾いて、近所の人が集まってきて楽しく聞くという状態。つきしろ広場で、ムジヂィーレン的企画をしてほしい。高いお金を払って一流の音楽を聞くのもいいが、金をかけないで、野良仕事の帰りでも気軽に楽しめる音楽を企画してみてはどうか。
平田亮一氏 (音楽のみならずアバウトな企画を)
シュガーホールで、さとうきびのシンポジウムや健康講演会、映画祭、オペラなども企画してみてはどうか。つきしろ広場では、キビから砂糖ができるまでの過程を実演したり、キビを切って太鼓のバチがわりにして太鼓演奏会を企画するのもおもしろいと思う。町興しには、何よりも町のムードが大切だ。
馬天入口に音符の形やキビをイメージした大きな石を置くのも1つのアイディア。また、沿道の標識にも音符のマークをつけるなど工夫を凝らして町全体のムードを盛り上げてほしい。要は人材だと思う。町興しに情熱を注ぐ人がいれば、自然と人は集まってくるものだ。
町民に愛されるシュガーホールとは
宮城鷹夫氏 (運営審議会委員の立場から)
運営方法として①国内を含むアジア、または太平洋地域を中心とする世界の音楽、芸能の充実、交流、誘地を考えていく ②シュガーホールのもつ特性を生かして、音楽的なイメージを町民の連帯の上で発展させていく ③音楽だけでなく、若者の志向を含めた幅広い文化活動の拠点にする努力をする ④学校教育、社会教育の立場から公民館活動としての機能をもたせる―以上の基本を踏まえ、中期、長期の計画を立てなければならない。事業をする時は、新しく、珍らく、そしておもしろくなければいけない。そうした材料をもたせることが大事。
津波恭氏 (青年会の立場から)
若者は、ロック、クラッシックを分けて考えているのではない。音を楽しむのが趣味なので、クラッシックでも音が良ければ聞くし、ロックでも声が良ければ聞く。文化センターは、楽しい空間であってほしい。音楽だけでなく演劇など楽しめて開放されたゆとりの空間であったらいいと思う。そこが楽しむ場所であれば、自然と遊びのプロである子どもからお年寄りまで集まるだろう。
意義ある文化センターに
中村透氏 (琉大教育学部教授)
シュガーホールは21世紀に向けたまったく新しい遊びの場だと思っている。文化行政は、常に開放されていてほしい。建物を1つのシンボルとして専門家、地元住民、未来を担う子ども達が一緒になって汗を流して町をつくっていく拠点として位置付けていくことが大切だ。単に音楽家を育てるのではなく、一流のアーチストを呼び、国際的な優れた人材と子ども達の感受性が高いうちに出会わせるというのは計り知れない効果がある。人と人とを出会わせる場として文化センターが機能することを願っている。