平成3年度の町政の行方を占う第83回佐敷町議会定例会は、3月12日から26日までの15日間の会期で開かれ、開会冒頭山城時正町長が町政運営方針を表明しました。
所信表明のなかで山城町長は、「21世紀を展望した新たなまちづくりを総合的かつ計画的に進めるため“自然との調和、活力ある健康なまち佐敷”をめざして町民ともども強力に取組んでいく」と強調。第2次佐敷町基本構想の理念と将来像をふまえ、「活力のまちづくり」「創造のまちづくり」「連帯のまちづくり」「快適なまちづくり」を施策の柱に、将来に輝く豊かなまちづくりを惟進していくことを明らかにしました(施政方針は、2~5ページに掲載)。
町は、今3月月定例会にこの施政方針の裏づけとなるべき予算、条例など24件の議案を提出しましたが、慎重審議の結果いずれも原案のとおり可決されました。平成3年度一般会計予算の総額は、前年度比17.1%増の、29億3900万円。この予算を活用して、公有水面埋立事業をはじめ保育所整備事業、農村総合整備モデル事業、道路整備事業、公園整備事業などの着実な推進を図ることにしています。また、主な新規事業としては、小谷農業構造改善センターの建設、干潟環境調査、馬天児童公園の建設、重度心身障害者医療費助成制度の創設、全町植物園化構想に向けての計画書づくりなどが挙げられます。
3月26日の一般質問には12人の議員が登壇。多数の傍聴者の見守るなか、排水路の改修、児童館の建設、非核平和宣言、厚生年金休暇センターを生かした町の活性化、農業振興策、シーガーデン構想の進捗状況、姉妹町提携事業の推進など、町政全般の諸問題を活発にただしていました。
今議会では、新しい教育委員に前馬天小学校校長の嶺井光栄さん(61歳)を任命することを承認。また、議員16人全員で構成する公有水面埋立事業に関する調査持別委員会を設置していました。
平成3年度施政方針(全文)
はじめに
平成3年第(13回佐敷町議会定例会の開会にあたり、提案いたしました議案の説明に先立ち、町政運営の所信の一端を申し上げ、議員各位ならびに町民の皆さまのご理解とご協力を賜りたいと存じます。
私は佐敷町の恵まれた自然環境を発展の活力源とし、自然と産業、自然と町民生活のバランスをまちづくりの基本にすえつつ、伝統と文化の継承発展や町民の健康と生活、福祉の向上をめざして努力を重ねてまいりました。
町民の皆さまのしった激励と力強いご支援を賜りながら、社会福祉の基盤づくり、農業基盤整備、学校教育施設の整備拡充、生活環境の整備充実等々、住民生活に直結した諸施策を着実に推進してまいりました。
今日まで、まちづくりの墓本は町民の意思と参加が最も重要であるとの認識をもって諸事業を推進してまいりました。そのことが、健康づくり運動や造林事業等に大きな成果を収め、全国的にも大きな評価を受けることにつながりました。
昨年11月4年に一度のイベントとして企画し、開催いたしました「さしきまつり」も、そうした町民の和と協力によって成功裡に終了することができたとあらためて感を深くするものであります。今後とも郷士愛をまちづくりの原動力とし、町民参加のまちづくりを推進してまいりたいと考えているところであります。
さて、わが国の経済情勢は、湾岸情勢の推移が懸念されるものの総じて平成2年度同様経済構造調整の中で内需主導型の経済成長が持続するものと予想されております。
一方、本県経済については、物価が引き続き安定する中で財政支出が堅調に推移し、安定基調を持続するものと見込まれ、また、雇用情勢についても、相対的にはなお厳しさが残るものの、改善基調で推移するものと予想されております。
地方財政は、依然として極めて厳しい国の財政状況が続いていることにかんがみ、歳出の抑制など、節度ある財政運営を図るよう要請されているところであり、本町においても、さらに経費の節減合理化、事務事業の見直し等を行ない、財源の重点的、効率的配分を図りながら、財政の対応力を高め、町の均衡ある発展に努めてまいりたいと考えております。
本町は、21世紀を展望した新たなまちづくりを総合的かつ計画的に進めるため行政運営の理念とビジョンに並び施策の大綱に基づき「自然との調和、活力ある健康なまち佐敷」を目指して町民ともども強力に取り組んでまいる所存であります。
基本施策
平成の時代が始まって早くも3年目を迎えます。今や各自治体においては、21世紀に向けてのまちづくりに強力に取り組んでいる最中であります。本町においても、このような時代の流れの中で、地域特性に根ざしたまちづくりを町民とともに明確な目標をかかげて、積極的に推進していかなければなりません。
さて、本町では21世紀を展望し、策定した第2次基本構想の理念と将来像を明確にとらえ、その実現に向けての行政運営の基本施策「活力のまちづくり」、「創造のまちづくリ」、「連帯のまちづくり」、「快適なまちづくり」のもとに将来に輝く豊かなまちづくりを今後とも強力に推進してまいります。
「活力のまちづくり」 活力あるまちづくリは、地域に根ざした産業の振興が基本であります。本町の産業は農業を基幹に、漁業および商工業で構成され、町勢発展の原動力となっております。将来とも、本町の地域特性が発揮できる産業の発展可能性を掘り起こし、あるいは創出して時代の動向に対応した産業の振興発展に努力いたします。
また、国や県と一体となって進めておりますマリンタウンプロジェクト構想は、本町の21世紀を展望したまちづくりの柱であり、関係町村とも連携を図りつつ、その実現に向けて最大限の努力をいたしてまいります。
「創造のまちづくり」 本町は地域振興の柱の1つに教育、文化のまちづくりを掲げ、町民一体となって取り組んでまいりました。将来とも先人たちが築いてまいりました伝統を守り、国際化、情報化などにみられるような社会動向をふまえ、町民のニーズに対応した幼児教育、学校教育、社会教育、地域文化、青少年の健全育成等の施策を推進してまいります。
「連帯のまちづくり」 人口の高齢化が進み、人生80年時代の長寿社会を迎えようとしています。それだけに、町民が健康で、安心して生活できるまちづくりが期待されるところであります。今後ともさらに連帯の精神を培い、福祉の風土づくりを促進し、生き甲斐にみちた生活の展開に努めます。特に新年度は制度の改正に伴なって国、県の業務が市町村に移行されますので、移行にあたってはいささかも事務が停滞することがないよう万全な体制で当り、これまで実施してまいりました町の施策と一対とし、児童福祉や母子福祉老人福祉、心身障害者福祉等の充実に努めてまいります。
「快適なまちづくり」 心やすらかに快適かつ安全で便利な住みよい町づくりは、町民すべての願いであります。これまで生活道路や排水路、各種公園、集会施設、街灯、交通安全施設等を計画的に整備してまいりましたが、今後ともこれらの事業を継続、整備し、加えて新年度は全町植物園化構想の実現に向けて積極的に取り組んでまいりたいと考えております。
一,活力のまちづくり
活力ある町の実現は、人的資源の活用と産業の振興によるところが大であると考えます。本町ではこれまで町民の英知を結集して、ハード、ソフトの両面から、産業の振興に努めてまいりました。特に農業、漁業、商工業は町発展の原動力であり、今後とも本町の特性を生かした産業の可能性を掘リ起こし、時代に即した産業振興を推進いたします。
本町の基幹産業である農業につきましては、実施5年目を迎える県営浜崎地区土地改良事業予算も順調に伸び、新年度は面積15ヘクタール、事業費1億300万円が予定されております。農村総合整備モデル事業も中期に入り大幅な事業実施が予定されております。さらに、本年度採択されました仲伊保地区土地改良総合整備事業も6カ年計画で新年度から実施いたします。新里農地保全事業についても順調に推進されておりますし、加えて新年度は、伊原地区農地保全事業の採択に向けて取り組んでまいりたいと考えております。
農業の健全な発展のためには、基礎的条件の整備である農業基盤の整備をはじめ担い手の育成と確保、生産組織の育成強化等が強く求められております。今後その面での取り組みに努めてまいりますが、新年度は農業者の研修、集会、レクリエーション活動を通して農家相互の地域連帯感を醸成し、地区農業の振興を図るため小谷農業構造改善センターを建設いたします。
漁業の振興については、他産業との調和を図りつつ、本町の環境特性を生かした漁業振興に努めます。そのために、生産基盤の整備、漁業経営の向上、組織活動の活性化に向けた施策を推進いたします。新年度は仲伊保港の整備促進、浮漁礁設置補助、漁船作業省力機器購入補助、ハーリー行事の助成等を実施し、漁業の振興を図ってまいりたいと考えております。
商工業の振興については、商工会が策定いたしました振興発展計画に沿って積極的に協力し、消費者ニーズに応えるとともに組織活動の活性化に努めます。町民待望の厚生年金休暇センターもオープンいたしますので、地域との関わりを強め、観光振興に向けて積極的な活用を図ってまいります。
畜産の振興につきましては貿易自由化の波を受け大変厳しい状況にありますが、健全な発展をめざすため、組織の育成強化、獣医師の委託等により経営の安定、生産意欲の向上に努めてまいります。
造林事業につきましては、事業開始以来13年、町民ならびに関係者各位のご支援ご協力によりほぼ計画面積に到達しつつありますので、今後は自然環境の保護・育成とあわせ樹種の保全、育林に努めてまいりたいと考えております。
21世紀を展望して計画策定いたしましたシーガーデン構想も、中央港湾審議会において承認され、いよいよ実施に向けてスタートいたします。新年度は事業計画の調査と干潟環境調査を行ないますが、実施にあたっては自然との調和を図り、将来に悔いを残さぬよう計画し、取り組んでまいる所存であります。
二、創造のまちづくり
本町はこれまで町政運営の柱の1つに教育、文化を大事にするまちづくりを掲げ、町民一体となって取り組み、多くの有能な人材を輩出してきました。今後とも、創造力に満ちあふれた人間性豊かな人材の育成に努めるとともに、教育環境の整備をはじめ諸施策の充実強化を図ってまいります。
また、高齢化社会に対応した生涯教育をはじめ情報化、国際化などにみられるような社会動向に即応した施策の展開も不可欠であります。
本年度は社会教育課を設置し社会教育の推進を図ってまいりましたが、新年度は県派遣社会教育指導主事を招聘し、強力な指導体制でもって社会教育の充実を図ってまいります。
学校教育については、これからの社会動向に対応し、地域社会への適応能力を高めるために、多様な学習機会を創出する教科教育による基礎学力の向上に努めます。また教材備品、図書の整備等を推進し、人材育成のための教育環境の整備充実に努力いたします。
幼稚園教育では、家庭教育や学校教育との連携を図りながら、教育内容の充実、教育施設の整備に努めてまいります。また、幼稚園通園バスの健全運営を確保するため助成金を交付し、園児の安全通園を図ってまいります。
学校教育環境の整備は、佐敷小学校の水道改修工事、資料室の新設、新給食室の改修工事をはじめ、馬天小学校の職員室の空調設備工事、カーテンエ事、校内歩道補修工事並びに小、中学校の屋外環境整備に努めてまいります。
社会教育については、本年度に引き続き各種教室、講座を開催し、町民があらゆる分野に参加できる環境づくりに努めてまいりますとともに、高齢者や婦人のスポーツ活動を推進するため、多目的広場にトイレの設置と植栽を行なってまいります。
青少年教育については、南部地区少年の船への参加、子供会連絡協議会の結成、青少年健全育成町民会議の活性化を図り、次代を担う青少年が健全に育成されるよう町ぐるみの運動を展開いたします。
文化財の継承と発展については、佐敷・ルネッサンス構想の具体化に向けた地城文化の育成に努めるとともに第一尚氏関連冊子の編集と『佐敷町史』戦争・移民体験篇の資料蒐集・編集に努めてまいります。
三、連帯のまちづくり
すべての町民が健全で明るい生活が営めるような地域社会の実現は、行政の最大の目標であり、「福祉の風土づくり」をめざす本町にとって大変重要な課題であります。新年度においてもこの基本認識をふまえ、福祉に対するニーズを的確に把握すると同時に新年度から移行される新しい制度の対応に適切かつ迅速に努めます。
本町は、これまで町民福祉需要に対し、町社会福祉協議会ならびに福祉諸団体と一体となってきめ細かい施策を進めてまいりました。その成果は福祉の町として内外から高い評価を得ております。町民の社会福祉 に対する理解も深まり、着実に協力体制が強化されつつあります。
高齢化や核家族化などの社会環境の変化に伴い、ますます福祉に対するニーズが高まってまいります。したがって町社会福祉協議会ならびに福祉関係諸団体と連携を密にしながら、ボランティアの育成強化やコミュニティー活動の促進を通じて、福祉活動の推進体制の強化を図ってまいりたいと考えておリます。
次代を担う子どもたちの健やかな成長は、両親はもとより町民の切なる願いであります。すべての児童が心身ともに健全に成長するよう、児童の生活、環境の整備拡充を図るとともに、安全な遊び場を確保するために、新年度は馬天児童公園の新設、つきしろ児童公園の改修をいたします。さらに第1保育所の大規模改修工事を行ない、園児の健全保育に努めます。
高齢化、長寿社会を迎えて、家庭や地域社会の中で老人とのふれあいを大切にし、敬老する町民意識を育てるとともに、高齢者の生き甲斐と健康づくり事業を積極的に推進いたします。また、在宅老人短期保護事業の実施をはじめ、ひとり暮らし老人や寝たきり老人の日常生活の援護、居宅訪問事業など、在宅福祉の強化に力を入れてまいります。母子福祉については自立援護に力を尽くし、心身障害者福祉については生き甲斐をもって社会参加できるようきめ細かい施策を実施します。新年度は、重度心身障害者の保健の向上と福祉の増進を図るため、医療費の一部を助成いたします。また、重度身体障害者の日常生活の便宜を図るため生活用具の給付を実施いたします。さらに、町身体障害者協会の10周年記念事業の支援を行なうとともに、盲人用卓球台を購入し目の不自由な方方の健康づくりを推進いたします。
人生80年時代を迎え、老後の安定した生活が望まれる今日、その目的に向けて委託指導員を増員し国民年金制度の周知徹底を図るとともに、無年金者の発生防止に努めます。
国民健康保険については、円滑な国民健康保険事業を推進するため、医療の適正化、保険税の自主納付の促進、国庫負担の改善に努めるとともに、医療費の増大を抑制するために町民の健康づくり運動を積極的に推進し、町民が明るく楽しく住めるにまちづくりに邁進いたします。
四、快適なまちづくり
都市化が進みつつある中での暮らしよい快適なまちづくりは、行政にとって大変重要な課題であります。これまで種々の施策を講じ住みよいまちづくりに取り組んでまいりましたが、さらに町民が本町の自然的、社会的特性を生かしながら町民相互が連帯感を持って、健康で文化的な生活が営める町づくりをめざして努力を重ねてまいる所存であります。
本町の集落は国道を中心におおむね三日月型の形態を呈しておりますが、これまでそれぞれの地形や地域特性にあわせて生活道路、排水路、遊び場、広場、集会施設、街灯などを計画的に整備し、集落環境は大幅に改善されてきております。
新年度も佐敷・仲伊保線の改良をはじめ、手登根・伊原線、佐敷海岸線の改良、新開地区排水路の改修、さらに農村総合整備モデル事業、地域環境整備事業等による各字の集落道、集落排水施設の整備を行ない、住みよい環境づくりに努めてまいります。
町民の健康づくりやコミュニティーづくりに公園や広場、集会施設は欠くことはできません。これまで町民のニーズに応えて、新開スポーツ公園をはじめ冨祖崎公園、農村広場、農業構造改善センター、学習等共用施設、勤労者体育センター等々を建設してまいりましたが、各施設とも有効に活用され、それぞれ地域の振興、発展に大きな役割を果たしておりますことは大変喜ばしいことであります。今後さらなる活用に向けて努力を重ねてまいります。
本町は、まちづくりのビジョンの一つに全町植物園化構想を掲げております。これは、町民が植物を愛し、花をめでる心を養い全町が花と緑のネットワークでつつまれるという環境を形成する構想でありますが、新年度は実施に向けての計画書づくりに取り組んでまいります。
町民の安全な暮らしの創出と交通事故防止対策も、住みよいまちづくりの課題の一つであります。これまで「交通死亡事故ゼロの町宣言」や交通安全広告塔の設置を行ない、交通道徳の周知徹底を図ってまいりましたが、新年度もさらに交通安全広告塔を増設するとともにカーブミラーや安全棚等を設置して、交通安全対策に力を入れてまいります。
水道事業の管理運営に当っては、水需要の増大に応えこれまで小口径管地域の改良工事をはじめ、老朽給水管の改良や高台地域対策を講じてまいりましたが、まだまだ整備中途であり、今後とも町の水道事業整備計画に基づき給水不良地域の解消に努め、町民が等しく水の恩恵に浴せるよう最大の努力をいたしてまいります。
おわりに
平成3年度の町政執行の基本方針ならびに施策の大綱について申し述べてまいりましたが、地方財政は依然として厳しい状況下にあり、財政の運営にあたっては今後なお一層の努力が必要であります。
社会のあらゆる分野でOA化が進み、情報処理技術も相当高度化している今日、情報化への対応は地方自治体においても大変重要な課題であります。本町においては昭和48年から住民税を皮切りに各種業務の電算委託化をはかり事務の効率化を進めてまいりました。新年度は時代の要請に即応して電算事務効率利用の見直しを行ない、なお一層の住民サービスの向上と、簡素にして効率的な行政の実現に努めてまいりたいと存じます。
21世紀のまちづくりを展望して策定いたしましたシーガーデン構想(MTP構想)も昨年8月中央港湾審議会において承認され、いよいよ実施に向けての調査がスタートいたします。また、町民待望の沖縄厚生年金休暇センターが完成し、3月25日オープンの運びとなっております。さらに、沖縄の道(自転車道)も近々着手される予定であり、本町をとりまく情勢も大きく変わりつつあります。
このように時代の要請に応えるには執行体制の強化が重要になってまいります。新年度も事務事業等の点検、見直しをはかりつつ職員の研修による資質の向上に努めてまいります。
以上、町政運営にあたっての基本的な考え方及び主要施策の概要について申し上げましたが、何とぞ、慎重なるご審議の上、議決を賜りますようお願い申し上げます。
平成3年3月12日 佐敷町長 山城時正