「子どもの育つ環境を考えて」
町婦人会佐敷支部 仲里 さつき
(本発表は南部地区大会でも最優秀賞に輝き、中央大会でも発表されます)
「人間は環境でつくられる」という事は、「狼に育てられた少年」の話を例にとるまでもなく、よく聞くことです。私は、仕事柄たくさんの子どもたちに接する機会に恵まれ、このことを実感することも多いのです。個性豊かな子どもたちと接して感心させられたり、大人の私たちが考えもしないひらめきに、ハッとさせられることもしばしばあります。「今の子どもたちは-」とよく言われますが、子どもたちの本質は、今も昔もそう変わってはいないと思います。ただ、変わってきたとすれば、子どもたちを取りまく環境ではないでしょうか。
豊かな食生活、電気製品など恵まれた生活環境、学習塾通いなど、いろいろな面で物質的に豊かになってきた反面、家庭的に恵まれない、複雑な家庭環境の子が増えているような気がします。このことは、数字としても表われています。
最近、新聞で報道された「89年人口動態」によると、沖縄県は、出生率、離婚率が全国一だそうです。出生率はともかく、離婚率では、全国平均より0.66ポイント高く、1.95。これは、3時間41分に1組の割合で離婚した計算により、まったく不名誉な記録です。さらに、離婚率が5年連続トップという、はずかしい記録を更新中というのです。これは、県民性や社会経済状況を反映しての結果ではないかといわれますが、どのような理由があろうとも、そのしわ寄せを押しつけられるのは、子どもたちなのです。
人間の生活はさまざまですから、離婚もあるとは思うのですが、やはり、離婚によってもたらされる問題を、私たちは深く考え、反省しないといけないと思います。私が知っている、ある家庭では、母親が夜の仕事につき、そのため、子どもは朝食抜きで学校へ。子どもは、教室で青い顔をして、保健室にかけこんできます。また、離婚により、祖父母に預けられたままで、父親も母親も会いに来てくれないなど、そのような例は、2、3にとどまらないのです。
もちろん、離婚したすべての家庭がそうであるとは言いません。両親そろった家庭よりよほどしっかりした家庭もあります。しかし、このような例を目のあたりにすると、どうしても、子どもが育っていく環境の条件をどう与えていくかについて考えてしまうのです。
次に、子どもを取りまく環境の変化に、核家族化してきていることがあげられます。以前は、おじいさん、おばあさん、そして曾おばあさんまで一緒に暮らしているという家庭がめずらしくなかったのですが、最近は、長男でも別居というケースが増えています。
同居に伴って起こる、様々な問題はあると思いますが、共稼ぎ夫婦が多い現在、同居生活から自分自身や子どもたちが学び得る事は想像以上に大きいのではないでしょうか。私自身、長女が生まれてから、すぐ主人の両親と同居したのですが、良き舅、姑に恵まれ、多くの事を学ばせてもらっています。鹿児島から嫁いできた私にとっては、沖縄独特の慣習や料理を教えてくれる良き先生でもあります。子どもたちの育ちゆく姿を見ていても、同居の良さを感じる今日この頃です。
そこで、私の体験からその事について、いくつか述べてみたいと思います。まず、食生活の面で、自分たちだけだと、仕事で疲れて帰ってきた時、外食やできあい物で済ませたりして、栄養のバランスもくずしがちですが、姑の手料理のおかげで、子どもたちの嗜好も片寄ったものにならず、バランスのとれたいろいろな味に、幼い頃から親しませることができます。
2つめに、自分自身に時間と心のゆとりができること。核家族では、「1日の家の仕事を終えて寝るのは、夜中の1時、2時はザラ」という話をよく聞きますが、この点、姑が元気なので、家事を分担して手伝ってもらっています。そこから生まれる時間と心のゆとりから、子どもたちとたっぷり接してやることができるのです。
そして、1番大切にしたいのは、毎日の生活の中から、おじいさん、おばあさんを交えた家族のつながりが、子どもたちの心を知らず知らずに育てていっていることです。
時折、長女が、階段を登り降りする時、「おばあちゃん、大丈夫?荷物持ってあげるから、ゆっくり降りるんだよ」などと、足の弱いおばあちゃんを思いやる言動をとってくれるのです。このように、自然に思いやりの心を育ててくれているようで、それを見た時、私はとてもうれしく思います。
「子どもが子どもをつくる時代だから親が子どもをしつけきれない」と言われるこの頃ですが、育児書などの知識のみでなく、長年の体験から得た姑の意見を身近に聞いたり体験する事も、若い世代の私たちにとって大切な事ではないでしょうか。同居生活は、確かにお互いの気遣いも多く疲れるものかもしれません。
もともと他人同士なのですから、意見のくい違いもあるでしょうし、しっくりいかないかもしれません。私自身、長女の育児で、食事を与える役を姑に取られてしまったように感じた事や、夜泣きを治めきれず母屋へ預けざるを得なかった事など、自分は母親なのかと苦悩した時期もありました。しかし、主人と話し合い、姑にも話し理解してもらい、何とか解決しました。ですから、互いに言うべき事は言う事、そして相手への思いやりを忘れさえしなければ、子どもたちの育つ環境として、同居は、すばらしい生活条件だと思うのです。
心豊かな子どもたちを育てていくために、最善の環境をつくる努力をしていくのが、私たち親としての務めではないでしょうか。若いお母さん方、同居のいい面に目を向け、改めて同居問題を考えてみませんか。