なんじょうデジタルアーカイブ Nanjo Digital Archives

シリーズ①  まちの明日を考える

佐敷町の将来のまちづくりへ向けた動きが、いま、着実に進んでいます。住民の意思の反映するまちづくり、快適で潤いのある佐敷町の実現をめざし、さまざまな角度からの検討が加えられています。第1次基本構想から第2次基本構想へ。
恵まれた自然を生かしたまちづくりは、今後どのような方向へ- 。

序章 第2次基本構想の背景と前提
第1節  第2次基本構想策定の意義
本町は、昭和52年度に第1次基本構想を策定し、これにもとづいてまちづくりを積極的に推進してきました。恵まれた自然環境を発展の活力源とし、自然と産業、自然と町民生活のバランスをまちづくりの基本にすえつつ、伝統と文化の継承発展や町民の健康と生活の向上をめざして町民とともにまちづくりに取り組み、多くの成果をあげています。
第1次基本構想では、①自然を大事に守り、育てる ②教育を大事にする ③農業・水産業を第一とする④高齢者や子供たちを大事にする ⑤1人1人の住民の自主性を尊重する―ということを理念としてかかげ、快適な生活、潤いある環境、活力ある産業の展開を目標に事業を推進し、多大な成果を得ました。
造林事業の展開などで自然を守り育て、また教育施設の整備、町史づくりなど教育の面でも多くの成果が実現しています。農業基盤の整備、産業まつりの開催、農村総合整備モデル事業の実施など産業面での成果も着実に進展しています。老人福祉センターの建設、児童公園の整備など高齢者や子どもたちのための環境づくりも推進され、まちづくり100日シンポジウムの開催などにみられるように住民の自主性を喚起するまちづくりも進められています。
とくに、厚生年金休暇センターの誘致や健康づくり推進事業等は県内外から大きく評価され、期待されています。健康な町・長寿の町として注目され、21世紀への新たなまちづくりへと脈動しています。来るべきリゾート時代の幕開けに対応するマリンタウンプロジェクトの一環としての佐敷シーガーデン構想の策定もこれまでの大きな成果です。
このように、第1次基本構想の成果をふまえ、21世紀への時代潮流と本町の地域特性に根ざした新たなまちづくりを展開する時代が到来しています。したがって、第2次基本構想の策定の意義と必要性は、新しい時代への適切な対応だといえます。
21世紀にむかって高齢化、情報化、国際化等の大きなうねりが迫っています。本町においても、これらの時代潮流に対応したまちづくりが要請されています。長寿社会にむけた地域環境整備や町民活動のあり方が問われますし、また高度情報社会に対応した社会システムの確立や国際化社会への円滑な対応が期待されます。
このような時代潮流を反映して町民意識や価値観、行動様式も多様化することが予想され、これらの変化に対応したまちづくりも要請されます。また産業構造も大きな変化の過程にあり、とくにリゾートの進展などで本町の産業も新たな対応が求められます。
21世紀への新しい時代潮流のもとで、長期的な展望に立ったまちづくりが要請されており、第2次基本構想の策定の意義はきわめて大きいといえます。本町の特性と課題をふまえ、めざすべき将来像を確立することが、今望まれています。

第2節 佐敷町の特性と課題
1 特性
沖縄本島の東部-与勝半島と知念半島に抱かれるように中城湾はおだやかな環境をたたえています。その中城湾の南奥部に本町は立地しています。背後は屏風のような丘陵で囲まれ、前面の海との間に肥沃な海岸平野が細長く発達し、そこに集落や畑があって生活や生産の拠点となっています。海岸には港湾や漁港、そして一部埋立造成されて市街地が形成されています。
本町の特性は、まず自然条件からみますと、内湾型の立地環境だといえます。中城湾を前面に、丘陵を背景にして緑にあふれた環境をつくり出しています。内湾型のこのおだやかな環境のなかで、町民のくらしが営まれています。
また、本町はしだいに都市化が進展しつつありますが、それでも県都那覇市からみますと、田園風景に包まれた近郊に位置しています。この生活の面では都市化しつつありながら、自然に恵まれた環境をもつニューカントリーとしての立地も本町の大きな特性です。
たしかに、以前は人びとは都市へむかって流出していましたが、道路交通網の整備や自家用車の普及ともあいまって、これからは自然のゆたかなニューカントリーに定住の指向性は高まるものと思われます。町民はこのニューカントリーを生活の拠点とし、そこから通勤するというパターンに変わってきています。
さらに、本町は都市と農村の両面をもっています。与那原町と新開までは連担した市街地を形成しつつあります。港湾や病院、商業サービス業、公共施設も集積し、市街地としての機能を整備しつつあります。しかし、同時に、本町は依然として伝統的な多くの集落から構成されています。農作物を栽培し、収穫をよろこび合う農村もまた町民の生活の舞台です。この都市と農村という環境も本町の特色です。
たしかに、市街地も発達しはじめ、生活の都市化も進展しつつありますが、それでも本町は濃密なコミュニティを形成しています。
町民同士のふれあいも緊密で、また共同と連帯の精神にあふれた地域社会を保持しています。相互に協力しあい、生きがいにあふれたふれあいの町づくりこそ本町の誇るべき特性だといえます。
このように、内湾型の立地環境、ニューカントリー性、都市と農村の性格、濃密なコミュニティという本町の特性をふまえ、21世紀にむかって本町の可能性を掘り起こしていくことがもとめられています。その際、とくに重要な本町振興の課題として以下の諸点が浮かびあがってきます。

2 課題
(1) 自然環境の保全と活用
本町は前面に海、背後に丘陵を有し、町民がいつでもふれあえる自然が身近にあります。斜面や丘陵の森林は、湾岸からの空気と台地からの空気がぶつかって水分を含み、つねに豊かなみどりをたたえています。またおだやかな海は水産業の場として生産に貢献し、景観として町民の心をなごませます。しかし、この自然環境も原始のすがたのままではなく、町民の生産や生活の場として埋め立てや開墾など開発の手が加えられています。今後も、できるだけ自然環境は保全し、どうしても開発の必要性が生じたときにのみ、自然との調和を最大限に尊重し、活用することが課題だといえます。

(2) 都市化への対応
与那原町から新開にかけてしだいに連担市街地が形成され、空間的にも都市化が進展していきます。
これまで、埋め立てや農地転用によって宅地の供給を行ってきましたが、今後も新しい都市機能の導入を図り、町勢発展をめざすうえから、適切な埋立造成と農地転用が要請されます。区画整理事業の推進や新しい都市機能にあわせて団地の確保がこれからの重要な課題です。また、町民生活の都市化傾向は顕著であり、都市的生活に必要な施設の整備や活動のしかたが要請されます。都市としての環境整備や生活の確立が必要です。

(3) 農村環境の向上
都市化の進行といっても、本町の多くの地域は依然として農村です。集落は畑を管理する生産の拠点であると同時に、そこに住む町民の生活の拠点です。農業生産の向上につながる生産拠点としての集落整備はもちろんのこと、快適で便利な住みよい農村づくりもいっそう要請されます。

(4) 産業の多様化と高度化
本町の産業は、これまで農業、水産業、商業、工業などがそれなりに展開していますが、いずれにしても規模や産物の面で限定されています。これからは、農業にしても作目の多様化によって付加価値の高い産業にしていくことが必要です。花キや野菜への動きもみられますが、バイオテクノロジーの導人などで飛躍していくことが大切です。水産業も沖合展開はもちろんのこと、養殖や栽培漁業、水産加工の面にいちだんと発展することが望まれます。商業や製造業も単に町内需要を満たすだけでなく、県内を対象にした企業をめざすことが期待されます。また、南部観光ルート上の利点を生かしたり、マリンリゾートなど新しい産業の導入等により、観光面での産業展開が要請されます。このように、産業の各分野で多様化と高度化が必要だといえます。

(5) 新しいライフスタイルヘの対応
都市化していく過程で、町民の価値観や行動様式も変わってきます。また余暇の増加によって人びとのライフスタイルも大はばな変化が求められます。町民のライフスタイルに対応した環境整備も必要です。また、本町の海岸へもレジャーを求めて近隣の都市住民や本土からの観光客の来訪も予想されます。所得の増加、自由時間の増大、価値観や行動様式の変化などによって新しいライフスタイルが生まれ、本町としてもそれにうまく対応することが要請されます。

(6) リゾート機能の導入
さきに述べたように、自由時間の増大、長寿社会の到来は、新しいライフスタイルを生みますが、その典型がリゾートライフです。
すでに、本町には厚生年金休暇センターの建設が着手されており、長寿社会を迎えてシルバー層の新しい生活が実現されます。これは、シルバーリゾートヘの契機となる可能性が期待されます。また、海岸や海洋へのマリンリゾートの展開も予想されます。新しい生活や産業としてリゾート機能に着眼し、その導入を図ることが要請されます。

(7) 創造的活動の発揮
定住性が高まり、自由時間が増大すると、それだけ町民の創造的活動への関心が高まります。自己表現のための芸術、芸能、スポーツ等への欲求もつよまり、それらの欲求を満たす活動の場が必要となります。また、町民の社会参加の気運も高まり、イベントなども活発に開催されることが予想されます。このような町民の創造的欲求に応えられる活動の場や組識化が要請されます。
以上述べたように、21世紀に向かっての本町の振興は、地域の特性に根ざしながら着実に時代や地域の要請する課題に対応していくことによって実現されます。
地域特性を十分に伸ばし、課題を克服し、個性あるまちづくりが期待されています。

第3節 町づくりの前提
1 目標年度
第2次基本構想の目標年度は平成11年(1999年)とします。
21世紀に備えおおむね10年間の本町のめざすべき方向を確立し、町づくりの指針とします。
 
2 計画人口
目標年度における計画人口は、1万4000人と設定します。
 
3 上位計画等との整合性
この基本構想の策定にあたっては、第2次沖縄振興開発計画をはじめ、国・県の上位計画・関連計画の方向性、および本町の各種計画との整合性を図ります。
 
4 広域的配慮
基本構想は、近隣町村の発展動向や島尻地域及び南部広域市町村圏の振興方向など広域的配慮を行って策定します。    

つづく

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大分類 テキスト
資料コード 008442
内容コード G000000587-0002
資料群 旧佐敷町(佐敷村)広報
資料グループ 広報さしき 第152号(1990年3月)
ページ 2-4
年代区分 1990年代
キーワード 広報
場所 佐敷
発行年月日 1990/03/10
公開日 2023/11/27