なんじょうデジタルアーカイブ Nanjo Digital Archives

好評!!  時宜を得た編集・内容。『佐敷町史 三 自然』

頒価 町内3,000円  町外4,000円

自然学習のよい参考書沖縄タイムス書評
【沖縄タイムス 7月4日夕刊】
一読して深い感銘を受けた。
町域の自然を可能な限り広く忠実に記録して現況を明らかにし、それを、年の経過にともなって変遷していく自然を知る尺度にすることが意図されている。まことに有意義な事業で、強い共感を覚える。
自然の貴重さは、景勝地や特産生物の有無だけで判断すべきでなく、どこの地域の自然であっても、価値のある貴重な存在であることを教示している。特定生物の解説だけでなく、地域のすべての生物(化石種を含む)について平等な取り扱いをしている。
内容は、図・写真・表などを多用して、すべての町民が理解できるよう、細かい心づかいがこめられている。児童・生徒の自然学習や親子での野外学習などのよい手引きとなるばかりでなく、町外の児童・生徒や父兄にとっても、自然学習のよい参考書である。また、専門家にとっても貴重な資料となるであろう。
戦禍でかく乱されたとはいえ、佐敷町にも、ほかにはみられない特色ある自然のあることを教えている。
動植物の和名とともに、方言名が付記されている。方言での呼び名は、古くから地域住民によって伝承されてきているから、身近な生物に対する理解と親しみを増進するのに、大いに役立つであろう。
自然のいろいろの分野についての熱心な調査を重ね、そのとき採集された標本は、大切に佐敷町に保管されているという。
これらの標本は、将来、展示保管施設が設けられ、自然保護精神の反映する政治、行政、教育、日常生活に活用されることが期待される。
 (池原貞雄・琉球大学名誉教授)

学術調査を報告書に琉球新報書評
【琉球新報 7月10日夕刊】
『佐敷町史・Ⅲ自然』を手に取り驚いた。これが町史なのだろうか。私の知る町史の概念とはあまりにもかけ離れた編集内容である。
頁をめくり、佐敷町の地形、地質、地上植物、陸棲動物、水棲動物、調査日誌と項を改めてゆくにつれて、これは町史ではなく一大論文集であることに気がついた。
1984年10月から1988年4月までの4年間の歳月をかけて地元の研究者を中心に、多くの専門家に依嘱して現地調査をした結果の学術調査報告書である。
各項目ごとに調査方法を明確にし、参考文献をあげ、論文としての体裁をとりながら、写真を多く利用し、地形や地質の示準地点、植物の自生地や動物の自息確認地などの重要事項については、地元の人でなければ知らない固有の地域名まで具体的に示されている。
生きた佐敷町の自然誌である。
 然(さ)もありなん、 「町民による。町民のための、町史をつくる」
という編集方針である。
私もかつて佐敷町内の御嶽林の調査をした経験があり、それなりに町域の自然は理解しているつもりであった。しかし、今回の報告書で466種もの自生植物があり、中にはオキナワヒメウツギ、ユウコクラン、ヤエヤマスズコウジュなど生物地理学上興味ある種の分布を知り、今1度現存植生図を手掛かりに自然探訪を試みたいと思っている。
いずれにしても、この現存植生図はこれからの佐敷町の土地利用計画への最も貴重な指針を提供してくれるものと思っている。
今ひとつ感心させられたものに小、中、高校生のために、特に編集したガイドブックである。教育の原点は地域の自然を具体的に理解することから始まる。このガイドブックは、特にそのために編集されている。地学の散歩道、生物の散歩道など、町内のどこに行けば、何が学習できるか一目瞭然である。
しかも図を多く取り入れ、用語の解説もされている理科学習の副読本であり、親子の町内自然学習の手引書である。
改めて執筆者をはじめ、このような素晴らしい編集を計画された町当局に敬意を表するとともに、この自然編が町民に愛用され、豊かな佐敷町の自然が次代へ継承されることを祈念し、読後感としたい。     (新納義馬・琉大教授)

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大分類 テキスト
資料コード 008442
内容コード G000000580-0032
資料群 旧佐敷町(佐敷村)広報
資料グループ 広報さしき 第145号(1989年8月)
ページ 12
年代区分 1980年代
キーワード 広報
場所 佐敷
発行年月日 1989/08/10
公開日 2023/11/26