何処(マー)が杭(クイ)やら分(ワカ)らん
日本は本州、四国、九州、北海道の四陸地と周辺無数の有人、無人島から成っている。南北に細長い島国である。戦後急成長して今日では経済的にも世界のトップ級にのし上がって、世界の注目を集めている。
戦後九州と本州間に関門海底トンネルが開通し、また本年三月に本州の青森県の津軽半島の今別町浜名と北海道の松前半島知内町湯の里間に青森と北海道を結ぶ青函トンネルが貫通。翌4月には瀬戸大橋の開通と、四島間が連結して現今では数キロの海上も鉄矯でひとまたぎ、島国ではなくなった。
これまで暴風や停電の際には、あらかじめ定位置に置いていた電灯やローソクを手さぐりで探すのに、「何処が杭やら分らん」とつい方言が出てくる。
現在は沖縄の小さな離島まで架橋ブームだ。大昔の沖縄では川には丸太を渡して橋にしていたとか。
川幅が大きいと、丸太では届かないので、大きな丸太を歩幅間隔に川底に打ち込み、その丸太の頭部をピョン、ピョンと飛び渡っていたとのこと。時には大雨などで水かさが増し、杭の頭部が水没して分らなくるのを「何処が杭やら分らん」との語源だと言われていると話してやったら、孫たちから、おじいさんは昔のことを何でも知っていると持ち上げられて年甲斐もなく、 照れくさいが、満更でもなかった。
現在は昔からの沖縄言葉が、死語になりつつある。沖縄の黄金言葉(クガニクトバ)、方言がなくなるかと思えば、人生のたそがれ時に 近づきつつある老骨には、何かと淋しい秋風が吹き去っていくような、今日この頃ではある。 (平良亀順)