佐敷町婦人連合会手登根支部
神谷敏子
ある日、流し台に向かって洗い物をしながらふと耳を傾けますと、ある中学校での出来事がラジオから流れていました。授業の始まる前に数人でトイレやその付近に隠れて、ジュースやコーラ等の清涼飲料水やお菓子などを食べている生徒を、よく見受けるとのことでした。
それを聞いて私は、先日読んだある新聞の記事を思い出しました。その新聞には、次のようなことが書いてありました。
少年院に入る子供たちの実態調査でした。それによると、ほとんどの子供たちが朝食抜きで、昼食は給食と清涼飲料水などで済ませ、タ食はラーメンとかコロッケとかを買い求め、何と、一日に五、六本の清涼飲料水を飲んでいたということでした。
驚いたことに、ほとんどの子供が自分の家で食事をとっていないとのことです。甘い物を飲みすぎてカルシュウム不足を来し、栄養のバランスが崩れて無気力、情緒不安定となって、登校拒否、家庭内暴力などさまざまな障害が起こり、とうとう少年院に入ることになったということでした。
母親がいるのであれば、せめて食事だけでもきちんと食べさせてあげてほしい、そして、最も大切な、親としての愛情に欠けていると思います。同じ子を持つ親として、そのニュースに心が痛み、私はしばらく考え込んでしまいました。
今、私は子育ての真最中です。中学三年生を頭に、小学六年生、小学四年生の男の子がいます。その子供たちが素直に、そして他人に迷惑をかけない、世の中に役に立つ人になってほしいと願っています。そのために、自分たちの家は自分で守り、母親である自分自身が常に明るい心を持ち、すべてのことに感謝の気持ちで接することに心がけ、子供たちのためにも役に立つ母親になるため、私なりに努力を続けているつもりです。
家族の幸せは、健全な食生活にあると信じています。その手始めとして、我が家では小さな家庭菜園を営むことにしました。季節の野菜や、果物を作ります。自分で作った野菜は、農薬は使っておりませんので安心して食べられます。併せて、主人は釣りが好きですので、休日には釣りに出かけ、たくさん釣ってきます。
野菜も魚も新鮮ですので、味もいいし栄養も豊富で、たくさんとれたときなどは、近所の方や友人にも分けて上げて、とても喜ばれています。ほとんど手作り料理ですが、主人や子供たちも「おいしい」と、喜んで食べてくれます。
子供たちは、家庭菜園の手伝いをよくしてくれます。じゃがいもの植え付け時期になると、長男がうねを掘り、二男、三男はじゃがいもを切り、手分けして植えつけると、子供たちの仕事に対する意欲も出てきます。三カ月後には、また子供たちと一緒に収穫し、保存して、半年ぐらいも食べられます。子供たちは、自分で育て収穫した野菜が食卓にのると、好き嫌いがなく大事にていねいに食べてくれます。自分で自分のことを考え、実践しているうちに、子供たちは自然に物に感謝する心が育ってまいります。
また、そればかりではありません。調理も後片づけも、子供たちが手伝ってくれます。私は昨年の8月に、一力月間のブラジル旅行をしましたが、その間も子供たちが手分けして家事を引き受け、何の事故もなく、立派に留守をしてくれました。私は、自分のことは自分でやれる子供にしたいと思っています。自分の命を大事にする子は他人の生命も大切にしてくれると、信じているからです。
そういうわけで、我が家は親子の会話が絶えません。何しろ共通の仕事や語らいがありますから、いつも明るい話題がいっぱいです。その時に、私は本当の幸せを感じるのです。
一家の大黒柱は主人ですが、それを支え家庭を守るのは、やはり母親であると思います。その中でも最も大切な仕事は、正しい食生活を家族にさせることだと思っています。
私はいま、町から委嘱されまして保健推進員と栄養改善推進員をやっております。私の住んでいる字では、四人の推進員がおりますので、他の推進員と協力して去年は四回料理講習会を持ちました。一回に十名程度の婦人に呼びかけ、とても楽しい雰囲気で持つことができました。
その実践活動の中で、一人暮らしのお年寄りを招き、テーブルを囲んで、参加した皆さんとともに昼食をとってもらって、大変よかったと喜ばれました。その中でも、料理講習の主旨と正しい食生活の必要性を説明しました。
家庭での健康づくりは、人間生活の基盤であり、また、健全な子孫の育成に大きな影響を及ぼすものであるとともに、これは私たち台所を預かる婦人の大切な務めであると話し合ってきました。参加者の中から、「おいしかった」「うす味だった」「今後とも続けてほしい」とか、率直な意見を頂き、本当によかったなと思いました
私が、栄養教室、栄養改善教室で学んだことは、塩分を控えうす味に慣れたこと、化学調味料は使わなくなったこと、なるべく自然の味、手作りで一日三十種類の食品を目標とすることなどでした。
食生活は家庭円満の要(かなめ)であり、またバランスのとれた健康づくりは、食生活の改善からともいわれています。家族みんなが明るい明日を迎えるためには、まず、健康が大切です。「物事に感謝の気持ちがわき出たら、幸福の扉が開かれる」「夫婦和合の家庭が良い子供の育っていく土台である」などといわれますが、子供たちの心の動き、体の成長、夫婦円満、家庭団らん、自分自身の幸福感、すべて自分の心ひとつによって作られるものです。女性にとってこれ以上の生きがいはないと思っています。人間として社会、家庭を作っている以上、一日一日を大事に過ごすことは最も大切なことだと思います。
これからも私は、一日一日を大事にしながらもっと自分を見つめ、より良い家庭、より良い社会づくりのために、地域の方々と共に頑張っていきたいと考えています。