戦前、島尻郡の田舎で、ちょっとした夜の盛り場といったら、山原船員相手の与那原、
具志頭村港川は粟石運搬人の荷馬車引きの集散地、年数回の大東島航路船の発着地である字津波古の県道沿い筋(現在の国道)。
この三カ所にはおのおの数軒のサカナヤー(料亭)があった。
これらのサカナヤーに居る女性には、数日の間に本人が知らぬ間に傑作なニックネームがつけられていた。
次にあげるのはその傑作ニックネームの数々。「葉ブタン小」はキャベツの意で背丈が
低く丸太りの娘。「アブイ皮スビチャー」は乗馬鞍のアブミの当る所に垂れ下がっている
座布団大の■を引きずるほどの短尺娘の意味。
「ガザンウコー」、これは田舎出身の娘で蚊取線香を買いに走らせたら、マチヤ小(売店)のハーメーに「ガザンウコーヤビラ」といったのがその由来。
そのほかに「ハイコラコラー」「お観音」。「蝿取器」はおでこが当時のガラス製の蝿取器をさかさにしたようであったから。ガッパイは「若シブイ(冬瓜)小」と。和装であれば
「奥さんチルー」、「アジンダ食え」等々、数えあげたらキリがない。
この文を書いていると、今を去ること六十年前に時間の歯車が逆転し、走馬燈のように
眼前に各人の顔、姿が次々と現われてくる。
このニックネームの名付け人は当時のウーマク青年(現在は老人クラブ会員におとなしく収まって居られる楽隠居)の普天間善五朗さん、宮城抑一さん、福田護盛さんの皆さんかと思う。放言多謝。(平良亀順)