なんじょうデジタルアーカイブ Nanjo Digital Archives

医療に携わる婦人として 佐敷町婦人連合会佐敷支部 平井洋子

第15回佐敷町婦人の主張大会 最優秀賞

私が佐敷の婦人会に入会してから十六年、何人かの仲間をガンという病気で失いました。子育ての真只中の人たちです。
私達は、今、自分が病いで倒れた時の家庭の状態を想像することがあるでしょうか。母親を失った寂しい家庭を思い描くことが出来るでしょうか。私は彼女たちのことを聞いた時、そして思い出す時、いつの日か婦人会の仲間に医療人の立場から、検診の大切さを訴えたいと思いました。私は、臨床検査技師という職業に携わっています。
医療という仕事場にあって、ガンという病気がみつかった時、一番の願いは、それが早期の発見であって欲しいということです。手おくれの発見は苦しいものです。どんな薬が効くか、どんな治療が効果的かと奇跡を信じつつ送る闘病生活の苦しみは想像を絶します。
ガンの発見も検査もどんどん進んでいる最近です。でも残念ながら効果的な治療法、予防法はまだありません。ガンによる死亡率を少なくするには、早期の発見、早期の治療しかありません。それには私達が検診に関心を持ち、積極的に受診することなのです。
特に、子宮ガン、乳ガンは私達婦人特有の病気ですし、また、早期発見によって最も治りやすいガンだということも知って欲しいのです。
二十年前のことです。離島の一婦人は島での検査を何らかの理由で受けなかったところ、半年後の検診を待たない間に手おくれになってしまいました。その方が、自分の施設に足を引きずりながら入って来た時のかわいそうな姿は、いまだに忘れることができません。
また、ある農家の主婦は集団検診の結果が要精密検査と出ました。製糖期の忙しさを理由に精密検査を断わろうとしたところ、「製糖期が終った時では、あなたの生命は保証できませんよ」と医師にいわれ、彼女は半信半疑のまま精密検査を受けました。子宮ガンが発見され、手術をし、一命をとりとめました。集団検診の成功例の一つだと思います。
当時は沖縄県の子宮ガン検診が盛んに行なわれだした頃で、検診の大切さ、早期発見の大切さをたくさんの例からしみじみと感じさせられました。
つい最近では、県下のある病院で乳房に1センチばかりのしこりがあることを自分で気付き、検診を受け乳ガンと診断され、手術をした患者さんがあったそうです。すばらしい自己検診ではありませんか。この人の乳ガンは完全に治せた、と病院の先生方は思っています。
私達もこの人のように、自分の体は自分自身で守っていくのだという姿勢を皆で持とうではありませんか。
検診には自己検診があり、集団検診があり、また、病院検診があります。多くの婦人が二十代から三十代にかけては出産の時期ですので、病院検診の機会があります。三十代、四十代になりますと、病院へ行く機会が少なくなります。
その頃から、私達は自己検診や集団検診に目を向けていかなければなりません。体調に少しでも不審な点があれば、すぐに検診を受けることです。特に婦人の誰もが経験する閉経期の頃には、年1回から2回の検診を絶対に受けてもらいたいというのが、検査をする側からの願いです。
検診で要精密検査をいわれる年齢は、40歳以上が多いのです。子育てに一段落し、ホッとひと息をつき自分の生き方を見つめ直す頃にそんな時期がやって来ます。
昭和40年頃から、沖縄県の子宮ガン検診の取組みがなされ、受診率は全国平均をはるかに上まわります。
その成果は、50年頃から着実に実われているにもかかわらず、子宮ガンの死亡率は、いまだ全国でワースト5の位置にあります。
その原因はどこにあるのでしょうか。私達婦人が真剣に考えねばならない問題だと思います。
検診も受ける人だけがいつも受けて、受けない人はなかなか受けません。受診がなければ、早期の発見もないのです。半年のためらいが、早期のガンから進行ガンヘ移ってしまいます。
以前に比べて医療体制には恵まれています。老人保健法に伴い、昭和59年度から子宮頚ガン、胃ガンの集団検診が、市町村の事業として行なわれるようになりました。更に患者の増加傾向に伴い、乳ガン、子宮体ガン、肺ガンの検診が62年度から加わりました。
ちなみに佐敷町の子宮ガン検診の受診率は、ここ3年、24%から26%です。61年度の沖縄県が20%、島尻郡の平均値が36%です。受診率が30%にならないと、検診の成果が死亡率の低下につながらないと専門の先生はいっております。
受診率が上がるということは、新しい患者の発見につながります。早期発見で一人でも命びろいすることができれば、検診の意義は大きいのです。検診は、市町村が頑張って取組んでも、私達住民の意識そのものが変ってゆかない限り良い成果は得られないと思います。
たしかに子宮ガン、乳ガンの集団検診は、体調の不都合があったり、また、女性としての恥しさもあってためらったりする問題があります。
でも、婦人会の多くの仲間が皆で誘い合って参加することが出来れば、そのためらいも解消されるのではないでしょうか。 家庭の事情や仕事の忙しさで、日頃の婦人会活動になかなか参加出来ない仲間もいます。そういう人達への呼びかけと同時に、多くの仲間が検診に目を向ける雰囲気作りも、婦人会活動に必要なのではないでしょうか。
自分自身の健康は自分で守るという私達婦人の姿勢が、家族の健康への気配りともなり、家庭の幸せにつながるのではないでしょうか。
あたたかい母の愛を失った子供たち、そして、人生の友である妻を失いとまどう夫、そんな寂しい家庭を作らないために、今一度、検診の大切さを皆で語り合いましよう。
皆で、年1回から2回の検診に参加しようではありませんか。

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大分類 テキスト
資料コード 008440
内容コード G000000550-0012
資料群 旧佐敷町(佐敷村)広報
資料グループ 広報さしき 第120号(1987年8月)
ページ 7
年代区分 1980年代
キーワード 広報
場所 佐敷
発行年月日 1987/08/10
公開日 2023/11/17