なんじょうデジタルアーカイブ Nanjo Digital Archives

くしゆっきい32 田舎者の初旅

昭和の初期、沖縄は蘇鉄地獄といわれていた。当時、老若男女が関西(大阪方面)をはじめ本土各地の紡績工場などに、女工、男工の職を求めて出稼ぎに行っていた。
同郷の友だち同士4人、山出しの田舎者の青年が手提げ行季(バスケット)をひっ提げて大阪に初旅に出た。
大阪に着いた翌日の夜、心うきうき、繁華街を物珍しげに、沖縄スタイルの膝までの短い着物を着てアマ見い、クマ見いし目をキョロキョロ歩いていたら、不審尋問中のサツ(警察)のダンナと出くわした。
「君達は何処の者か」とまず問われた。「ハイ、私達は昨日沖縄から来たデス」と。「君達の名前は?」との問いには、1人ひとり「私ですか、外間です」「私は、内間です」「私、上間です」「つぎ私ですか、ハイ仲間です」と答えた。いい終るやいなや、「君達4人仲間(友だち)ということは分るが、名前を聞いているんだ」と警察官。
「だから私、仲間ですといったデス」「君達は本官をからかっているのか」。とうとう本署に連行され、ブタ箱で一夜を明かすハメになったとか。
この4人、後日揃って汽車の旅に出た。長蛇の列に並びイライラ汽車を待っていたら、前によぼよぼの老婆がいる。方言で「ヤナハーメーグヮー、早ーク、前ーンカイ、チカン歩ッケー」と悪たれをついた。この老婆、シワクチャの仏頂面で振り向いて「イイ、チカン歩ッチュサ」とにらみつけた。
4人は目を白黒、ここにも沖縄の先輩がいた。世の中は広いようで広くなかった。
(愛良武勇)

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大分類 テキスト
資料コード 008439
内容コード G000000538-0012
資料群 旧佐敷町(佐敷村)広報
資料グループ 広報さしき 第112号(1986年12月)
ページ 5
年代区分 1980年代
キーワード 広報
場所 佐敷
発行年月日 1986/12/10
公開日 2023/11/17