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まちづくり100日シンポジウムより④ 輝く緑 あふれる自然  「町全域を自然観察園に」

知念盛俊  佐敷町史編集委員
佐敷町の町域は、地形的に非常に変化に富んでいます。平地は斜面のクチャが風化したジャーガルで、このジャーガルは本当に畑としては世界で五指にはいるぐらいの良い土地だといわれています。
水はけが悪いということを除けば肥沃な土壌です。産業に大いに役立って、先祖代々、我々を栄えさせてきた大切な土壌です。
小谷、新里の上は、ご存知のようにアカンチャーになっております。島尻マージであるわけです。
調査の結果、ここには国頭だとかあるいは中頭あたりにあるべき植物が自生しております。モーバンシルー(テンニンカ)だとかあるいはギーマ、このようなものがはえています。
崖下は島尻石灰岩地の植生をよくあらわすような樹種がみられます。このような非常に狭い範囲の所にもかかわらず、我々の調査によりますと1300種の植物があり、その8割ぐらいは小谷、新里の丘陵地帯にはえています。これらは自生しているものです。
このように、コンパクトな中で多くの植生をみることができるということは、佐敷町にとってものすごい財産ではないかと思うわけです。それだけに大切にしていかなければならないと強く訴えたい気持ちです。
首里の末吉森がありますが、小谷、新里のそれは比較にならないぐらい自然植生に近いのです。すなわち、もとの沖縄、人間が荒さなかったころの沖縄の植生がみられるわけなんです。
戦争や戦後に荒されてはおりますが、そういうような自然がみられます。戦後40年ぐらいしかたっていませんから、まだ完全に安定した森林とはいえませんが、それに近いとはいえます。
この小谷や新里に行けばよくわかりますが、ただ木がはえていれば森林というのではないんです。
例えば、森林はある面積がないと成立しない。その一番はしはススキがはえていたり、ヤマカズラにつつまれたりしているとか…。これらを取り払ってしまうと、中の植生が変ってしまいます。これらがつつんでいることによって、中の温度、湿度だとか、あるいは風の具合だとか全部を保っているわけです。
中城湾の最奥に位置し、霧も発生し、その水蒸気が森林の中にしみこんで豊かな植生を生かしてくれているんです。崖っぷちは、一年あまり調査して歩き、方形区を切り種樹を数えたりしましたが、実に植生豊かでほれぼれとしました。佐敷町の自然は、コンパクトながらセットされた形で、しかも種類数が非常に豊富であることがわかりました。
私もあちらこちら尖閣列島などかたつむりを採集して歩いていますが、佐敷町のような非常にコンパクトな形で、立派な森林が残っている所は初めてみました。
これは真剣に保護することを考えなければなりません。生産、産業に生かしていくという面での自然を考える必要もありますが、私は、教育の中にこういう森林を生かしてはどうかと考えています。(つづく)

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大分類 テキスト
資料コード 008439
内容コード G000000537-0015
資料群 旧佐敷町(佐敷村)広報
資料グループ 広報さしき 第111号(1986年11月)
ページ 10
年代区分 1980年代
キーワード 広報
場所 佐敷
発行年月日 1986/11/10
公開日 2023/11/17