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まちづくり100日シンポジウムより③ 輝く緑 あふれる自然 「町全域を自然観察園に」

知念盛俊 佐敷町史編集委員

私は佐敷町史編集委員をしております。 『町史・自然篇』作成のため、約1年半前より町内の自然調査活動を続けています。
自然調査は、今後1年半ほど続けられることになっていますが、これまで、森林、河川、海岸、洞窟の調査、そこにおける土壌動物の調査、さらに夜間、山中に電灯をつけ集まってくる昆虫だとかを季節的に調査をしております。
これらの調査結果の整理はまだ済んでおりませんが、自然調査活動を通して本町における“緑”ということについてお話をしたいと考えております。
まずは自然概観を述べてみたいと思います。佐敷町は、よく屏風に囲まれていると表現され、風光明媚な土地だといわれています。
緑も豊かであるともいわれ、非常に簡単にみると確かに緑が多いように見えますが、実際は町の面積の約3パーセント足らずしか森林植生はありません。
森林植生とは、樹木のはえているところで、草地などは入りません。そうした中で、原植生に近い森林というのは、小谷、新里の上や、大里村との境界になるダム近くの崖などに見られます。字佐敷から伊原の上の崖っぷちにも面積は小さいですが残っています。
本町の森林植生の半分は小谷に残っているといえます。これらを見ますと、簡単にみれば非常に緑が多いようですが、実際は非常に少ないといえます。しかしながら調査を通して、その少ない森林植生は非常に質が高いものであることがわかりました。
どういう意味で質が高いかといいますと、植生や樹種というものだけでなく、地形や地質といったものを含めあらゆる面からすばらしいもの、白然を観ることができます。
屏風に例えられる地形はスクナ森から大里城跡のふもとまで、台地はつきしろを中心としたものがあります。地質のちがいもみられます。小谷、新里の上には琉球石灰岩がのっていますが、字佐敷から東側にはほとんどのっておりません。この東側地域の斜面は、真北に向いており樹木の生育が悪い所です。これは立地条件として悪いわけです。さらに、1959年に地すべりした新里の斜面域、ここは凝灰岩地域でいわゆるクチャ。このクチャの中から化石がでてきます。チカヌハナ、伊原の上ですがここは知念砂岩、ニービの所でここにも化石がでてきます。化石は貝が主ですが、調査で集めて確認したもので130種あります。
これらの化石は、沖縄ができる前の話で、まだ海水面に沈んでいた頃のものです。大体800メートルぐらいの深海のものや、あるいはもっと寒かった気候の頃の貝がでてきます。
火山灰の地層もありますし、フナクブ一帯には石灰岩の洞窟もあります。このようなことがらと合わせて考えてきますと、小谷、新里の価値というのは非常に高いものが認められます。  (つづく)

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大分類 テキスト
資料コード 008439
内容コード G000000536-0022
資料群 旧佐敷町(佐敷村)広報
資料グループ 広報さしき 第110号(1986年10月)
ページ 11
年代区分 1980年代
キーワード 広報
場所 佐敷
発行年月日 1986/10/10
公開日 2023/11/17