農業後継者づくりは、最低でも10年はかかります。後継者を育てると決意なさって、そのレールを敷き、その上を後継者が自分で走り、農業で生計を営むようになるまでには10年間でも少ないぐらいです。ですから私は、後継者づくりは健康の許す若いうちに始めなければだめだと思っています。
しかし、せっかく後継者は10年かけてつくるという決意はされたものの、農業を営む上での基盤である土地の方がおろそかになっている、基盤の整備がなされていないということがあります。
1人前の後継者を願っているにもかかわらず、これでは後継者づくりも中途半端になってしまいます。子どもを教育し、農業後継者として後押ししているにもかかわらず、石の上に立たせているようなものだと私は思います。
300坪ある農家でも、3000坪ある農家でも、みんな農地というのは宝なんです。宝というものはピカピカ磨かれてはじめてその価値もでます。こういう宝物を、子や孫に譲るためには、基盤整備をして立派な土地としなければなりません。
これからの農業は、親の代で半分基礎をつくって、その基礎をもとにさらに後継者が地固めをしていくという長期にわたる計画性がなければならないと考えます。
そのためには、農業基盤の整備はぜひとも実現しなければならないでしょう。これには、行政等の力も借りなければなりませんが、なりよりも、皆さま方の農地をいかにいい農地として、子や孫に譲っていくかということ、さらにそのことを頭に入れた後継者づくりに専念することが大事ではないかと思います。
私は、40年近く農業と取組んできましたが、今日ほど恵まれ、また、厳しい時期はないのではないかと感じています。
本町においても、基盤整備、農地保全、といろんな事業が実施されています。津波古地区では完了に近い状態ですし、浜崎地区でも基盤整備がなされることになっています。
これらの事業の実施にあたっては、減歩率とか、自己負担とかいった諸条件がともないます。いろいろな条件がつくわけですが、その面だけでの判断では、農業の将来の選択を誤ることになるのではないかと思っています。
長い眼でみて、子や孫、農業後継者にりっぱな財産を譲っていくんだという気持ちで基盤整備に同意なさることが必要ではないかと考えています。りっぱに整備された農地をつくり、りっぱな農業後継者を育てていくのが、私たちの役目ではないかと思います。
佐敷町のこれからの農業のために、皆さんと共に勉強し、また、後継者づくりにも励んで行きたいと思います。
ご清聴ありがとうございました。
【次回は、シンポジウム第4部・ 「輝く緑あふれる自然」におけるパネルディスカッションよりの抜粋をお届けします】