1948年2月8日に行なわれた佐敷村議会議員選挙は、女性が初めて投票権を行使した画期的な選挙であった。
当日、投票所前で大声を張り上げて演説をしている人がいた。近づいて見るとホロ酔い加減の西村寅夫さん(新里区長)である。婦人参政権実現! 大城つる、と大書した紙をひろげ、投票に来た人人に「婦人参政権が実現しました。大城つるさんによろしくお願いします」と訴えているのである。
ところが、大城つるさん(後、沖婦連会長)は立候補していないのだ。どうしたことかといぶかる人が多かったが、実はこれ、西村さんの反骨精神のショー。
婦人参政権が実現したので、大城さんは立候補の準備を始めた。
これを知って驚いたのは西村さんである。字新里から平川先次郎、与那嶺幸一、平川先文の3氏が立候補を予定していたので、新里に居住する大城さんが立候補して新里の票を分けられ、もし3人のうち誰かが落選でもしたら大へんだというので、意を次して立候補辞退を申し入れたのである。
結局、大城さんは立候補を取り止めたが、余程くやしかったのか「私は新里区長に反対されて立候補できなかった」と吹聴した。苦しい立場に立たされた西村さんは投票日にアルコールの勢いを借りてユーモアたっぷりに大城さんの推薦演説をしたのである。
ところでこの選挙では、教員、公務員も現職のまま立候補を認められていたので当山昌栄先生、沖縄民政府職員の浜元栄喜、仲田元一氏が当選、また弱冠28歳の瀬底正俊氏も当選する話題の多い選挙であった。(M生)