佐敷町青少年健全育成協議会の定期総会が、5月2日午後6時から老人福祉センターで開かれました。この日は、定期総会で予算や事業計画などが審議されたあと、同会の学力向上、生活向上の両推進委員会の実践活動報告がなされました。総会であいさつに立った山城時正会長は、「青少協もこれまでの単に夜間補導やスポーツ行事を消化していくという状況を脱却して、学校現場、家庭・地域が一体となり子どもの健全な育成に取組んでいけるような体制づくりに努めました。その結果昨年度は、学校部会の学力向上推進委員会や生活指導推進委員会が諸調査を行ない成果をあげています。今後は、この調査をもとに、更に活動を展開したい」と述べました。
今年度は、地域環境調査とその対策、学力向上対策事業などを実施していくことにしています。
総会後の実践活動報告会では、佐敷小の渡真利春子教頭、佐敷中の城間正栄教頭などが報告を行ないました。小学校では、3年、5年の両学年を対象に知能、学力、生活の実態調査を行ないその結果が報告されました。小学生は、3年生の知能は、全国平均の発達水準に達しているものの5年生は下まわり、学力は両学年とも全国平均より下まわることが指摘されていました。中学生も知能は、全国平均に近いものの、その知能に見合うだけの学力が身につい ないという厳しい結果が出ています。
この要因は、健康、友人関係などは良いものの父子、母子関係は悪いという調査結果にあるのではないかと報告していました。
この結果をもとにした青少協の活動に大きな期待が寄せられた総会でした。
町の将来を支える活動です 山城時正会長
本町の青少年健全育成協議会は町民の皆さん、各校の先生方、それにPTAの皆さん方のご協力と寸暇をさいてのご協力により、これまで着実な成果をあげてまいりました。
青少協は、年度ごとに活動目標を定め、また、研究課題等を決め実態調査をはじめ諸活動を精力的におし進めております。このような活動を進める一方で、地域住民一体となった夜間補導、子ども会の育成、各スポーツ大会の開催なども実施しております。
次代を担う子どもたちのためにと町青少協にご尽力くださる町民の皆さまには頭の下がる思いがいたします。今後とも、青少年の成長のためにお力を借していただきたいと思います。
60年度は、学力向上推進委員の皆さんが大いに活躍され、本日その成果も発表なされるとのことです。心身両面からの健全育成をはかるために、大へんに心をくだき、時間をさいていただきました、ほんとうにありがとうございました。このような皆さま方のご協力は、将来にわたっての大きな成果となってまいります。
本町の青少協は、家庭、地域、学校がスクラムを組み、諸活動を進めており、いよいよ充実し、ひとつひとつの活動が地についた実りあるものとなっております。皆さまの活動は、将来の佐敷を支えるものです。今後益々の、ご尽力をお願い申し上げます。
「調査」を生きた資料に 宮城繁教育長
佐敷町青少年健全育成協議会に学力向上推進委員会が設置され、義務教育である町立小・中3校の学力向上のための基礎調査が、昭和60年度に行なわれました。
この調査は、本町では初めての試みであり、児童生徒の知能・学力・生活実態を知る上で大へん貴重なものです。今後は、如何にこの資料を生かし学力を向上させるかが課題であり、また、役立つものとして期待もされております。
本町の学校教育施設は、完全とまではいかないものの概ね整備されています。器ができ上がり、それに相応する教育内容をというときに、この学力向上対策事業が推進されているということは、大へん意義深く、時宜を得ています。
臨教審の答申の中で、21世紀のための教育目標が3つ掲げられています。①ひろい心とゆたかな創造力 ②自主・自律の精神 ③世界の中の日本人、がそれです。
本町の学力向上推進事業も、この3つの目標に向けて進めていきたいと考えております。
昨今、最も憂慮されているのが教育荒廃の要因といわれている陰湿ないじめ、校内暴力、青少年非行です。これは、子どもの心の荒廃の現れであり、子どもの人格を崩壊させる危険があります。子ども達の心の荒廃をもたらした原因と責任は、大人社会にあり、私たち大人はこのことを忘れずに対策にあたらなければなりません。本土においては、陰湿ないじめにより多くの尊い子ども達の生命が失なわれています。幸い本町においては、陰湿ないじめ、校内暴力はないものの、いつ発生するか予断を許さず、もし多少なりとも兆候があれば関係者は、連携を密にし対応しなければなりません。
今日の子ども達は、豊かな社会で生まれ育って来たので、逆境の中で育くまれる自立心、自己抑制力、忍耐力、責任感、連帯感、思いやり、感謝、先輩・祖先を敬う心に乏しいといわれております。
青少年問題は、家庭、学校、地域が一体となって取組まなければその成果を期待することはできません。最近、若い青年達がボランティアで少年サッカーチームを結成し、少年達の健全育成に努めております。このようなクラブ活動をふやし少年達全員が1つか2つのクラブに参加できれば少年非行もなくなるのではないでしようか。
最後に、学力向上推進委員会の活躍に期待し、地域および関係者のご協力をお願いいたします。
佐敷町の小学生の生活像 馬天小学校教諭 新垣春雄
青少協の学力向上推進委員会が本町の児童の生活実態を把握するために佐敷小、馬天小の5・6年生441人を対象に調査した結果を報告致します。この調査は去年の10月に実したものです。
調査項目は、学校、家庭における生活面や学習面、情意面等について24項目に亘って調べてみました。それぞれの項目について詳しく報告することは不可能ですので主なもの11項目についての現状と簡単な考察を述べてみたいと思います。
○朝、家族に「あいさつ」しましたかについては、あいさつをする子が54%、しない子が46%である。
あいさつは、人間対話のはじまりである。学校でも奨励すると同時に家庭生活の中でもっと習慣化していくよう努力しなければならない。
O 朝食をとらない子が5%もいる。
共働きの家庭が増え、朝食をちゃんと準備できない家庭も増えつつある。朝食をとらないのは成長ざかりにおいて健康上問題があるので全員がとるようにしむける必要がある。
○ テレビの視聴時間については2時間から3時間というのが45%もいる。20%の子は、3時間以上もテレビを見ており、家庭学習や手伝いはどうなっているか心配である。
○ 毎月の小遣い銭は、そのつどもらう子が半数で500円から1000円が最も多い。中には3000円以上ももらっている子がおり、小遣いのつかい道についても指導する必要がある。
○ 家での仕事(手伝い)については、炊事(195人)掃除(145人)、洗濯(85人)等が多く子守、畑仕事等は少数である。
O いじめについては、8~9%の子に経験がある。その内容を見ると「けとばされたり文句を言われた」が2人、 「人の弱み(悪口)」
を言われたが5人、 「ひやかされた」が2人などである。マスコミで騒がれているような陰湿ないじめではなく、子どもの世界に見られがちなものである。それでも教師は、その実態を把握して適切な指導をしなければならない。
O 喫煙については、タバコを吸った経験のある子が2%いるが、常習になってないか調べる必要がある。そして、早く指導の手をさしのべて根絶させるようしむけなければならない。また、吸ってない子へもタバコの害についての指導が必要である。
○ 金銭せびりについては、7%の子が被害にあっていながら親や教師にそのことを話してない。父母や教師は、問題を早期に察知して大事に至らないうちに指導に当らなければならない。
○ 帰宅後の勉強時間については、全然しないや30分以内の子が50%もいる。1時間以上の子が20%である。上級生としては、もっと勉強時間を増やさないと学習が身につかない。少なくとも1時間以上の家庭学習が必要である。
○将来どんな入になりたいかの質問に対しては、やさしく親切な人間や明るくほがらかな人になりたいと答えた人が47%を占めている。
規則やきまりを守る人や積極的に行動する人と答えた子は3%と少ない。
○ 尊敬する人(父母以外)については、友達(63人)先生(51人)兄姉(26人)の順に多く、政治家や偉人などについて少ない。身近かな人を尊敬する傾向にある。
以上が本町の5・6年生の生活実態の全体像です。この調査結果が、今後の青少年の健全育成に役立てばたいへん幸いです。
佐敷町の児童の知能と学力 佐敷小学校教頭 渡真利春子
町の青少年健全育成協議会の組織の中に、学校部会があります。 その推進事項は、基礎学力の向上、生徒指導、児童生徒の実態調査等ですが、今年度は、まず実態調査することにいたしました。
佐敷小、馬天小、佐敷中は、それぞれ、知能・学力・生活の実態調査を実施し、このほどそのまとめができましたので、ご報告いたします。
1、佐敷町の小学校児童の知能検査のまとめ
左の表でもおわかりのように3年生の知能は全国の年齢相応の発達水準に達しており、特に女子は優れています。5年生は、全国の年齢相応の発達水準よりややおくれています。
特に男子が低いようです。3年生も、5年生も上下の差がなく、平均的な児童が多いです。
2、学力検査のまとめ
3年生も5年生も、学力平均値はいずれも、全国平均値より低く、特に男子が不振のようです。
5年生の算数偏差値の分布は、1と2の段階に58パーセントも集まっていて、5の段階はゼロとなっています。
3、総合学力成就値分布(知能と 学力の関係)
知能からの期待標準プラスマイナスゼロに対し、3年生はマイナス3、5年生はマイナス4・4で、知能から期待される学力に及ばず 学習指導の効果は不振であることがわかりました。
4、学習状態診断テストのまとめ
「学力不振の原因は何か」と調べてみました。
(1) 父子関係、母子関係が放任であること
(2) 帰宅後のすごし方が適切でないこと
(3) 友人関係が非協力的であること
(4) 自己認知で不安定や劣等感があること
(5) 学習習慣や意欲がかんばしくないこと
(6) 対教師との距離が大きいこと
5、今後の取組み
以上の実態を踏まえて、今後は、児童の基礎学力向上を図るために学校現場においては、校内研修、授業研究会、個別指導等あらゆる努力をしていきたいと思います。
町民のあたたかい見守りとご協力をお願いいたします。
「知能・学力・学力向上要因検査」の分析と考察 佐敷中学校教頭 城間正栄
昨年、現在の2年生を対象に実施した知能検査、標準学力検査、学力向上要因検査の結果をもとに知能や学力、学力向上要因の実態を簡単に分析、説明してみたいと思います。
知能検査の結果は、図表1に示した通りですが、結論から先に言いますと分布の状態が全国平均に似て、正常分布の状態に極めて近いということです。知能偏差値の平均も49・1で、この検査から見たかぎりにおいては、本校生徒の知能はほぼ全国の同学年の生徒なみの発達を示しているということが言えると思います。
総合学力(国語、社会、教学、理科を総合した学力)は、図表2で示した通りになっています。学年の平均値が44・8で全国平均の50に比べてマイナス5・2の差が出ています。学力に男女の差はあまり見られませんが、少しだけ女子の方がまさっています。知能はほぼ全国なみの発達をみせていると前述しましたが、図表2のグラフから見ますと本校の生徒はもって生まれた知能に見合うだけの学力が身についてないという厳しい結果がわかります。
原因を追求し、何とかその対策を立てなければならないと考えます。
次に教科ごとの偏差値の平均の比較ですが、国語の平均が45・8、社会科が47・3、数学が42・3、理科が43・2となっています。文科系の教科より理数科の教科に弱いという傾向を見せています。理数系に弱いということは、論理的思考力の弱さや計画的継続的に学習を進めるという面に弱さがあるのではないかと考えられます。
知能、学力検査の説明はこれぐらいにして、次は、学力向上要因診断検査の結果について述べてみます。
この検査は、生徒の日常生活時の気持ちや、勉強をどのような方法で進めているか、学校および家庭環境を本人がどのように受けとめているかなどを調べて、生徒がこれからもっと成績をよくし、楽しく勉強していくためにはどうしたらよいか等について客観的、科学的に検査し、個々の生徒の指導に役立てるために実施するテストです。診断は ①精神的健康度 ②身体的健康度 ③勉強の方法 ④学習意欲 ⑤友人関係 ⑥教師との関係 ⑦家庭環境 ⑧近隣学校環境の8領域にわたってなされます。①②の精神的、身体的健康度の検査結果は、不安傾向や神経質の徴候、身体的健康状態のどの項目をとってみても全国平均より健康度が高く、子供たちは、身心共に明るく健全に育っているということが言えます。③④の学習意欲や方法の項目では、全国平均より全般的に劣っています。授業中に熱心にノートをとらなかったり、テスト前になっても計画的に勉強しなかったりで、学習に対する消極的、受け身的な姿勢が目につきます。⑤⑥項目の対人関係では、とくに目立った傾向はありませんが、学校で遊び友だちがいないと感じている子が、ときどきそう感じるという子と合せて30パーセントいることや、異性の友だちのことを考えてときどき勉強が手につかなくなると答えた生徒が35パーセント近くもいるのが気になるところです。
⑦⑧の生徒を取りまく環境については、概して反応がよく、安定した物的、精神的な環境の中で伸び伸び育っているということが言えそうです。
以上が昨年実施した諸検査の結果の概要ですが、学校では、そのデータをもとに今後の学習指導、生活指導に当っていきたいと考えております。