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まちづくり100日シンポジウム 第4部 輝く緑あふれる自然

4月27日、緑あふれる佐敷上城(つきしろの宮境内)において町制5周年記念「まちづくり100日シンポジウム」の第4部が行なわれました。ソウシジュやアカギの大木の木陰にゴザを敷き「輝く緑あふれる自然」のテーマのもと行なわれたシンポジウムは、緑のシンポにふさわしく爽やかな雰囲気にあふれ、また、緑づくり、緑あふれるまちづくりへの関心の高さをうかがえるものとなっていました。

基調講演 アメニティを考える
県公害衛生研究所長  吉田朝啓
アメニティとは最近よく使われる言葉ですが、居ごこちの良さとか、快適性といった意味があります。私は、緑といったものを考える場合、このアメニティということを忘れてはならないと常々感じています。人間にとって緑の尊さははかり知れないものがあり、自然の尊さを今こそ知るべきかと思います。自然の巧みな仕組み、自然の営みをしっかりと私たちは自覚すべきであると考えています。
その意味で開発のための開発はあってはなりません。自然をそのまま生かしていくまちづくりの方向を目ざさなければなりません。
自然の持つ特性、自然が私たちに与えてくれるものを最大限に生かす工夫が必要です。
最近の人たち、子ども達は、自然の中で感動するということを忘れているように思えてなりません。緑は太古の昔から人間を含む動物をおちつかせ、様々な影響を与えて来ました。若葉の時季に輝く緑を見て誰がたけだけしい心を持つでしょうか。生命の息吹きを知り生命の大切さを緑は私たちに教えてくれます。
街路樹なども多いぐらいふやしても良いのではないかと思っています。アスファルトの道でなく、石の道、岩の道を緑の中でたどる生活が、現代人の様々な”病”をなおしてくれるものと信じています。グリーンの持つ特性を生かし日常生活に大いに取り入れ、そし産業や生活に役立つものにしていく必要をこれからの私たちは考えなければならないと思います。

先駆的な造林事業
県林務課副参事 津波古 充清
佐敷町は本島中南部の緑化推進事業の先駆的存在であり、その意味で多くの注目を集めています。
県では中南部のススキ、ギンネムの原野の森林化を考え、その方向で事業を進めています。佐敷町では、53年から造林事業が進められ着実な成果を上げています。
この事業の惟進にあたって、樹種の選定のための実験植林や「町民憩いの森構想」、さらに、自然環境を生かすための努力が続けられていることは人きく評価できます。
デイゴの造林は、国土保令という意味合いだけでなく、将来の産業林構想などとも組合せて考えられ、進められており、ユニークな森林づくりと感じています。これまで斜面地の利用はほとんどなされていなかったわけですから、今後の造林の進め方によってその価値は2倍にも3倍にもなっていくはずです。中南部の先頭を切って緑化推進と取組む佐敷町には、県当局も着目しており、でき得る限りの援助をしていく考えです。
現在、佐敷の造林事業が行なわれている所は私有地が多く、私権の問題もあり難かしい面もあると思いますが、皆さんがそれぞれの立場で参加していただける造林事業というものを、自然を生かすという大目的を達成する方向で進めていただきたいと思います。

町を自然観察園に
町史編集委員 知念 盛俊
佐敷町の自然は、植物、動物、地形地質的に実にコンパクトにまとまっており、緑の面積は町土の3パーセントとせまいわけですが質の高いものとなっております。
小谷や新里の森林の貴重さは、佐敷町の大きな財産といえます。佐敷町史編集委員会の自然調査においても普通800種ぐらいのところが、約1300種の樹種が確認されました。原植生を示すといってもよく、もともとの自然をまのあたりに見ることができます。
化石にしても130種の貝が出て来ており、佐敷の太古の姿も想像することができます。このようなことから、この自然を教育に取入れ、生かすことをここで提案したいと思います。植物観案や野鳥観察、軽石や化石をみつけ出せる自然観察園として最適の地が佐敷町といえます。
森林には、あまり手を加えない道をつくり、町民が親しめる自然観察園にしていってはどうかと考えています。また、家庭内や畑地などにある植物に方言名を含んだ名札をつけるなどして、町全体を自然観察園にしてはどうかと考えています。自然をできる限りそのままの形で残すために、自然資料館の建設なども考えられます。次代に自然を伝えることが私たちの役目と考えていきます。

緑の郷土づくりを
沖縄地域科学研究所長 真栄城守定
快適な環境を次世代に、町を自然観察園に、将米の産業振興のための造林……といろいろな意見が出されました。確かに緑が私たちに与えるものは大きく、また、深いものがあります。豊かな自然につつまれた郷土を大切にし、生活に、産業に、教育に生かしていくことは大きな意義があります。
佐敷町は、「クリーン・グリーン・グレイシャス運動」も含め、いろいろな世代、団体が、郷土づくりと取組んでいるようで、いつの日かその成果は大きなものとなっていくはずです。地域の活性化と緑づくり、花づくりと結びつけていくことは将来を考える上で大切なことといえます。
町民の皆さんの理解と協力でこのような運動、事業をより一層強力に進め、緑があふれる快適なまちづくりをしていただきたいと思います。

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大分類 テキスト
資料コード 008439
内容コード G000000529-0006
資料群 旧佐敷町(佐敷村)広報
資料グループ 広報さしき 第104号(1986年5月)
ページ 4-5
年代区分 1980年代
キーワード 広報
場所 佐敷
発行年月日 1986/05/10
公開日 2023/11/17