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佐敷町国土利用計画・自然を生かして

佐敷町における国土利用計画がこのほど策定されました。
将来を見つめ、地域の特性、自然を生かした国土利用が、これによってより図られていきます。以下は、その全文です。

1.町土の利用に関する基本構想
(1)町土利用の基本方針
町土は、現在および将来における町民の限られた資源であり、生活および生産を通ずる諸活動の共通の基盤である。その利用にあたっては、公共の福祉を優先させ、自然環境の保全を図りつつ、本町の自然的、社会的、経済的および文化的条件に配意し、健康で文化的な生活環境の確保と町土の均衡ある発展を図ることを基本理念としていかなければならない。さらに、本町の基本構想に配意しつつ、総合的かつ計画的に町土利用を図る必要がある。
本町は、沖縄本島南部に位置し県都那覇市から約16キロの距離にあり、東に知念村、西に大里村・与那原町、南は玉城村に隣接している。町域は、東の須久名森から西の大里城跡へと連なる知念丘陵によって囲まれ、東西に5キロ、南北に2キロ、総面積10,28平方キロと狭い。
人口は、昭和55年の国勢調査人口9、583人、人口密度932人/平方キロと高く、若年層の定住化および通勤の遠距離化が進行するに伴い、人口密度は年々高くなりつつある。
産業構造は、第一次産業17.4パーセント(662人)、第二次産業23.5パーセント(896人)、第三次産業59.1パーセント(2、250人)となっており、第三次産業の占める割合が高い。
本町の地形は、海岸から低地部、斜面部、台地部へと連たんする三つの部分に大別することができる。低地部(4.42平方キロ)は、海抜10メートル以下の平坦地であり、その中を国道331号が走り、生産と生活の場として利用されている。
生活の場として、市街化区域内に津波古・新開、市街化調整区域内に新里のほか十の農村集落が立地している。生産の場として、ジャーガルの肥沃な土壌を有し、さとうきび等の農産物の反当り生産高は、県内で最も高い地域である。
また、地理的に県都那覇市に近いことから、近年、都市近郊型農業への転換も試みられつつある。
斜面部(5.04平方キロ)は、緑の空間部分として、本町の自然環境形成に大きな役割を果している。
しかし、大部分が急傾斜の上、植生に乏しいため、過去において地すべりがたびたび発生し災害をもたらしている。一部の緩やかな斜面および山麓付近は、農用地、宅地、公共施設用地等に利用されてはいるが、土地利用上の制約をかなり厳しく受けている。
台地部(0.82平方キロ)は、標高およそ150メートルの山頂に展開する一連の知念台地内にあり、地形は帯状をなしている。新興住宅地つきしろの街をはじめ自衛隊基地等があり、その周辺を農用地、森林、原野が分布している。また、台地は自然景観にも恵まれ、特に中城湾への眺望はすばらしい。しかし、地形、標高、傾斜の自然条件によって低地部と台地部は遮断されており、地理的距離は近いが生活圏としての距離は非常に遠い。
文化面においては、琉球三山を統一した尚巴志の居城「佐敷上城」をはじめ文化遺産が豊富であり、これを保護し後世に継承しなければならない。しかし、文化遺産をとりまく環境は、大きく変化しつつあることから、その周辺の土地利用については、慎重に行なわなければならない。
町土利用を計画するにあたっては、以上の問題点を踏まえ、恵まれた自然、歴史的風土および貴重な文化遺産を大切にし、人口の増加、都市化の進展、経済的、社会的諸活動の拡大等によって生ずる土地需要については、的確に把握するとともに町土が有限であることから、土地利用転換の不可逆性等に配慮して計画的な調整を図リ、調和のとれた土地利用をめざすものとする。

(2)利用区分別の町土利用の基本方向
町土利用の基本方針を踏まえ、今後における町土の利用区分別の基本方向は次のとおりとする。
ア、農用地
農用地は、今後、都市化の進展等の要因により都市的土地利用への農地転用が、漸次増大することが予想されるが農業経営の安定および食糧の安定供給を図るうえで基礎的資源であることから、その保全、確保に努める必要がある。そのためには、亜熱帯地域という地理的特性と那覇圏域という地域特性を活かした地域農業の確立を目途として、それに必要な農用地の保全と確保を図ることとし、農道、ほ場、かんがい排水施設等農業生産基盤の整備を計画的に推進するとともに、低位利用地等の農業的利用を自然条件に配慮しつつ促進する。また、農用地の高度利用を図るため、ほ場条件の整備と併せて農用地利用率の向上を推進する。
イ、森林
森林については、町土の保全、資源のかん養、保健休養、自然環境の保全および形成等森林の有する多面的機能が、総合的に発揮できるよう必要な森林の確保と整備を図る。
特に本町は、町全域に斜面域を有しており、生活環境の安全確保および地すべり防止の観点から造林等により森林蓄積を拡大することによって森林機能の維持増進に努める。
ウ、原野
 自然環境に恵まれている地域および野生鳥獣の生息地等貴重な自然環境を形成する地域については、極力その保全を図ることとし、その他の原野については、環境の保全に配慮しつつ、可能な限り農用地、宅地等への転換を行ない、その有効利用を図る。
工、水面・河川・水路
水面・河川・水路については、地域における安全性の確保、今後予想される農業用水の需要拡大に対処するための水資源の開発、かんがい排水路施設等の整備に必要な用地の確保を図る。
 なお、その整備にあたっては、自然環境との調和に配慮することとし、水面・河川・水路のもつ多面的機能が十分に発揮できるように努める。
オ、道路
道路のうち一般道路については、町土構造の骨格を形成する基幹的な公共施設として、また、町民の日常生活や生産活動を支える基盤として大きな役割を果たしており、町土の有効利用の促進、産業基盤の強化および生活環境の改善を図るうえで、道路の持つ諸機能は欠くことのできないものである。今後、社会的、経済的情勢を反映して道路交通量の増加は続くものと予想される。このことから、国道、県道および町道が有機的な連けいを保ち、それぞれの道路機能が効率よく発揮するように交通安全施設をはじめとして道路整備を推進することとし、必要な用地の確保を図る。
農道については、自然的、文化的環境の保全および周辺地域の生活環境に十分配慮するものとする。
カ、住宅地
住宅地については、人口の増加、核家族化による世帯数の増加および都市化の進展等の諸要因により、今後、住宅地需要は、一層増大することが予想されるので、他の土地利用との調整を図りながら、健康で快適な居住環境の整備を推進することとし、必要な用地の確保を図る。また、特に市街化区域においては、緑地およびオープンスペースの確保と居住環境の整備を図りつつ、市街地再開発の促進等により土地利用の高度化を図る。
キ、工場用地
工場用地については、公害の防止および緩衝緑地の確保など、周辺土地利用との調和に配慮しつつ、工業生産の増大に必要な用地の確保を図リエ場適地への移転、誘導を促進し工場の環境整備に努める。
ク、事務所・店舗等の宅地
生活水準の向上による町民生活の消費需要の高度化、多様化に対応するため、消費者の安全、利便、快適性を基調とした調和のある消費生活環境の整備を推進することとし、必要な用地の確保を図る。
ケ、公用・公共施設
教育、文化、福祉、スポーツ、レクリェーション等の公用・公共施設等の用地については、今後、文化的生活の向上、人口の増加と相まって増大する行政需要に対応するため、環境の保全と適正な配置に留意し、必要な用地の確保を図る。
コ、沿岸・沿岸海域
本町はおよそ六キロにおよぶ海岸線を有し、町全域が美しい海を育むかのように内海特有な自然景観を形成している。この沿岸海域は、永い歴史を通じて町民生活の維持向上に大きな役割を果してきており、現在においても、水産業、海洋レクリェーション、港湾等に利用されているが、さらに高度かつ多様な開発可能性を大きく残している。
町土の資源の有効利用の観点から、沿岸海域の開発の重要性は年々高まりつつあるが、開発にあたっては沿岸海域の資源として持つ多用な意義を十分認識し、沿岸海域の保全および水産資源の保護を図りながら慎重に行なうものとする。

2.町土の利用目的に応じた区分ごとの規模の目標およびその地域別の概要
(1)町土の利用目的に応じた区分ごとの規模の目標
ア、計画の目標年次は昭和65年とし、基準年次は、昭和55年とする。
イ、町土の利用に関して基礎的な前提となる人口と普通世帯数については、昭和65年においてそれぞれおよそ11、800人、およそ3、000世帯に達するものと想定する。
ウ、町土の利用区分は、農用地、森林、宅地等の地目区分とする。
エ、町土の利用区分ごとの規模の目標については、利用区分別の町土利用の現状と変化についての調査に基づき、将来人口等を前提とし用地原単位等をしんしゃくして、利用区分別に必要な土地面積を予測し、土地利用の実態からみた土地供給の可能性との調整を経て定めるものとする。
オ、町土利用の基本構想に基づく昭和65年の利用区分ごとの規模の目標は、その実態からみた土地供給表のとおりである。
(2)地域別の概要
ア、地域の区分は、町土における自然的、社会的、経済的および文化 的諸条件を勘案し、次の3地域区分とする。
 ○西部地域 津波古、新開、小谷、新里
 人口=5、681人 面積=4.06㎞2  ○中部地域 兼久、佐敷、つきしろの街
 人口=1、931人 面積=2.40㎞2  ○東部地域 手登根、伊原、屋比久、外間、仲伊保、冨祖崎
人口=3、008人 面積=3.82㎢★(人口は、昭和59年末現在) イ、地域別の利用区分ごとの規模の目標を定めるに当っては、土地、自然等の町土資源の有限性を踏まえつつ人口と産業を適正に配置し、地域の振興を図る見地から望ましい人口定住のために必要な基礎条件を整備することによって、均衡ある土地の利用が図られるとともに、環境の保全が図られるよう適性に対処しなければならない。
ウ、計画の目標年次、基準年次、町土の利用区分および利用区分ごとの規模の目標を定める方法は、(1)に準ずるものとする。昭和65年における町土の利用区分ごとの規模の目標の地域別概要は、次のとおりである。
【西部地域】
この地域は、四つの集落で形成され、国道331号沿いの低地部に津波古・新開、県道137号線沿いの山麓付近に小谷・新里(津波古の一部を含む)の集落が立地している。
面積は、町土の37パーセント(3.82平方キロ)を占め、人口は、町人□の54パーセント(約5、700人=59年末現在)が集中している。
津波古・新開地区は、人口集積が高く、商工業、港湾、公園、教育、福祉、医療機関等の都市機能が集積し、陸と海の自然を背景に市街地を形成している。那覇広域都市計画区域における区域区分は市街化区域で、土地利用上、都市開発が可能であり今後も而街地としての発展可能性をもっている。
小谷・新里・津波古の一部地区農業振興地域としての発展が期待され、集落周辺の低地部から穏やかな斜面部に広がる農用地は、その保全改良を図るため近年農業関連事業が推進されてる。
また、斜面部に立地する集落の特徴として、低地部への移動傾向はかなり強いことから宅地需要については、将来における良好な農村集落を形成するため適切に誘導を図る必要がある。この地域の台地は、大規模年金保養基地として脚光を浴び、従来の農業的土地利用から都市的土地利用へと大きく変化しつつある。丘陵性の自然条件恵まれており、保健休養地区として町民の期待は大きい。
以上の自然条件と地域特性を活かした地域づくりのために、自然環境との調和に配慮しつつ農業的土地利用と都市的土地利用の有機的な配分を行ない、都市基盤、農業生産基盤、農村生活環境基盤、水産業施設、公共施設等の整備および保健休養施設関連の基礎条件整備を推進し、合理的な土地利用を図る。
【中部地域】
この地域は、三つの集落で形成され、国道331号沿いの低地部に兼久・佐敷、台地部に新興住宅地つきしろの街の集落が立地している。
面積は、町土の23パーセント(2.40平方キロ)、人口は、町人口の18パーセント(約1、900人=59年末現在)を占め、人口集積は低い、全地城が市街化調整区域であり、今後も人口の大幅な増加はないものとみられる。
兼久・佐敷地区は役場、学校、農協、郵便局等の公用、公共施設が立地し、行政地区としての性格をもっている。しかし低地部の地形が帯状のために地理的条件等の影響を受け、公共施設用地、宅地、農用地が混在している。
将来における行政センターを形成するため、埋立予定地を核に行政機能集積地区と農村集落の調和を基調とする総合的な土地利用計画を推進し、行政サービスの向上に必要な用地の確保を図る。
台地は、住宅地、農用地、自衛隊基地等があり、土地利用は多岐にわたっているが、丘陵性の自然条件に恵まれており広域的な土地利用の可能性も持っている。しかし、低地部と台地部間の連絡道路は、斜面部の地形的条件が厳しくその整備が遅れている。今後、台地における生活環境基盤整備と広域的な土地利用の誘導を図るため、道路等の基礎条件の整備を推進するものとする。
以上の自然条件と地域特性を活かした地域づくりのために、自然環境との調和に配慮しつつ農業的土地利用と都市的土地利用の有機的な配分を行ない、農業生産基盤、農村生活環境基盤、文教施設整備および行政センター関連の基礎条件整備を推進し、合理的な土地利用を図る。
【東部地域】
この地域は、6つの集落によって形成され、国道331号沿いの山手側に手登根・伊原・屋比久、海岸側に外間・仲伊保・冨祖崎の集落が立地している。
面積は、町土の37パーセント(3.82平方キロ)を占め、全地域が市街化調整区域に指定されており、人口は、町人口の28パーセント(約3、000人=59年末現在)を占めてはいるが今後も、人口の大幅な増加はないとみられる。
地域の大半を占める低地部は、優良農用地に恵まれ、本町の基礎産業である。農業の振興地域としての発展可能性をもっている。斜面部にはゴルフ場、そして沿岸部には、地区公園、マリーナ等が整備されスポーツ・レクリェーション地域として活用されている。
以上の自然条件と地域特性を活かした地域づくりのために、自然環境との調和に配慮しつつ農業的土地利用と有機的な配分を行ない、農業生産基盤、農村生活環境基盤、スポーツレクリェーション施設等の整備を推進し、合理的な土地利用を図る。

3.2に揚げる事項を達成するために必要な措置の概要
(1)土地利用に関する法律等の適切な運用
 国土利用計画法、都市計画法、農業振興地域の整備に関する法律、森林法等の土地利用関係法令の適切な運用に努め、公害の防止、自然環境および農林地の保全、歴史的風土の保存、治山治水等に配慮しつつ、土地利用の総合的な調整を行ない、計画的な土地利用の確保を図る。
(2)地域整備施策の推進
自然環境との調和に配慮しつつ、地域の特性と住民の創意を活かして産業の振興と人間居住の総合的環境の整備を促進し、魅力のある地域社会の形成を図る。
(3)土地利用に係る環境の保全および安全の確保
ア、町土の保全、公害の防止、自然環境の保全、歴史的風土の保存、文化財の保護等を図るため、土地利用関係法律および条令等を適切に運用し、土地利用を規制する区域の設定などを行ない開発行為等の規制の措置を講ずる。
イ、良好な環境を確保するため、開発行為等について環境影響評価を実施することなどにより、土地利用の適正化を図る。
ウ、市街地における良好な生活環境を確保するため、必要な緑地およびオープンスペース等の積極的な保全・確保に努める。
エ、公害の防止および自然環境の保全を図るため、道路等の交通施設について緑地帯の設置など沿線地区対策を推進するとともに新規工場の適切な配置、既存工場の移転、団地化を進め、住・工混在地区の解消を図るほか緩衝緑地の設置を推進する。
オ、地域社会の安全を確保するため工場の立地、市街地の整備等にあたり、十分な防災上の配慮を加えつつ、適正かつ計画的な土地利用を図る。
(4)土地利用の転換の適正化
ア、農用地の利用転換については、農産物生産の確保、農業経営の安定および地城農業におよぼす影響に留意しつつ、無秩序な転用を抑制し、優良農用地の確保を旨として、周辺土地利用との計画的な調整を図りつつ行なうものとする。
イ、森林の利用転換については、災害の防止、環境保全等の町土の保全や水源かん養および保健休養など森林のもつ公益的機能に十分配慮し、周辺土地利用との調整を図りつつ行なうものとする。
ウ、大規模な土地利用の転換については、地域に与える自然的、社会的な影響が広範であるため、周辺地域を含めて事前に十分な調査を行ない、町土の保全、環境の保全等を図りつつ、適正な土地利用の確保を図るものとする。
(5)土地の有効利用の促進
ア、農用地については、ほ場整備、農用地の造形等、農業生産基盤の整備を計画的に推進するとともに、農作物の作付回転率を高めるなど農用地の高度利用を図る。
イ、森林については、公益的機能および経済的機能を増進するため、森林資源の整備を計画的に推進する。
ウ、住宅地については、無秩序な宅地開発は極力避けながら、居住環境の整備をすすめる宅地需要の実態に即しつつ計画的な宅地供給を図るものとする。
また、既成市街地については、その再開発を促進するとともに緑地およびオープンスペースの確保と居住環境の整備を図りつつ、住宅の中・高層化に努める。
工、工場用地については、住・工混在地区からの工場の移転、団地化を推進するとともに、地域社会との調和、公害の防止、緩衝緑地の整備等、環境保全の充実を図りつつ計画的に工場用地の造成を図る。
オ、遊休地については、国土利用計画法による遊休土地に関する制度および農用地利用増進法等の適切な運用により、有効かつ適正な利用を図る。
力、その他の土地利用のうち、教育、文化、福祉、体育施設等の公用、公共施設用地については、今後、 生活の向上、人口の増加と相まって増大する行政需要に対応するため、既存施設の実態に配意しつつ適切な用地の確保を図るものとする。
(6)町土に関する調査の推進
町土の実態を総合的に把握するため必要に応じて、町土の利用状況および自然的、社会的、経済的、文化的諸条件等町土に関する基礎的な調査を推進する。

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大分類 テキスト
資料コード 008438
内容コード G000000523-0004
資料群 旧佐敷町(佐敷村)広報
資料グループ 広報さしき 第102号(1986年3月)
ページ 4-7
年代区分 1980年代
キーワード 広報
場所 佐敷
発行年月日 1986/03/10
公開日 2023/11/17