なんじょうデジタルアーカイブ Nanjo Digital Archives

くしゆっきい23 ウバギー祝い

明日はといえば、鬼が笑う。昔といえば、誰かが笑う。現代ッ子はきっと笑う。その昔とは、イモとハダシの頃、いや、私の青春時代のことである。十年一昔ともいうから、昔々かもしれない。もう半世紀も前のことである。
やっぱり昔話として筆をとるのが妥当であろう。
当時、子どもが誕生して七日目に、どの家でも「ウバギー祝い」があった。ムジと豆腐の汁で誕生を祝い、その家だけでなくそれこそ班中の一大お祝いでもあった。その子の健かな成長が皆によって願われる。男児なら「逞しく強い子」が祈願されたが、「偉く、尊い子になれ」とは特に願われなかった。他人に勝るより中位でよいと願う心は、「中庸は徳の至れるなり」との孔子の教えに通じる気がする。
「高い木にはよく風が当る」と警告し、他人から嫉妬やねたみを受けるよりも、万衆との相愛相合がよく、平穏な世渡りのできる子を賞讃した。出世よりも社会のために尽くせとのことであった。出世主義に翻弄される現代とは隔世の感がする。
女児なら「瓦家の嫁にする」ことを祈り、もっぱら金持の嫁にと願われた。貧乏人は人間なみにあつかわれない社会であり、「金は生命なり」といわれ、金の貸借も思いのままにできない貧しい社会でもあった。豊かになった現在から想像もできない、貧苦に耐えた忍従の時代であった。
何でも足り過ぎて意のままになる今日では、知恵のないことと一笑にふされるかもしれない。今日では、子どもへの期待を如何にして表すべきか。(平田喜長)

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大分類 テキスト
資料コード 008438
内容コード G000000522-0011
資料群 旧佐敷町(佐敷村)広報
資料グループ 広報さしき 第101号(1986年2月)
ページ 5
年代区分 1980年代
キーワード 広報
場所 佐敷
発行年月日 1986/02/10
公開日 2023/11/17