日本の女子労働者は年々増加し昭和59年には1,518万人と全労働者の3分の1を超え、あらゆる産業、職業に進出し、経済社会の発展は今や女子労働者を抜きにしては考えられなくなってきています。
また、女子の職業に対する意識も高まり、女子の生涯の中で職業生活の占める比重も増大してきています。しかしながら、日本の経済社会の現状では、意欲と能力のある女子労働者がそれを十分に発揮し得る環境が整えられているとは必ずしもいえない状況です。
一方、昭和50年の「国際婦人年」を契機として、雇用の分野における男女の均等な機会および侍遇を確保することは国際的潮流となっており、日本でも、昭和55年に署名した「女子に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約」を批准するためにも、雇用の分野において必要な法的整備を行なうことが求められていたところです。
そこで、労働省では「雇用の分野における男女の均等な機会および待遇の確保を促進するための労働者関係法律の整備等に関する法律案」を国会に提出していましたが、昭和60年5月17日に成立し、同年6月1日に法律第45号として公布され、昭和61年4月1日より施行されることになりました。
男女雇用機会均等法とは
この法律では、募集、採用から定年・退職・解雇までの雇用管理の全ステージにおける男女の均等な機会および待遇の確保を促進するため、事業主の講ずべき措置、女子労働者と事業主との間に生じた紛争を解決するための措置などが規定されています。
事業主はじめ関係者の方々が本法の内容を十分に理解し、その趣旨にそって女子の雇用管理を見直していくことが望まれます。
◎事業主の講ずべき措置
【募集・採用】
事業主は、労働者の募集・採用にあたって、その手続、方法も含め、男女に均等な機会を与えるように努めなければなりません。
【配置・昇進】
事業主は、労働者の配置・昇進にあたって、個々人の意欲と能力に応じた男女均等な取扱いに努めなければなりません。
(募集・採用、配置・昇進について、事業主が講ずべき具体的な努力目標は、労働大臣が関係審議会の意見を聴いた上、策定する指針において定めることとしています)
【教育訓練】
事業主は、労働者の業務の遂行に必要な基礎的な能力を付与するためのものとして労働省令で定める教育訓練について、労働者が女子であることを理由として差別的取扱いをしてはなりません。
【福利厚生】
事業主は、住宅資金の貸付けその他労働省令で定める福利厚生の措置について、労働者が女子であることを理由として差別的取扱いをしてはなりません。
【定年・退職・解雇】
事業主は、男女別定年制や女子労働者の結婚・妊娠・出産退職制を設けたり、女子であることを理由とする解雇、女子労働者の結婚、妊娠出産または産前産後休業の取得を理由とする解雇をしてはなりません。
◎紛争の解決のための措置
【苦情の自主的解決】
事業主は、配置・昇進、一定の教育訓練、一定の福利厚生の措置、定年・退職・解雇について、女子労働者から均等取扱いに関する苦情の申出を受けたときは、企業内で、苦情処理機関があればそれを活用するなどにより、その自主的な解決に努めなければなりません。
【婦人少年室長による紛争解決の援助】
都道府県婦人少年室長は、女子労働者または事業主から次の事項についての紛争解決の援助を求められた場合には、その解決を援肋するために必要な助言、指導または勧告を行なうことができます。
募集、採用、配置、昇進、教育訓練、福利、厚生、定年、退職、解雇=に関する措置のうち、労働省令で定めるもの。
【機会均等調停委員会による調停】
次の事項についての紛争を解決するため、女子労働者および事業主の双方が申請した場合または一方が申請し、他方が同意した場合で、那道府県婦人少年室長が必要と認めたときは、機会均等調整停委員会(学識経験者3人で構成)による調停が開始されます。
婦人少年室長による紛争の解決の援助の対象となる事項(募集、採用に関するものを除く)。
労働基準法の改正
労働基準法の女子保護規定について、雇用の分野においての男女均等な機会および侍遇の確保を促進するという観点から、一定の範囲で廃止ないし緩和する一方、産前産後休業などの母性保護措置について拡充・強化を図っています。
【時間外・休日労働の規制緩和】
18歳以上の女子労働者については、現在、「1日2時間」「1週6時間」 1年150時間」の時間外労働の上限が定められ、休日労働が禁止されていますが、今回の改正で次のようになります。
▽一定の管理職・専門職は、上記規制のすべてが、解除
▽工業的事業に従事するものは、上記規制のうち「1日2時間」の規制が解除
▽非工業的事業に従事するものは、「1日2時間」の規制を解除し、週および年間を単位とした時間外労働の上限と休日労働の規制が一定範囲で命令で定められる
【深夜業の規制緩和】
18歳以上の女子労働者については現在、原則として深夜業(原則午後10時から午前5時までの就業)が禁止されていますが、今同の改正で次の女子労働者について深夜業の規制が解除されます。
▽一定の管理職・専門職
▽品質が急速に変化しやすい食料品の製造または加工の業務等、その性質上深夜業が必要とされる一定のものに従事し、かつ、1日の労働時間が通常の労働者より短い者
▽一定の事業に従事し、深夜業をすることを使用者に申し出た者で、使用者が行政官庁の承認を受けたもの
【危険有害業務の就業制限】
母性保護の見地から次のように改正されます。
▽妊娠中の女子および産後1年を経過しない女子(妊産婦)は、妊娠・出産・哺育等に有害な一定の業務について就業制限
▽それ以外の女子は、妊娠・出産機能に有害な一定の業務について就業制限
【母性保護措置の拡充】
女子労働者の産前産後休業は、現在、各6週間ずつの休業(うち、産後は強制5週間)が定められていますが、今回の改正で次のようになります。
▽多胎妊娠(双子以上の妊娠)の場合の産前休業期間-10週間
▽産後休業期間-8週間(うち、強制休業6週間)
また、新たに、妊産婦が請求した場合には、時問外労働、休日労働および深夜業を禁止する規定が設けられました。
※詳細は、那覇市久米2-30-1 〒900 沖縄婦人少年室 ℡0988(68)4380