なんじょうデジタルアーカイブ Nanjo Digital Archives

くしゆっきい ⑰色艶筆 (その4)

今から二十数年前、当時の赤線街、辻波上宮の近くに「ひさご」という料亭があった。その料亭の床の間に、当時の横綱朝潮太郎関(現高砂親方)の肉筆で墨痕鮮やかに、「春夏冬二升五合」の署名入り色紙の丸額が掛けてあった。
私の末娘ほどの年頃の可愛い娘から「先生、この色紙は何と読みますか」と私はからかわれた。ちょっと考える風をしてから、「春夏冬で秋がないね。秋ない(商売)、二升は一升枡二つで益々。五合は一升の半分で半升だ。商売益々繁昌」とこたえた。その可愛い娘ちゃんから「先生はウーマクヤミセーサー」と持ち上げられて、満更でもなかった。
別の料亭の床の間には、「浅黄依頼紺地染揚、弁償候得元之白地」と書かれた掛軸があった。これはむつかしい漢詩だと思っていた。が、よくよく考えてみたら、何のことはない、琉歌の「浅黄頼らくと、紺地染み揚ぎて、弁償たぼれ元の白地」なのである。
むつかしい漢字を並べて威張っていても、裏をかえせば、たんなる「わんちゃめてたぼり」ではないか。
いってみれば、この掛軸、「十九の春」の歌、「私があなたに惚れたのは、ちょうど十九の春でした。いまさら離縁と言うならば、もとの十九にしておくれ」と同じである。いずれの歌も、女心のしがない望み、恋の心境を精いっぱいの抵抗で表現したものと考えられる。
しかつめらしく飾られてはいても、けっこう粋なもの、味わい深い掛軸、額、色紙があるものである。(信天翁)

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大分類 テキスト
資料コード 008438
内容コード G000000514-0011
資料群 旧佐敷町(佐敷村)広報
資料グループ 広報さしき 第93号(1985年7月)
ページ 5
年代区分 1980年代
キーワード 広報
場所 佐敷
発行年月日 1985/07/10
公開日 2023/11/09