なんじょうデジタルアーカイブ Nanjo Digital Archives

くしゆっきい⑬ 辻の話

戦前、那覇の「辻」といえば全国に知られた遊廓街として有名であった。先輩方から辻の話をよく聞かされるが、男性にとって辻はパラダイスであったようだ。
小学生のころ祖父に連れられて行った事があるが、辻の何たるかを知る由もなかった。「社会人になってからは辻に行った事はない」といったら平良里之子亀順翁に「汝ヤ、辻ン知ラン、サビフドゥイール、ソールイ、チムグルシイムンヤサ」(君は辻も経験もせずに大人になったのか、気の毒だ)と軽くあしらわれてしまった。
口八丁、手八丁の男3人が辻に行きカナシ小という料亭で売れっ子のカナの心を誰が射止めるか賭けをした。そこでカナは3人に対し「歌を一首ずつ作りなさい。カナのカの字をもっとも多く歌に詠みこんだ人と今夜は共にしましょう」と申し渡した。
最初の男の作った歌はカの字は4つであった。二番目の男は「カナシ小ヌカナが、わんカなさすりば、わにんカナガナとぅ、カなさすしが」カの字は五つで歌もよくできているので勝負あったかに思われた。
容易な事では勝てないと思った3番目の男は「カラス小と芋とぅ、かてぃてぃかだりば、カカカカ、カカらち、今どぅ落てぃる」(カラス小とさつま芋を食べたら、咽につまって「カカカカ」今やっと咽から下に落ちた)と詠みあげた。
歌の内容は2番目が秀れているが「カの字を多く使う」という事であったので3番目の男は頓智で見事勝利を得てカナと共に楽しい一夜を過したという。これは30年程前、佐敷駐在所の当山巡査から聞いた話である。(真栄城勇)

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大分類 テキスト
資料コード 008437
内容コード G000000506-0006
資料群 旧佐敷町(佐敷村)広報
資料グループ 広報さしき 第89号(1985年2月)
ページ 4
年代区分 1980年代
キーワード 広報
場所 佐敷
発行年月日 1985/02/10
公開日 2023/11/09