アバレー
聖市より250キロ、長距離バスで3時間の牧場地帯の中にある人口6万人位の地方都市。ゆるやかな起伏のある地帯に牧場が果てしなく続く。その先1200キロ附近まで牧場とのこと。あの有名なルバング島の小野田寛郎氏の牧場も奥地にあるらしい。インドこぶ牛を主体にホルスタインの乳牛も放牧されてのどかな風景だ。
処々の綿畑も収穫の最中で、陸稲も黄金の波を打ち、甘蔗畑も広がっていた。陸稲などまだ無肥料栽培らしい。
牧場地帯の中だけあって皮革製品の商工業を主にした落ちついた町。靴屋、鞄、ソーファー、椅子など県人も多く生業にして繁昌している。空には禿鷹が舞っていた。
禿鷹は自然の清掃屋でみんなで大切に保護し、殺したりすると罰せられるらしい。
護られて禿鷹遊ぶ牧の空
街の点描
▽道路が広く自動車道が完備されて居て殆ど渋滞がない。見とおしが良いせいか、バスもタクシーも信号無視が多い。市内は制限速度40キロだが60キロでふっとばしていた。交通事故も多いようだ。
中央市場附近では8車線の1方通行で自動車運行の効率は高いが、車線変更の場合は遠回りをする。
▽最近はインフレと失業の増大で治安は悪くなっているらしい。パトカーやMPのパトロールもあるが白昼の短銃強盗も多く、滞在中カンポリンポの日系市長が射殺されたり、露天市場の沖縄系店主が買出しの途中射殺され所持金を盗られたり、物騒なこともあった。
▽日系人は働き過ぎるというので、失業やインフレの元凶は日本人だ、といって新聞で攻撃されていた。が、一世の方々にいわせれば、伯国人は怠け者だということになる。
気になるいきさつである。
▽市場附近ではスリ、コソ泥も横行している。ある日、少年のカッバライが現行犯で軍警の若い警官に捕った。折檻されて居るところを先任の軍警が来てそれを注意した。とうとう警官同士が口論、短銃をうち合い、それぞれ6発ずつ被弾して即死したという笑えない話もあった。
▽いたる処に広場や公園があり、老人は木蔭やベンチに、恋人達は抱き合ってキッスをしたり、肩を組んで散歩をしたり、子ども達はサッカーに、若者はジョギングに、思い思いに楽しんでいた。公園には必ずゴミ箱が用意され美化に努めていた。
▽禁煙した人が多い。体1つが財産だから自愛に徹しているのであろう。10人内8人は禁煙者だ。会食中はみんなが禁煙するという。
喫煙したい人は別室に行くか、隣にことわって吸うらしい。極めて良い風習だ、最もタバコの値段が収入に応じて割高になっている。
▽バス賃値上げのためあるバス会社が間引き運行して利用者に迷惑をかけたというので、利用者が暴動を起してバスの焼打ちをし会社は大損害を蒙むった話しもあった。
沖縄のバス労使のようなストが続くと大変な事態になるであろう。
▽聖市やリオではどこに行っても日本人に出会う。東洋街などでは石を投げたら日本人に当るんではないかと思う程、日本人がいた。
大てい小縞麗にして花束など持っているのは日系人らしい。観光客もずい分見うけた。いずれもカメラをぶらさげており、それと思われた。(つづく)