なんじょうデジタルアーカイブ Nanjo Digital Archives

俳句つれづれ草 さとうきび

その原種が現存している処を見ると有史以前から翁急(をぎ)として栽培されてきたようだ。
甘蔗や製糖の故事来歴は史書にゆずり、ここでは現状と今後の展望など述べて見たい。
本町の土質は甘蔗作の好適地のため、面積において約85%、販売高で74%を占め、文字通りの主要作目である。だが農家1戸平均にすると68万5000余円で年間生活費の4分の1程度にしかならない。そこで兼業や複合経営によって不足分を補埴している視状である。
わが国の砂糖消費量は約200万トンで、内沖縄・奄美で約1割程度生産されている。外に甘味資源として甜菜(てんさい)があり、化学製品の変成糖や結晶葡萄糖がある。また近年研究されつつあるスヰイトマイロ(砂糖モロコシ)や南米産で菊科のステビヤ等も生産され賑やかだ。なおバイオテクノロジーによる新品種の育成や、医薬品、調味料等も有望視され、今後が楽しみだ。
前置きが長くなったが、俳句、では甘蔗の一生に応じて吟詠されている。

待ち居たるほど良き湿り甘庶植う
春、夏植えがあるが春の季語にされている。

甘蔗萌ゆ小径羞らふ乙女かな
車の時代になりこのような光景が少なくなって些かさびしい。

真直ぐなる農道白し青甘蔗
基盤整備圃場の夏。

褒貶や砂糖にたかる蟻の群
古今東西消えざる世相。

甘蔗の花天寿の葬は明るくて
こんな人生の終着が望ましい。

生きたれば死までの余白甘蔗刈る
甘蔗刈って父祖の苦楽の体に沁みる戦後の感慨。

製糖期の日がどっしりと村つつむ(石村)
風に展(の)ぶ甘き唄(かざ)かや製糖期(野暮)    (畦 呂人)

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大分類 テキスト
資料コード 008437
内容コード G000000504-0022
資料群 旧佐敷町(佐敷村)広報
資料グループ 広報さしき 第87号(1984年12月)
ページ 15
年代区分 1980年代
キーワード 広報
場所 佐敷
発行年月日 1984/12/10
公開日 2023/11/09