最近の火災は、「炎」の被害から「煙」の被害へと変わってきました。これは建物の気密性が高くなる一方で、火災時に有毒性・爆燃性(爆発的に燃焼する性質)の強いガスを多量に発生させるプラスチック類などの石油製品が増えているためです。
昭和56年版消防白書にも、二酸化炭素中毒又は窒息死が502人(全焼死者の40・5%)となっているが、火傷死(649人=52・4%)の中にも、出火時、煙にまかれて倒れ、死に至ったものが相当数あるものと考えられる」と記されており、実際には、煙による死者が火傷死を上回っているようです。「煙」はまさに現代の“死神”といえそうです。
意外に速い煙のスピード
火災時に発生した煙は、毎秒3~5メートルの速さで上昇します。
横への広がりも秒速0・5~1・0メートルと、煙の動きは意外に速いので油断は禁物です。また、煙の通り道は、階段やエレベーター、廊下だけにとどまらず、壁のすき間や配管スペースの中など思わぬ所にまで及びます。
煙が火の玉に…
新建材などが燃えたときに出すガスの煙が、1カ所にたまった状態で引火点に達すると、爆発的な燃焼現象である「フラッシュ・オーバー」を起こします。
ガスの種類によって燃える度合いも違いますが、ナイロンなどの化学繊維が燃えたときに出すガス(シアン化水素)の煙では、火の玉状のフラッシュ・オーバーとなります。
素早く煙から逃げる
煙から避難するには、できるだけ低い姿勢で、ぬらしたハンカチやタオルを鼻とロにあて、深い呼吸はしないで、素早く安全なところに避難することです。
また、ホテル・旅館などによっては、宿泊者のために火災避難用の呼吸保護具を備えているところもあります。旅先では非常口と一緒に、呼吸保護具の場所や使い方を確認しておきましょう。