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くらしに緑を 大分県・大山町の1村1品運動に学ぶもの(最終回) 佐敷町役場経済課 小谷肇

平均化した月収を得る農業体系を生み、相互扶助・協業の重要性を知らしめ、今後の農村工業のあり方を実証した大分県大山町の1村1品運動は、その地歩を益々かためていった。
米作を中心に、梅と栗で、春から秋までの収入を得、それまで農業では収入を得ることのできなかった冬場には、エノキ茸の導入でその途をひらいた。
このエノキ茸の栽培は、前回も少しふれたが、篤農家に依って長野県から、その栽培方法が学ばれたものである。着眼点もさることながら、その栽培技術を確立させた時点で、その技術を農協に提供した郷土愛もみのがすことはできない。さらに、農協側は、「村おこし」の観点から、早速種苗工場と加工場を作り、農家に発芽した菌苗を分け栽培に踏み切らせたのである。まさに、相互扶助・協業の精神が実行に移されたといえる。
収穫されたエノキ茸は、農協に集荷し共同出荷、九州全県へ送られたのである。さらに、この菌の培養に使用した培地も農協に集められ、有機肥料の工場で堆肥化され、田畑へ還元されている。
この一連の協業体制によって大山町の「村おこし」が始まった年の農家1戸当りの年収は、19万円程度であったものが、第1次の「梅・栗運動」と、第2次運動の目的達成によって、現在では434万円の所得となっている。
このような地域の特性、地形を生かした作物の栽培と、青果物として出荷できない規格外の品物を利用した農産加工によって農家所得を高めるあり方、地域住民のコミュニケーションづくりには、学ぶべき点が多いと思われる。
佐敷町においても「村おこし」また「町づくり」は、広大な面積の傾斜地を有するだけに、様々な分野からアプローチができるのではないだろうか。傾斜地の利用を図る上からも、永年作物の導入などによって土地生産性を高めることができるであろう。さらに、緑のふるさとづくりを図る面からも大山町の1村1品運動を、大いに参考にしたいものである。 (了)

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大分類 テキスト
資料コード 008437
内容コード G000000502-0036
資料群 旧佐敷町(佐敷村)広報
資料グループ 広報さしき 第85号(1984年10月)
ページ 17
年代区分 1980年代
キーワード 広報
場所 佐敷
発行年月日 1984/10/10
公開日 2023/11/09