なんじょうデジタルアーカイブ Nanjo Digital Archives

くしゆっきい⑨ 老いの手習い農業

昨今、健康維持のためと称するものが多々ある。「健康ブーム」のせいか、それらをあげたら老若男女をそれぞれ対象に、きりのないほどである。もっともと思うものもあれば、これはどうかと思わされるのも少なくはない。なかには夢のようなことをあげつらうものもあるように感ずる。
思うに、健康はつくるべくしてつくるものではなく、自然にそうなっていくものではないか。健康のためにと称して何事かを行なうより、健康の「け」の字も考えずに汗して働き、快眠快食、そして快便、だれよりも頑丈な人々を私は多く知っている。
かくいう私も、健康の二文字には目もくれず、70余歳の身にむち打ち七百坪あまりの耕地を耕やしている。老妻ともども午前か午後の三時間ほどの農作業である。
一日、たったの三時間の軽労働とはいえ、老いの身にはこたえる。施肥、雑草取り、枯れ葉取り、と作業もいろいろある。
先祖代々から受け継いできた千五百坪ほどのキビ作農家の血がそうさせるのか、畑に出ない日はなにか物足りなささえ感ずるほどである。
いや、何よりも体を動かし、汗を流さなければ、飯はもちろんだが、最上の楽しみの晩酌の味がもう一つになってしまう。いくら軽作業、年寄りの農作業といっても何がしかの収入とはなる。三年ほど前に一度計算をしてみたら、時給の手取りが三百円だった。今であればもう少し上がっているはずである。体を動かし、快食快便、そして収益もある。老いの手習い農業、かくて今日もガンジュウなり。(平良亀順)

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大分類 テキスト
資料コード 008437
内容コード G000000500-0010
資料群 旧佐敷町(佐敷村)広報
資料グループ 広報さしき 第83号(1984年8月)
ページ 5
年代区分 1980年代
キーワード 広報
場所 佐敷
発行年月日 1984/08/10
公開日 2023/11/09